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あばばば

花見中止で涙目。

今回の小説は短編です。
サツキさん、はるつー、クマさんの出会いの物語としてます。

続きが気になる人ごめんね!
「ふあぁ……んーむ」


首都プロンテラにあるヴァルキリーレルム。
その更に北に位置するミョルニール山の手前。

そこでは豊かな草原、川が広がっており、野性のルナティックやポリン達が人間に害を及ぼすことなく棲息している。
この景色を楽しむために、ここを訪れる者も少なくない。


たった今、原っぱに寝転がり大きな欠伸をした人物も、それに近いだろう。


「のどかだなぁ……」


男の名は"春通"。
修道僧モンクの上位職、チャンピオンであるこの男は、それらしい風格も見せぬまま自然に身をまかせている。


「"のどかだなぁ"、ではありませんよ。春通」


「げっ」


春通を叱咤するように声を掛ける女が一人。


「サツギさん……」


オーバークリエイターと呼ばれるサツキであった。
春通は露骨に嫌な顔をする。


「"俺"はサツギでもサヅギでもありません。勝手に改名しないでいい加減覚えてください。そんなことより……」


「ギクッ」


サツキは苛立ちを隠せない。

春通は次の彼女の言葉が予想できたのか、動揺し始めた。


「あなた、また稽古をサボりましたね?」


「だ、だって……」


春通は下を向き、急にばつの悪そうな顔をする。


「オイラには稽古が厳し過ぎるんだぁ……」


稽古とはプロンテラ騎士団、つまりリン=シャオユウの指導する訓練のことである。

厳しいのは事実だと、サツキも理解していた。
しかし、腰に両手を当て一息つくと、再び口を開いた。


「あなたが戦いを嫌がるのもわかります……ですが、あのモロクが崩壊したのです。近いうちに、大きな戦いが起こるんですよ」


「そ、そんな事はわがってる。でも……オイラの拳は役に立たねえよぉ……」


自分の拳を握りしめ、春通は顔を更に沈める。

サツキは見兼ねるというように足を曲げ、中腰の姿勢で座る春通に視線を合わせた。


「うっ……サツギさん……」


「なんですか?」


もちろん、短いスカートだけで隠せる範囲は限られている。


「パ、パンツが見えてるだ……」


「見せてるんですよ。じゃあ、稽古をサボったことを見逃してあげるので、一つ俺に協力してください」


"協力"という言葉に不安を覚える春通。
彼はサツキのことを二重人格者だと考えており、過去にそれで痛い目にあったことがある。

こと戦闘において、サツキは操られているかの如く(あながち間違いではない)豹変する。


「これを見てください」


バサッ


「……?今日の、新聞…?」


サツキは、顔を赤らめ視線を逸らしていた春通の前に、新聞の一面を見せた。
先日プロンテラで起きた事件が大きく取り上げられていた。

興味あり気に、春通は音読し始める。


「プロンテラ王国第三王子暗殺……王直属の兵士と教会の協力により、犯人と思われる人物を逮捕。なんと容疑者は………、アサシンギルドの…く、"黒熊・ブラックベア"!?」


春通は驚愕する。

モロクの遥か南東に位置するアサシンギルド。
その暗殺者集団の大幹部である、"ブラックベア"として恐れられる男。

そんな男が今、プロンテラ王国に捕まっているというのだ。


「死因は食べ物に含まれた毒……それでアサシンギルドが疑われたんかぁ」


「ただの毒ではありません。"アサシンギルドで開発されていた新毒"であると、調査の結果わかっているそうです」


そうなるとアサシンギルドも言い訳はできない。

ただの毒殺ならまだしも、"新毒"という情報が入っている以上、それを開発できるのはアサシンギルドだけであり、それを使えるのもアサシンギルドだけだからである。


「……もしかして、黒熊はわざと捕まった……?」


「鋭いですね、春通。流石俺の見込んだ男だけはあります」


サツキは再び立ち上がり、春通を見下ろすように強く語り始める。


「恐らくギルド内で大きな問題を起こさないように、一人で収拾をつけるため犠牲になるつもりなのでしょうと、予想しています」


春通はもう一度新聞の一面を見た。
そこにはブラックベア、通称黒熊の護送される写真が載せられていた。


「……まっすぐ、強い意志を持った目だぁ」


春通は先ほどと打って変わって真剣な表情で写真を見つめる。

サツキはそんな春通の様子を見、フッと小さく息を吐いた。


「さて、春通。俺が何を言いたいか、もう解りましたね?」


ニヤリと笑い、サツキは春通を見下ろした。

春通も目を細め、訝しげにサツキを見返す。


「ま、まさかサツギさん………ブラックベアを助けたいって言うんじゃ……?」


その言葉が言い終わるや否や、サツキは目の前でパチンと指を鳴らす。


「半分正解ですね。そう、助け出して"仲間に加えます"」


「えぇ!?」


半分正解していたことにもそうだが、"仲間にする"という言葉には更に驚きを隠せなかった。

そんな春通を横目に、サツキは更に話を続ける。


「ここで彼を助け出し、無罪を証明するんです。そうすれば彼に大きな"貸し"を作れます。忠義に厚いアサシンギルドであるからこそ、尚更この申し出を断ることは出来ないはずです」


「…は、はぁ……」


サツキの強い主張に、春通はただただ首を傾げるしかなかった。


「で、でも、オイラに何をして欲しいんだぁ?」


春通は自分の利用価値について疑問を投げ掛ける。
サツキは再び笑みを浮かべる。


「あなた、騎士団直属の"WaterCarnival"ギルドに知り合いがいると言っていましたね?」


「た、確かにいるけどぉ……」


春通はすぐにその知り合いの顔が"二人"、頭に浮かんだ。


「まずは情報収集です。その人達から、出来る限りの情報を集めてきなさい」




サツキのこの無茶振りとも言える計画に春通が巻き込まれ、後にそれがこのルーンミッドガッツ王国に大きな変化をもたらすことになるとは、思いもしなかっただろう。

少なくとも、今現在は。



















「で、俺達の知ってることを教えてほしい、と」


WaterCarnivalギルドのアジトに招かれ、春通はサツキとの会話の一部始終を説明した。
(ちなみにサツキの下着の色が白と水色の縞模様だったことについては、墓場まで持っていこうと心に誓っていた)


「実は、私達もこれについては今調査中なんだ」


先ほどの男の横に座っていた女が次に口を開いた。


「タイタンとダズのほうにも、詳しい話はきてないんだなぁ」


春通からテーブルを挟み、反対側にはギルドマスター"タイタン"と、サブマスター"ダズ"の姿があった。

沈黙が流れ、何も情報が得られなそうであることに落ち込むが、それに対してタイタンは数秒後に口を開いた。


「ただ、これは俺の予想なんだが」


春通はタイタンの言葉に、勢いよく顔をあげた。

タイタンは"そう期待するな"と、一言付け加える。



「……大聖堂の連中には注意しろ」


「大聖堂…?」


プロンテラの北東に位置する大聖堂には、神に仕える神父達が数多くいる。
端から見れば、何の疑いようもない連中である。

不思議がる春通に、タイタンは更に話を続ける。


「プロンテラの王子ってのは代々、遺体ですら神聖なものとして扱うらしい。つまり、その遺体を安置する場所があの大聖堂だ」


これはプロンテラに永く根付いている風習であるという。
春通は無言で頷き、次の言葉を待った。


「遺体の内部に残った毒について、それが例の新毒であると公言したのも大聖堂にいる神父の連中だ。俺はどうもそれが気になってな。"大聖堂にいる知り合い"に少し調べてもらったんだ」

(その大聖堂の知り合いというのがザーロットであるということは、春通にはまだ知る術がない)
春通もここまで聞き、ある程度の予想がついた。
タイタンもそれを察し、直ぐに次の言葉を口にする。



「"これを公言した神父が、もし新毒であるという嘘の情報を公言したとしたら?"」


「……アサシンギルドに罪をなすりつけたとでも…?」


新毒を開発、使用することが出来るアサシンギルドに罪を被せることも容易である。

また暗殺者集団という、騎士団からすれば目の上のたんこぶとも言える連中を廃除するにも、都合が良いのだろう。


「だから、大聖堂の神父には気をつけろ……ってオイ、もう行くのか?」


タイタンの話の途中で、春通は席を立っていた。


「そこまで聞ければ十分だぁ。タイタン、ダズ、ありがとう」


「あ、危ないことに首をつっこむんだろうけど、気をつけてね……」


別れ際のダズの言葉に春通は小さく笑みをこぼし、その場を後にした。


















ここはプロンテラ王宮の牢屋。
過去に罪を犯した者がここに幽閉されており、粛清の機会を与えられている。


「……………」


アサシンギルドの大幹部として、その名を轟かせる黒熊"ブラックベア"は、手足に枷をつけられた状態で沈黙を保っていた。


「やけに大人しいですね。アサシンギルド大幹部、ブラックベアよ」


悠然とした態度で、鉄格子ごしに話し掛ける男がいた。
見るからに聖職者、大聖堂の神父の衣装を身に纏っている。


「見上げた志しを持っているものです。一人で罪をかぶろうとは……」


自分の絶対的優位を利用した挑発的な物言いで、ブラックベアに話し掛ける。


「………言いたいことはそれだけか。終わったのならさっさと去れ、耳障りだ」


挑発にも乗らず、アサシンギルドの黒熊は静かに言葉を返す。

対する神父を舌打ちをする。


「……そう言っていられるのも今のうちです。後日、死因が新毒であるという検証が行われます。そこであなたの罪は揺るがないものとなるでしょう」


その神父の言葉にも、ブラックベアは動じない。


「好きにしろ。それで貴様らの気が晴れるのならばな」


変わらぬ態度に嫌気がさしたのか、それを聞き終えた神父は顔を強張らせ、その場を後にした。

















「よくぞその情報を仕入れてくれましたね、春通」


サツキの言葉に、春通は照れたように後ろ髪をいじる。


「…なるほど、後日遺体に正式な検証が行われると。更に神父達に怪しい人物がいるというわけですね」


「いや、まだそうと決まったわけじゃ……」


制止しようとする春通の言葉には耳を貸さず、サツキは更に言葉を続ける。


「では、その検証の日が勝負です。必ず"俺のモノ"にしてみせますよ、ブラックベア……」


「はぁ……」


サツキは春通に背を向け、拳を強く握りしめた。
それを聞く春通は、これから巻き込まれるであろう災難にため息をつくことしか出来なかった。


「このオーバークリエイターに不可能はありませんよ。身をもってそれを解らせてあげましょう……」
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しまぱんは予想して無かった
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