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儚いもの

やっとメインストーリーの続きが出来上がった。

続きは小説です。
「…い………ろ……」


(誰だ……私に話しかけるのは)


闇の中で自分に語りかける声がある。

そこで自分は目をつぶり、横になっていることに気付く。
朦朧とする意識の中、男の声が何度も響き続ける。


「い……げん……ろ……」


(…なんて不愉快な声だ……)


男の声には覚えがあった。

だが少なくとも、良い印象はなかったのだろう。
眉間にしわが寄るほどだった。

次の瞬間、言葉はハッキリと耳に入って来た。



「いい加減起きろ、このクソ女」


「……なんだと…?」


その不愉快極まりない言葉が耳に入り、遂に"アリル"は目を覚ました。

対する男は「ふん」と鼻を鳴らし、再び視線をそらした。


アリルは自分に語りかけていたのがその男"刹牙"であると認識した。


ガチャッ

そして同時に、自分の腕が自由に動かないことに気付く。
鎖のようなもので手首を何重にも縛られており、用意に解けるものではない。


「どうやら、俺達は何者かに捕まったらしいな」


刹牙の言葉通り、辺りを見渡すとここが牢屋のように鉄格子で仕切られた場所であることがわかる。


二人は戦闘後に共に気絶した。
そこを何者かに拘束されたと見て間違いないだろう。


「無人の施設ではないことが証明された、か……」


アリルの推測は間違っていなかった。

我々以外に人がいる。
しかも、明らかな敵意を持った第三者だ。

自分が見たもの、研究施設のことを"あいつら"に報告しなくてはならない。
アリルはなんとか拘束された腕を解こうとするが、きつく、強く巻かれた鎖はびくともしない。


「おい、そんなことより」


その様子を見、まるで無駄なことだと言うように刹牙は口を開いた。


「"あれ"は、お前の仲間か?」


刹牙が顔を向けた方向には、壁があった。

だが、壁に何者かがもたれ掛かっている。
否、両腕が持ち上げられるように、壁から出る鎖で固定されており、明らかに拘束された状態だった。

しかも気絶しているのだろう。ピクリとも動かない。


「…なっ……」


アリルはその顔に見覚えがあった。

短く纏められた綺麗な金髪。
その色と合うような黄色い服、そこから伸びる色白だが健康的な手足。
露出した腹部には、大きな爪のようなものでひっかかかれた痕が残っている。




WaterCarnivalのスナイパー。
"マツリ"その人だった。
















どこだろう、ここは。


体が浮くような感覚に身を委ね、ダズは心の中でそう呟く。


確か私は炎に焼かれたはずだ。
イフリートの放った巨大なファイヤーボールをまともに受け、塵も遺らぬ末路で。


だが、五体の感覚と共に私は宙に浮いているようだ。

まるで誰かに、いるはずのない誰かに抱えられているように。




『……何故だ、何故貴様が生きている』


頭の中に直接響くような声。

思い出した。この声の主がトール火山のイフリート。


誰に語りかけているんだ。
私以外の人は皆、





「へえ、"お前にはそう見えていた"のか?」



皆、やられてしまったはずだ。



「便利なもんだな、この能力は」


とても聞き覚えのある、とても身近な人の声。

その人に今私は抱き抱えられている。


私の推測が正しければ、この人は、






「よう」



目が逢った。
ぼやけた視界が開き、その表情をしっかりと確認することができた。


間違うはずはない。
いつも近くにいた、我がギルドのマスター、





「タイタン……」


「おう、やっと目ぇ覚ましやがったが」


彼が、そこにいた。

思わず瞳から涙が溢れ出し、頬を伝っていった。

生きていた。生きて目の前に存在している。


ガバッ


「おわ!なんだ!?」


衝動を抑え切れず、ダズはタイタンの首に抱き着いた。
タイタンは突然の動きに驚いている。


「よかった……よかったよ……」


ボロボロと涙を流しながら、腕でしっかりとその温もりを感じ取った。

幻じゃない、確かにタイタンだ。
それだけで心はみるみる満たされていく。


タイタンはダズを抱えながら、小さく微笑んだ。


「悪いな……心配かけちまった」



数秒後、落ち着いたダズをゆっくりと地に立たせ、再び二人はイフリートに対峙する。


イフリートの側には"マツリ"がいる。


「タイタン、マツリはきっと何かに操られてると思う。気をつけて……」


「あぁ、そろそろ"種明かし"といくか」


タイタンの言葉はダズに違和感を与えた。
まるで、そんなこと造作もないというように。


タイタンが右手につけた"指輪"を前に掲げた。
蒼白く、深い輝きを見せるリングを。



『貴様!それは!!』


イフリートが驚愕すると同時に、その指輪"リングオブレゾナンス"からまばゆい閃光が放たれた。


「うっ…!」


その輝きに、ダズは思わず瞳を閉じた。
やがて光が止み、再び視界が開ける。


「ほら、この通り」


タイタンがそう言って、顔だけで相手のほうを指した。

ダズは目の前の光景に、声を出さずに驚いた。




そこには"マツリ"ではない者がいた。

正確に、その"人物"が分かったわけではない。
マツリと同じ"スナイパー"の服を身に纏い、全身から黒いオーラを放っている。
表情からは何も感じ取れず、まるで"生きていない"ようなその目は、それでもしっかりとこちらを見ていた。



「……おいおい、よく見たらあれは……」


真実に戸惑うダズを横目に、タイタンは別のことに驚愕していた。

タイタンは知っていた。その人物が誰であるかを。
そして同時に、表情を曇らせる。


「……六英雄の一人、"セシル=ディモン"じゃねえか」


タイタンの言った"六英雄"という言葉に、ダズは聞き覚えがあった。

かつて人間と魔物の間で起こった"聖戦"。
街や城でさえ戦場としてしまった大きな戦である。

人間、魔物、それぞれの側に"神"と呼ばれる存在でさえ手を貸しあったと伝えられ、その魔物との戦いで人間達を率いていた英雄がいた。


その一人、スナイパーの"伝説の射手"とまで言われた人物が、今目の前にいる。


「ダズ、お前が見たのは幻だ。イフリートのドラゴンフィアーにやられて幻覚を見ていただけだ」


高レベルの魔物が得意とするそのスキルは、まるで竜のような雄叫びで人に様々な状態異常を与えると言われている。

マツリではない。別の人物だったというだけで、ダズは心の中に少しの安堵をもたらした。



『成る程……貴様ら、氷の側ということか。人間など、黙って戦いを傍観しておればよいものを……』


「おい、こっちも聞きたいことがある。なんで六英雄がここにいる」


タイタンはイフリートの言葉に臆せず、質問を返した。

イフリートは数秒後、再び口を開く。


『我の軍団に力を貸すという因子がいただけのこと。その協力の意思として差し出された戦力の一つに過ぎん』


この時点で、タイタンは全ての事象が繋がったと判断した。

後は裏で動くアリルの報告で、それは確信に変わるだろう。


「……イフリート、今すぐその手を貸した奴らとの関係を切れ。これはあんたにとって不利益にしかならないぞ」


口調を強め、タイタンは真実を伝えんとする。

だが、イフリートはそれを聞かない。
返事はすぐに返ってきた。


『人間ごときが……我に指図をするか。利益、不利益の判断は我が下すこと。どうしてもと言うのなら……』


魔物としての強さが、プライドが、発言から伝わってくる。

タイタンは「やっぱりか……」と言わんばかりに、腰に挿したバゼラルドを引き抜き、臨戦体勢に入る。


『我を倒し、屈服させてみよ!!』


その言葉と同時に、イフリートを取り巻く火炎は一層熱を帯び、空気中の水分を瞬時に蒸発させた。


タイタンとダズは、その熱風とプレッシャーを感じ、構えを更に強めた。


「自分が利用されてるとも気付かずに……哀れだな、真実を知ろうとしないってのは」


タイタンの表情には、少なからず哀れみが含まれていた。


トール火山には、未だかつてないほどの激震が起ころうとしている。
避けられなかった戦いは、いかにして決着を迎えるというのだろうか。
















(この感情は……)


そこから少し離れた場所に一人の"男"がいた。

身なりは人と大差ない。
だが纏う空気が、まるで"人以外のもの"であるようだった。


(炎の魔人め……早まりおって)


男は舌打ちし、顔をしかめた。
しかし、そこにいる懐かしい"戦友達"を思い、表情を緩めた。


(タイタンと、ダズか……懐かしいものだな)


男は再び歩み始めた。
タイタンとダズと、イフリートの待つ場所へと。
コメント

まつりさんでなく、セシル!

難易度あがってるっ

最後の人誰だろぅー?

No title

さすが俺だな!
最後はまさか名前の長い人か・・・!?

タイタンは強キャラ!
とーりんは知らない人だなぁ。昔書いてたのにでてきた人だから、気になるなら古いの今度あげる!

ここで新キャラ登場か!
待ってましたよ!名前の長い人は存在だけは知ってるけど気になります

ところでぜらすはバターになってませんか?

No title

またぜらす忘れてた/(^o^)\
最後に載せようと思ってたのにスッカリw

もう溶けちゃっててもいいですかね。
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