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なすりつケイロン

遅れてすまねえしょうゆん!

続きは小説です。
長いので二つに分けました。
「ヒナノちゃん、しっかり捕まっててね」


ダズは微かに聞こえる程度の小さな声で、ヒナノに語りかけた。


「……は、はい…!」


ヒナノも小さな声を出し、頷いた。


「副隊長、大人しくその娘をこちらに引き渡していただきたい。あなたも判っているはずだ、このまま続けても……」


シャオユウ言い終えると再び身構えた。

対するダズはフッと一息吐き出し、小さく笑みを作る。
同時にヤレヤレというように肩を竦めた。


「わかってるよ、シャオユウさん。私も不利な戦いはしたくない……」


キン!


その様子は、あたかも諦めたかのように見える。
更に剣を鞘に納めたことで、シャオユウとタルトレットはこのまま穏便に事を済ませられると安堵した。



「それなら……逃げるしかないよね!!」


「ひゃあぁっ!?」


バッ!


ヒナノはダズの手を取りながら、"自分も走って"この場を離れるのだろうと考えていた。

その思惑を覆すように、ダズはヒナノを正面に抱えた。


所謂、お姫様抱っこというものだろう。



「なっ…!?」


「あらあら」


シャオユウは眉間にシワを寄せて驚愕し、タルトレットはまるで他人事のように口元に手をあてた。


ダズは騎士の中でも特に素早さに特化している。
シャオユウとここまで渡り合えるだけでも、常人からすれば有り得ないほどのことである。

それを活かした逃走という選択。
義は無しにしても、勝算のある行動としては尤もだった。


だが、



「そうはさせませんよ」


それを"させない"のがプロンテラ騎士団たるものであり、タルトレットはダズの逃走を初速の時点で狩るべく、地を蹴っていた。

後ろで状況を見ていたからこそできる芸当であり、彼女以外ではその選択肢すら思い付かないだろう。


「クッ…!」


少なからず予測してたことではあるが、ダズはタルトレットの接近を許してしまう。

そのままヒナノを掴まんと、腕を伸ばした。



ガシッ!


しかし、そのタルトレットの腕をしっかりと捕らえた者がいた。

タルトレットは自分の見えない位置から腕を掴まれたこと、更にその接近にさえ気付けなかったことから、ある程度の人物が予想できた。


ふと目が逢うと、思った通りの人物であったことで、再びダズと対峙したときのような表情を顕にせざるを得なかった。


「あなたまで……一体どういうつもりですか?」


「タイタン!?」


そう、ここにいるヒナノを除く三人のギルドマスターであるタイタンが現れ、タルトレットとシャオユウの前に立ちはだかった。

振り返り、名を叫んだダズだったが、


「こっちはまかせろ。早くその娘を連れていけ」


というタイタンの言葉に、数秒の間を開けてから頷きだけを返し、一目散に走り出した。



掴んでいた手をゆっくりと離したタイタンは、一歩後ろに下がり口を開いた。


「……さてと、ここから先は通行止めだぜ」


タルトレットとシャオユウは、再び身構えた。

身構えつつも、二人の顔からは少なからず笑みがこぼれる。


「……今日はツイてる。小隊とは言え、名のあるギルドの隊長と副隊長を相手に戦えるのだからな」


シャオユウは強く拳を握りしめた。

しかし、


「ズルいよシャオゆん。今度は私が戦う番だよ!」


「なっ…!?そんな悠長なことを言ってる場合か!」


タルトレットは自分が戦うと言わんばかりに前に出た。
シャオユウも負けじと押し合い、タイタンの相手にならんとしている。


「「ぐぐぐっ…!」」


「………あー、取り込み中すまねえんだが」


二人の対立を見ていたタイタンが静かに口を開いた。



「俺は戦う気はないぜ。二人の任務はここで終わった事を伝えにきた」


「「えっ…?」」


タイタンの言葉に、二人は顔をしかめる。

だが、納得がいかないというようにシャオユウが再び口を開く。


「どういうことですか…?貴方も知っているはずです!あの娘は…!」


「わかってるさ……"あのお方"が動き始めた。俺らが手を下す必要はもうないってことだ」


"あのお方"という言葉を聞いた途端、二人は真剣な顔になり押し黙った。


















「ダ、ダズさん……」


前に担がれたヒナノは、ダズの横顔を見ながら名を呼んだ。


「うん?どこか痛い?」


ヒナノを気遣うように、ダズは言葉を返す。


二人は大通りを抜けると、人の目に写らないような狭い路地裏に入っていった。
ダズは直ぐさま壁を蹴り、建物が連なる屋根の一つに飛び乗った。


最初は高い場所を怖がっていたヒナノだったが、今はそこから見えるプロンテラの街中を楽しげに眺めていた。



「違うんです、ダズさん。私……嘘をついていました……」


ヒナノは重い口調で喋り始めた。
対するダズは黙したまま、淡々と屋根を跳び移っていく。


「じ、実は私………」


何か重大な告白をせんと口を開いたヒナノだったが、上手く喋ることができない。

それほどまでに戸惑いを感じるようなことなのだろうか。



「……ヒナノちゃん。私もね、最初この街にきたとき、いろんな人に助けてもらったんだ」


ダズは言葉に詰まったヒナノの話題を逸らさんと、口を開いた。


「いきなり人込みの中でお金を取られたり、最初に行ったダンジョンで瀕死の重傷を負ったり……」


過去に自分が経験してきたことをゆっくりと喋る。


「それを、ギルドの人が助けてくれたんだ。本当にいろんな人が、ね……」


風を受け、二人の髪が靡く。
ヒナノは黙ってダズの話を聞いている。


「だから、私も誰かを助けたい。そう思ったから、ヒナノちゃんに助けを求められたときは、柄にもなく張り切っちゃったかな……」


「……すごく助かりました。あそこでダズさんに会わなければ、今頃きっと……」


再び下を向くヒナノ。
余程恐ろしい組織の者達だったのだろうか、ダズはそれ以上深く追求しようとは思わなかった。

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