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支払いは

まかせろー!(バリバリ

サツキさんもえ


続きは小説です
「アシッド…!」


サツキが二つの薬品を両手に一つずつ持ち、


「デモンストレーション!!」


それを同時にモロクの現身へと投げ付けた。


ズドォンッ!


着弾地点で大きな爆発が起き、煙を巻き上げる。


ズチャッ


現身は直ぐさま後方の壁へと飛びのいた。
不可解な音を上げ、両手足で壁に張り付いている。


『そんなものが当たるとでも……ぬっ!』


煙の中から、いつの間にか武器を手にしたブラックベアが飛び掛かった。


ザシュッ!


同時に両手に持った短剣で切り掛かり、現身は斬撃をかろうじて避ける。
切られた衣服から、いかにそれが鋭さを持っているかが伺える。


『ちぃ…!』


「アサシンギルドを侮辱したことを、その身を持って償わせてやろう!」


地面に着地した現身に対し、ブラックベアは壁を蹴り再び襲い掛かる。


シャッ!シャッ!


「春通!ぶちかませ!!」


目で追い切れないほどの攻防を繰り返す現身とブラックベアに対し、サツキが怒声をあげる。


「わかってるだぁ!」


春通は現身の後方へと回り込んでおり、拳に淡い光を燈していた。


「ダアアアァッ!!」


掛け声と共に現身へと接近し、その腹部へと一撃をお見舞いせんとする。


「寸勁!!」


ズドォッ!


拳が触れるか触れないかの位置で引き戻され、コンマ数秒遅れで轟音を上げ、現身が吹き飛ばされる。


『ぐ、おぉ…!』


現身が苦痛に呻きをあげ、壁に叩きつけられた。


これが戦いを好まない春通の編み出した技、通称"不当(あたらず)の拳"。
相手に直接触れることはせずにダメージを与える技術であった。


「阿呆が!本気で殴れ春通!!」


「そ、そんなこど言ったって……」


サツキはその春通の考え方が気に食わず、罵声を浴びせる。
春通は長くこのスタイルを貫いており、今更それを変えることなど出来ないのだろう。


『に、人間風情が…!死ねぇ!!』


体勢を立て直した現身は、周囲に風を起こし始めた。

それは空を裂き、三人の全身に服の上から傷をつける。


「い、いだぁっ!」


「くっ…!」


それぞれが苦痛を顕にする。


「ちっ……スリムポーションピッチャー!」


サツキは腰に下げた白い液体、ホワイトスリムポーションを空中に投げる。
その液体は地に着くと同時に拡散し、輝きと共に三人の傷を癒す。

しかし、


「回復が、浅い…?」


サツキが初めて顔をしかめた。
傷は一度は塞がったものの再び裂け、出血を完全に止めることが出来なかった。

その様子を見、現身は不気味な笑いをこぼす。


『クックッ、それは"致命的な傷"。人間程度の技術でどうにかなる代物ではないわぁ!』


バッ!バッ!


現身は口から先ほど兵士を溶かした液体を飛ばす。
三人は各々がそれを身に受けぬよう避ける。


「へっ…!なら、回復要らずってことでいいなぁっ!!」


サツキが言葉と共に地を蹴り、己が拳で現身に殴りかかる。


ドゴォッ!


それをギリギリで避けた現身だが、拳が叩きつけられた地面はタダではすまない。

腕が減り込むほどに地が割れ、衝撃波を撒き散らす。


『な、なんて怪力だこの女ッ…!ハッ!?』


サツキの力に驚く現身が、最初にして最後のスキを作ることになった。


「吹き飛べ!寸勁ッ!!」


春通がすかさず横に回り込み、先ほどと同じ一撃をお見舞いする。


ズドォンッ!


現身は再び壁に叩きつけられる。

ブラックベアは両の短剣を持ち直し、最後の仕上げをするべく飛び掛かった。


「見せてやろう…!我が奥義を!」


『こ、のっ…!』


体勢を立て直そうともがく現身に、高速の技を繰り出す。


「クロス…インパクトォッ!!」


ズドドドドドドッッ!!


さながら無限とも言える斬撃の嵐で、その体は幾度も貫かれる。


「ハアアアァァッ!!」


首と胴体が切断され、胴体は細切れにされるように肉片と化した。


ズシャアッ


ブラックベアの乱舞が終わる頃に、首だけとなった現身が地に落ちることとなっていた。


「ふいぃ……」


事が終わり、春通は一息をつく。

ブラックベアは武器に付着した血糊を掃い、再び己が暗器を隠した。



『く、くそっ……この我が……』


首だけとなった現身が苦しみに悶えながらも口を開く。
だが、顔だけになりながらも不敵な笑みを浮かべる。


『これで…終わったと思うなよ……いずれモロク様が復活し…この世に、破滅…を……』


グシャアッ!


それが、モロクの現身の最後の言葉となった。


「戯れ事も大概にしろよ、クソ野郎が」


サツキは足で現身の首を踏み潰し、そこにはただの肉の塊が残るだけとなった。


















今回の出来事は、魔物の介入したことで招かれた災厄として世界に告げられ、幕を閉じた。

しかし、同時に魔王モロクの恐怖がまだ身近にあるということを、人々に知らしめることとなった。




「ハァ……」


春通は再び草原に寝転がっていた。
表情には活気が満ちていない。

手には今まで目を通していた新聞が握られており、一面には事の顛末が書きつらねてあった。


「オイラのこと、何も書かれてないぞぉ……」


一面には"オーバークリエイター、王国の危機を救う"と記されており、春通の名など微塵も載ってはいなかったのだ。


「あの後ダズには無茶し過ぎだって怒られるし……はぁ、いいことがないぞぉ。それもこれも全部………っ!?」


「全部……なんですか?」


寝転ぶ春通の頭の上に、誰かが立っていた。

言わずもながら、先ほど新聞でも取り上げられていた"オーバークリエイター"、サツキである。

「…サツギさん………ま、またパンツが見え…っ!?」


バッ!


再び驚愕し、今度は光の速さで身を起こす春通。
目を細めながら振り返り、サツキの顔を見た。


「そ、そのパンツは……」


「勝負パンツです。今回頑張った春通へのご褒美ですから、特別仕様になってますよ」


春通の問いに、サツキは悠然と答える。
そこには恥ずかしさのハの字すら感じさせない堂々とした立ち振る舞いがあった。


「そんなことより、ブラックベアからの伝言です」


「……?」


口元を押さえる春通に構わず、サツキは言葉を続ける。


「"今回の事は礼を言う。仲間になることは出来ないが、今後の調査には有能な人材を派遣し、協力することを約束しよう。"だ、そうです」


「有能な人材って……」


まともに話す暇さえ無くアサシンギルドに連れ戻されたブラックベアとの別れを、春通は至極残念に思っていた。



(この"有能な人材"というのが、トール火山に派遣された刹牙のことであり、後にアリルと衝突することになるのはもう少し後の話だった)



「それと………ビスカス神父が遺体で発見されました」


「……っ!」


春通の表情が真剣なものへと変わった。
サツキが以前一瞬見せた悲しげな表情を、再び見ることになったのだから。


「サヅギさん……あんた、もしかしで……」


「……それ以上は、言わないでください」



そう。
サツキがビスカス神父と何も繋がりがないというのは真っ赤な嘘で、幼少の頃より慕っていた人物なのは間違いではなかったのだ。

小さい頃から身寄りがなかったサツキを数年間面倒を見たのが、他でもないビスカス神父であり、忘れることの出来ない思い出としてサツキの心に刻まれていた。


そんなサツキの思いを理解してしまった春通は、ゆっくりと口を開いた。



「サツギさんは……本当に心を許せる仲間が欲しかっだんだなぁ」



サツキはその言葉に何も返さなかった。
今まで、心から慕っていた恩人を亡くしたのだから。


ガシッ!


「!??」


春通は意を決して、サツキの両肩を掴んだ。
初めて目に見える動揺を表し、掴んでみれば小さく華奢な体つきをしている彼女の全てに新鮮味を感じながらも、春通は口を開いた。



「オイラは、サツギさんの仲間だ」


「は、春…通……」


後でどれだけ殴られてもいい。
そんな覚悟をしていた春通だが、意外にも拳は飛んでこなかった。


「もう、いいんですよ」


サツキは春通の髪を撫で、微笑みながらその手をゆっくりと、弱いちからで押し戻した。

そして振り返り、春通に顔を見せないようにしながら口を開く。


「あなたが仲間だってことぐらい、わかってるんですから」


いつもと違うサツキの様子を悟り、春通もそれ以上深く詮索はしなかった。


「あと……そんなカッコイイこと言うときぐらい、ちゃんと名前を呼んでください……」


いつもの様子に戻りつつあるサツキを見、春通は安心した。



「さぁ、ではブラックベアを連れ戻しに、アサシンギルドへ行きましょう春通!」


サツキは片腕を上げ、拳を握り閉めていた。


「え、えぇ!?まだそんな気があったんかぁ!?」


「当たり前ですよ」


驚く春通に対し、サツキは笑顔で振り返った。


「私を誰だと思っているんですか?」



春が過ぎ、やがて夏が近づいているであろう暖かい風が、二人を優しく包み込んだ。
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