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さぎろテンドリルリオン

生体編に戻り。

続きは小説です。
戦闘において、逃げるという選択は決して愚かな行為ではない。
特に魔法を扱うウィザード系は、距離を取って自分の詠唱をする時間を稼がなくてはならない。


奈那留は身を隠せる壁を探しながら、対峙するカトリーヌ=ケイロンから距離を離そうとしていた。


「ここなら……あの魔法を詠唱する時間を稼げる…!」


奈那留はカトリーヌの視界に入らない位置まで後退し、壁にもたれながら呪文を唱えた。


「魔法力…増強!」


シャン!


杖を前に掲げ力を込めると、淡い光が手にしたスタッフオブディストラクションを包み込んだ。


「準備は万端、カトリーヌは…!?」


しかし、対するカトリーヌは姿を現さない。
今まですぐにでも飛んできた魔法の嵐が止んだ。


「ま、まさか…!」


奈那留が気付いた時には遅かった。


ドォンッ!


「アァッ…!!」


背にしていた壁が無残にも砕け飛び、奈那留は衝撃で吹き飛ばされた。


「あ、熱…っ!」


体に感じる熱から、それはカトリーヌの放ったファイアーボールであると予想できた。

奈那留は地面に片膝を付きながらも、なんとか大勢を立て直そうと力を入れる。


しかし、


「ぐ、あぁっ…!!」


ビリッ!


その瞬間、壁の向こうから現れたカトリーヌのユピテルサンダーが奈那留に直撃した。

体に電流が走り、同時に壁に叩き付けられた衝撃により耐え難い苦痛が全身を駆け巡る。


「これ、を……発動…させればっ!!」


奈那留は魔法力を増強した力をそのままに、詠唱を始めた。


キュイイィィンッ!


周囲の大気まで震わせるような力が杖に集まっていく。
ウィザード系が得意とする大魔法の詠唱だった。



もちろん、そんなスキをカトリーヌが見逃すがない。


「くっ…!」


詠唱中に動くことは出来ないが、今ここでそれを止めることがいかに愚かな行為かを奈那留は理解していた。

咄嗟にポケットからクリップを取り出し、服に装着した。


ブォンッ!


接近したカトリーヌは奈那留の頭の上から杖を振り下ろした。
打撃攻撃に滅法弱いウィザードの弱点を着いてくる。


ギンッ!


咄嗟に詠唱中の杖でそれを受け止めた。
金属音が響き、詠唱が中断されたかに思われた。



「甘い、ですよ…!!」


奈那留が咄嗟に装着したクリップ。
それは海の魔物フェンのカードを挿した装備、クリップアンダーアキャストだった。

これを装備している限り、詠唱は決して中断されない。

かと言って、このままカトリーヌから攻撃を受け続ければ、詠唱が完了する前に奈那留のほうが力尽きてしまうだろう。



その時、


「えっ!?」


ビリッ!


奈那留でさえ驚くべき事態が起きた。

なんとカトリーヌの攻撃を受けたスタッフオブディストラクションから、先程と同じ"ユピテルサンダー"が放たれたのだ。

カトリーヌはその直撃を受け、後方に吹き飛んだ。


(今だっ!!)


絶望的な状況下で、又とない絶好のチャンスが到来した。

奈那留は詠唱を完了し、杖から魔法を解き放った。



「吹き飛んで!メテオストオォォームッ!!」


ゴゴゴゴゴッッ!!


対峙する二人の頭上、そこにはただの天井があるはずだった。

しかし、それを地鳴りと共に突き破り、落下してくる物体があった。


ズドドオオォォンッ!!


奈那留が唱えた大魔法"メテオストーム"により、天から招来した隕石であった。

隕石は周囲を炎で覆われた状態で落下し、避けることも受け止めることもできないカトリーヌを押し潰した。


「ハァッ、ハァッ…!」


あまりにも大きな魔力を消耗した奈那留は、息を切らしながら頭上を見上げた。


「…ハァッ……あっ……日の、光……?」


目を眩ませるような太陽の光が、地下深くにまで差し込んでいた。

恐らく、上では大変な騒ぎになっているのではないだろうか。


「ここから……脱出できるかも…?」


そう考えた奈那留は、まずはぐれた仲間達を捜すため、大きく消耗した体を引きずりながら歩き始めた。


















ドサッ!


目の前で人が前のめりに倒れた。

いや、それは人であったものだろう。


「……………」


対峙するサッチ=ビスマルクは動じない。

彼女自身が、目の前のエレメス=ガイルを一撃で葬ったのだから。


「…他の……捜す……」


恐らく奈那留と同様に、はぐれた仲間達を捜そうとしているのだろう。

サッチは無言でその場を後にした。


















場面は戻り、奈那留は暗い道を壁に手をつきながら進んでいた。

彼女の考える通りなら、他の仲間も六英雄達と衝突しているかもしれない。
武器らしい武器を持たないエシュゾーや、本来戦闘職ではないサツキが心配である。(実際サツキはまったく心配ないレベルなのだが)


「サッチさんや、菫吏さんはきっと……大丈夫……」


安心し、信頼できる戦闘力、戦闘経験を持ち合わせた者達は無事だと、自分に言い聞かせていた。


「マスカテルちゃんだって……」


あの小さなマスカテルフレーバーだって十分に戦えるのだ。

自分がやらなくてどうする。
奈那留は自分にそう強く言い聞かせ、未だ出会わぬ仲間の姿を思い浮かべていた。


そこには、元気な顔で、体よりサイズが大きめの鎧を纏い、自分の身長の倍近くある武器を振り回すクルセイダーの姿があった。


「今度は……私が助けるんだ……」


ふらつきながらも、意志を強く、前を見て歩く奈那留。




ピチャンッ


(………?)


何かが滴る音がした。

すぐ前の角を曲がったあたりからだろうか。


あのパイプから通じていた道である。
水が滴る程度で今更驚くことはない。


ピチョンッ


だが、その音は何故か奈那留の足を急き立てた。



"嫌な予感"しかしないのである。



「……っ!?」


ピチョンッ


奈那留の視界に飛び込んだものは、想像を絶した。


目の前にいるのは恐らく六英雄の一人、セイレン=ウィンザー。

セイレンは大きな片手で何かを鷲掴みにしていた。


「あ、あぁ……」


小さな体と比例する小さな頭。
それがセイレンの掴んでいたものである。

傍らには割れたヘルムが落ちている。
ヘルムが装着されていたであろうそこからは、紫色の長い髪が伸びていた。


「…あぁあ……あ……」


滴っていたのは、頭を掴み、持ち上げられ、宙に吊されたその全身から流れ出す、"マスカテルフレーバーの血"だった。




「ア、アア、アアアアアァァァーーッッ!!!」


悲鳴とも取れる叫び声をあげ、奈那留は杖を前に構えた。


キイィィンッ!


耳を突き刺すような高周波の音をあげ、奈那留の瞳の色が変化していった。



透き通るような青白さから、赤く、朱く、紅いものへと。
コメント

さっちゃん。最強ー。ななるんどうなるのかなぁ。活躍??

Σ

まさかの展開だった(:_;)
続きが気になる…大部分がセイレンの血だった展開か生き返るハグ展開を祈るす(´・ω・`)

まあ、あの養子クルセがセイレンに勝てるわけがなかった!
一旦場面切り替えて、次はエシュゾーととーりんのほう書くかな。
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