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また番外編

熱烈な出演希望があったので書かせていただきました。

一人がメインですが、合計三人新しい人が出ています。
この後もう一回番外編書きます。
「くっそー、なんで出ないんだ……」


プロンテラの一角で一人の男がしゃがみ込み、何やら嘆いていた。
手にしているのは3つの箱。


「またハズレばかりじゃないか……こんなのじゃダメだ」


男はおもむろに箱を地面に起き、一つ一つ蓋を開けていった。
元々封は切られていたが、再び確認するような作業で。

それは"古い紫色の箱"。
開けるまで中身はわからないが、低確率で高額なレアが入っている可能性がある代物。

所謂ギャンブルの精神でこれに挑んでいく者が多いが、成功する例は非常に少ない。


男が開けた箱から出て来たのは、対した価値にならないような靴や服、装備品である。


「シューズに、シルバーローブ、それとガードか。……全部スロットがついてないじゃないか!くそっ!」


装備には、モンスターから稀に出る"カード"を挿すスロットがついているものがあり、それにより価値が跳ね上がるものもある。

男の箱から出て来たのは全てスロットがない。
つまり、ゴミ装備と言われるものである。


「キィ~ド~……」


(やばっ……)


後ろから声をかけられた。
瞬間、その男"キード"と呼ばれた人物は、心の中で不覚をとったと焦り始める。


「……や、やあ、タルト。今日もいい天気だね」


男は箱を隠すように振り向き、取り繕ったような笑顔で女性に声を返した。

そこに立っていたのは、ギルド"Water Carnival"のロードナイト、タルタルだった。


男の名は"キード=フォン=ラッキーニ"。
タルタルこと"タルトレット=タルシエ"とは古い付き合いになる。


タルタルはキードが隠した箱の存在を見逃さない。
そして、呆れるように溜息を吐いた。


「はぁ……ギャンブルばっかりしてるからお金が貯まらないんだよ。少しは真面目に狩りをするとか……」


(始まった……)


キードは心の中で耳を塞いだ。
昔からタルタルには世話になっている関係だった。

今は"目的"があり、自分は箱を買いあさっている。それこそ、自分の武器防具はそっちのけで。

タルタルはそんな自分を注意せざるを得ないのだろう。


(わかってる、わかってるけど……)


タルタルはまだ喋っている。
本当にいつも気にかけてもらって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


(これだけは……)


「いい?キード。お金は地道に貯めてこそ価値のあるものなんだから、私みたいにグレイトネイチャを砕いて収入を増やすとか……」


「ごめんタルト!俺、ちょっと用事があるんだ。また今度な!」


このままではまずいと感じ、キードは一目散にその場を後にした。


「あ、ちょっとキード!?」


引き止めようとタルタルは腕を伸ばしたが、相手は既に人込みの中に。
職業がローグというだけあってか、スピードは他の追随を許さない。


残されたタルタルは、怒りや哀しみを混ぜた表情で立ち尽くしていた。


「せっかく狩りに誘おうと思ったのに……」
















気付いたらここに来ていた。

ここはヒルウィンドと呼ばれる鳥人族のモンスターが潜むフィールド。
領域に踏み込んだ人間を躊躇無く襲ってくる。
彼らの爪や羽は高値で取引されており、それを目当てにここを訪れる冒険者は多い。

暗殺者や盗賊のみならず、スピードに特化した剣士系などで狩場は溢れ返っている。


「よっ、と」


ザシュッ


迫るヒルウィンドの攻撃を軽くいなし、スキをついて手にした短剣で切り刻む。
もはや作業とも呼べるレベルで、キードは鳥人達を次々に薙ぎ倒していく。


「キュピィ……」


最後に残ったヒルウィンドを倒し、落ちた羽や爪を黙々と拾う。


「今日は、これぐらいでいいかな」


腰に下げた袋が収集品で埋まり、そろそろ切り上げようとした時、珍しい光景が彼の目に飛び込んできた。



「……ウィザード、か…?」


ここの狩場では非常に珍しい、というか、彼が見るのは初めてとなる。
魔法職である"ウィザード"が、ヒルウィンドと対峙していたのだ。


「珍しい……殴り型なのかな」


ウィザードの中には、稀に己の肉体を武器にして戦う人がいる。
彼らは魔法で敵の動きを制限し、短剣や杖で攻撃するという非常にトリッキーなタイプである。


ここに来るからには、それなりに腕に自信があるのだろう。
キードはそう思い、その場を立ち去ろうとした。

だが、



(……?様子が、おかしいな)


ウィザードの、正確にはその上位職"ハイウィザード"の女性は、ヒルウィンドに接近されても魔法どころか動こうともしない。
寧ろ、迫るモンスターに怯え、震えているようにさえ見える。


(もしかして、迷い込んだのか…?)


女性からは明らかに戦う意志が感じられない。
悲惨な事態を招くまいと、キードは再び短剣を引き抜いた。


その時、



フオンッ


木の葉が舞う程度の、小さな風が吹いた。
キードがそれを認識した瞬間には、



ドスッ!


ヒルウィンドの背から、胸に突き抜ける"槍"があった。

的確に心臓を貫いた一撃に、ヒルウィンドは叫ぶ間もなく絶命する。


(な、なんだ今のスピードは……)


その人間離れした速さに、キードは愕然とした。

それよりも驚くことに、その槍の遣い手は"身長が小さ過ぎた"。
明らかに子供である。

身なりは剣士系の上位職"クルセイダー"であるが、鎧や兜の重さに今にも押し潰されてしまいそうである。


(でもまあ、もう大丈夫そうだな……)


ハイウィザードの女性は、クルセイダーの子供に必死に頭を下げている。
なんとか事無きを得たようだ。


ここにもう用は無い。
後は街に戻って、















「毎度ありー!」


プロンテラで、先程手に入れた収集品を売り、そのお金でまた"古い紫色の箱"を手にしていた。


(今度こそ)


キードは期待を込め、いつもの場所に戻って開封しようとした矢先、



ヒョイッ


「あっ…!」


箱を取り上げられた。
相手はキードにも容易に想像できた。


「また買って、いつになったら懲りるの?」


タルトレット=タルシエ、その人だった。

キードは顔をしかめた。しかし次の瞬間、



パカッ


タルタルは躊躇無くその箱を開封した。


「あっ!」


キードはあまりにも予想外な展開に、思わず声をあげた。

中身を見たタルタルは無言だった。


「なんてことするんだタルト…えっ!?」


駆け寄って、同じく中身を見たキードは驚きの声をあげた。

箱の中身は白い布、いや白い帽子だった。

キードは口をポカンと開けたまま呆然としている。
タルタルはキードが見るそれを片手で持ち、広げてみた。


「これって……」


「ほ、ほんとに出るんだ……」


キードが驚くのも無理はない。

何故なら彼は、この"白い帽子"を手に入れるために箱を開け続けていたのだから。


「これ、バルーンハットだよね?」


タルタルはキードにそう問い掛けた。

バルーンハットは、この古い紫色の箱からのみ出る最上級のレア装備、所謂当たりである。


「……はい、よかったねキード」


タルタルはそんな高級装備を目の前にしても、表情一つ変えずにキードにそれを手渡そうとする。

寧ろ、あまり納得していない表情にさえ見えた。



「…………」


キードは無言で、帽子を受け取ろうとしなかった。



だって、この帽子は、





「君に、あげるよ。タルト」





"君にあげるため"に、手に入れようとしていたのだから。




いつも、世話になっていた。
箱から唯一出ると言われるこの装備なら、彼女も喜んでくれるだろう。

キードは日頃の感謝を込めて、それを目の前にいる女性に贈ろうとしていた。



キードの言葉に、タルタルは無言のままだった。

そして数秒後、一言だけ返した。




「いらない」



たった一言。
彼女にとっては、ほんの些細な一言。

されど、キードを動揺させるには、十分な強さと威力。


「そ、そんな……」


困惑するキードに、タルタルは再び攻撃を放った。


「だって、私が装備しても意味ないもん」



ガーン

擬音として、キードの心情を表すには十分な言葉だった。
返す言葉もない。

バルーンハットは、本来魔法職が"詠唱時間短縮"のために欲している装備であり、タルタルのような前衛職とは無縁の代物であるからだ。



うなだれるキードを前に、タルタルは一息ついた。
そして次に、微笑みを浮かべて顔を上げる。


「これ、高いものなんでしょ?だったら、売って装備を整えようよ」


タルタルの提案は、あまりキードの耳には入らない。

キードは心の中で思った。

装備を整えたからなんだっていうのだ。
強くなんてならなくていい。君が喜んでくれるなら、それでいい。

失った時間は返ってこない。
せめてその時間の分の御礼を、返したかっただけなのだから。




タルタルはそんな様子を知ってか知らずか、再び口を開いた。



「そうすれば、また一緒に冒険できるよ」



その言葉が、キードの心に強く響いた。

失った時間は、後で取り戻すことが出来るかもしれない。


彼女に"追い付くこと"で。




「行こ。もしかしたら、高値で買い取ってくれる人がいるかもよ?」


タルタルは、キードに手を差し延べた。


(……何やってたんだろうな、俺……)


自己嫌悪、反省を繰り返して、
人は成長することができるのかもしれない。


タルタルの差し延べた手には、不思議な力があった。

その手を取れば、未来が見えるかもしれない。
充実した日々が、夢がそこには溢れている。



キードはゆっくりと右手を伸ばし、その手を握り返した。



「あぁ、行こう」






男が一人、己の道を見つけることができた。

たった一人の、されど、その人にとって一番大事な人からの言葉で。
コメント

No title

ありがとうございますww
やる気が出てきたww

え?もちろん・・・

箱買うためにwwwwwwwwwwwwww

そして手に入れたレアはたるちんに貢ぐことに…。くっ!なんて男前なんだ!あんたって人は!

No title

きいいいいいぃぃぃぃどおぉぉぉぉぉ!
箱なんていいから装備そろえて!強くなって!

楽しみにしてるよ!
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