みぬ傷ついた魔王モロク
一気に書き上げました。
もうちょいひねればよかったかな…。
続きは小説です。
もうちょいひねればよかったかな…。
続きは小説です。
「サ、サツキさん…!」
奈那留がサツキに呼び掛けた。
対するサツキは奈那留を視野にいれると、少し顔をほころばせた。
「おう、無事か……って訳でもないみたいだな」
奈那留は足元をフラフラとさせながら、やっと地に立っている状態だった。
「私よりも……マスカテルちゃんが…!」
力を振り絞り、奈那留は叫んだ。
己より深手を負ったマスカテルフレーバーでも、サツキの調合する薬なら一命を取り留められるだろうと、誰もが思うことである。
サツキは無言でマスカテルのほうを見た。
そして数秒後、今だ無言でその場から動かないセイレン=ウィンザーに視線を写した。
「お前が、"悪い奴"だな?」
目を細め、冷たい瞳と、そのセリフとは不釣り合いなほどに不気味な笑みを浮かべ、サツキは口を開いた。
ゾクッ
奈那留は背筋が凍るような感覚を覚えた。
敵であるはずのセイレンではなく、味方であるサツキに。
ゴパァッ!!
ふと奈那留が視線を逸らした瞬間、サツキの姿は消えていた。
次にサツキを視認できたのは、足元がまだ凍り付いているセイレンの顔面に、サツキの膝蹴りが叩きこまれた瞬間である。
足元の氷などまるで最初から無かったかのように、セイレンは軽々と壁に向かって吹き飛んだ。
軽やかに着地したサツキは、直ぐさまマスカテルのほうを向き直った。
しかし、
シュインッ!
空を斬るような音と共に、先程セイレンが吹き飛んだ方向から、スピアブーメランが放たれた。
サツキの顔面を狙っていたようだが、それは寸前で軽く首を横に捻ることで回避された。
「……まだ動けんのか」
サツキは意外だという顔を素直に表現した。
彼女自身も、恐らく最初の攻撃で勝負は決まったと思ったのだろう。
ドンッ!
その時、セイレンの周囲の大気が震えた。
そしてその周囲を、赤い稲妻がバチバチと音を立て、体を包み込む。
「へえ……」
サツキは感嘆の声を上げ、再び冷たく笑った。
それは特定のモンスターだけが使えると言われる"ラッシュアタック"。
攻撃力が倍以上に膨れ上がり、近付くものを瞬く間に葬るであろう、強力なスキルである。
セイレンは一気に距離を縮め、手にした剣を振る。
シャッ!シャッ!
剣の乱舞を、サツキは身軽な動きで回避し続ける。
ドゴッ!
セイレンの剣が壁に激突した。
しかし、崩れるのは当然壁のほうである。
それほどまでにセイレンの攻撃力は増加しているのだろう。
こんなものを生身の人間が喰らったら一たまりもない。
「サ、サツキ…さん…!」
奈那留が力を振り絞り、援護せんと杖を拾う。
しかし、強力な魔法を撃つほどの力はとうに尽きている。
「なんで……私はこんなときに…!」
悲観し、己の無力さを悔やみ、呪いたくなる。
このままでは生身のサツキもいつかは追い詰められてしまう。
今ここで少しでも相手に隙を作らなければ。
『大丈夫ですよ』
「……え…?」
その時、どこからともなく聞こえた声に、奈那留は周囲を見回す。
今までに聞いたことがない声だが、どこか安心できる声。
しかし、ここにはサツキとセイレンと、自分しかいないはずである。
これがフレイヤの声だと、奈那留が気付くのはもう少し後の事になるだろう。
「…………」
セイレンは無言で剣を振り続けている。
驚くべきは、相手がその剣にかすりもしないこと。
だが、長くは続かないだろう。
いずれは壁に追い込まれ、逃げ道を無くす。
それが己の勝機が見える瞬間だと、セイレンも確信していた。
一つ不気味なことがあるとすれば、この交戦の間に、
「………クソが…」
サツキの表情が、まるで"つまらないものを見るような目に変化している"ということ。
次の横薙ぎで、相手は攻撃を避けるために後ろに下がるだろう。
そこを一気に攻め込めば、
バキィッ!
勝てるはずだ。
と、目の前の情景を見るまでは、そう思っていた。
いや、思っていられた。
「……"俺"はこの世で嫌いなものが三つある」
サツキは横薙ぎされる剣が当たる前に、自分の肘と膝で、まるで"白刃取りでもするように剣を受け止めていた"のだ。
更に、受け止めるだけならまだしも、剣が"折れている"。
真っ二つに。
こんな人間がいるはずがない。
いていいはずがない。
いや、いてたまるものか。
セイレンは戦慄した。
「まず、ワンパターンな奴!!」
スパァンッ!
サツキはセイレンの視界から消えるように、体勢は低くし、全身を使って足払いを放つ。
セイレンは宙に浮くように足元をすくわれる。
「次に!喋らねえ奴っ!!」
ドゴォッ!!
次に、宙に浮いたセイレンのみぞおちに向かい、立ち上がる勢いのまま、左手でアッパーを放つ。
背骨まで届くかのような一撃に、セイレンはサツキの顔とほぼ同じ位置まで浮き上がった。
「最後に!!」
サツキは、右の拳を溢れんばかりの力で強く握りしめた。
「テメェみたいに……死んだ魚の目をした奴だああぁッ!!」
ズドォンッ!!
拳をセイレンの後頭部にたたき付け、その勢いのまま地面にめり込ませる。
その衝撃で、地面はセイレンを中心に陥没し、威力の凄まじさをそこに表していた。
クリエイターとは思えない強靭な肉体技に、セイレンは二度と動くことはなかった。
「あの世で後悔するんだな。俺の嫌いなものを全部満たしちまった自分に……」
奈那留がサツキに呼び掛けた。
対するサツキは奈那留を視野にいれると、少し顔をほころばせた。
「おう、無事か……って訳でもないみたいだな」
奈那留は足元をフラフラとさせながら、やっと地に立っている状態だった。
「私よりも……マスカテルちゃんが…!」
力を振り絞り、奈那留は叫んだ。
己より深手を負ったマスカテルフレーバーでも、サツキの調合する薬なら一命を取り留められるだろうと、誰もが思うことである。
サツキは無言でマスカテルのほうを見た。
そして数秒後、今だ無言でその場から動かないセイレン=ウィンザーに視線を写した。
「お前が、"悪い奴"だな?」
目を細め、冷たい瞳と、そのセリフとは不釣り合いなほどに不気味な笑みを浮かべ、サツキは口を開いた。
ゾクッ
奈那留は背筋が凍るような感覚を覚えた。
敵であるはずのセイレンではなく、味方であるサツキに。
ゴパァッ!!
ふと奈那留が視線を逸らした瞬間、サツキの姿は消えていた。
次にサツキを視認できたのは、足元がまだ凍り付いているセイレンの顔面に、サツキの膝蹴りが叩きこまれた瞬間である。
足元の氷などまるで最初から無かったかのように、セイレンは軽々と壁に向かって吹き飛んだ。
軽やかに着地したサツキは、直ぐさまマスカテルのほうを向き直った。
しかし、
シュインッ!
空を斬るような音と共に、先程セイレンが吹き飛んだ方向から、スピアブーメランが放たれた。
サツキの顔面を狙っていたようだが、それは寸前で軽く首を横に捻ることで回避された。
「……まだ動けんのか」
サツキは意外だという顔を素直に表現した。
彼女自身も、恐らく最初の攻撃で勝負は決まったと思ったのだろう。
ドンッ!
その時、セイレンの周囲の大気が震えた。
そしてその周囲を、赤い稲妻がバチバチと音を立て、体を包み込む。
「へえ……」
サツキは感嘆の声を上げ、再び冷たく笑った。
それは特定のモンスターだけが使えると言われる"ラッシュアタック"。
攻撃力が倍以上に膨れ上がり、近付くものを瞬く間に葬るであろう、強力なスキルである。
セイレンは一気に距離を縮め、手にした剣を振る。
シャッ!シャッ!
剣の乱舞を、サツキは身軽な動きで回避し続ける。
ドゴッ!
セイレンの剣が壁に激突した。
しかし、崩れるのは当然壁のほうである。
それほどまでにセイレンの攻撃力は増加しているのだろう。
こんなものを生身の人間が喰らったら一たまりもない。
「サ、サツキ…さん…!」
奈那留が力を振り絞り、援護せんと杖を拾う。
しかし、強力な魔法を撃つほどの力はとうに尽きている。
「なんで……私はこんなときに…!」
悲観し、己の無力さを悔やみ、呪いたくなる。
このままでは生身のサツキもいつかは追い詰められてしまう。
今ここで少しでも相手に隙を作らなければ。
『大丈夫ですよ』
「……え…?」
その時、どこからともなく聞こえた声に、奈那留は周囲を見回す。
今までに聞いたことがない声だが、どこか安心できる声。
しかし、ここにはサツキとセイレンと、自分しかいないはずである。
これがフレイヤの声だと、奈那留が気付くのはもう少し後の事になるだろう。
「…………」
セイレンは無言で剣を振り続けている。
驚くべきは、相手がその剣にかすりもしないこと。
だが、長くは続かないだろう。
いずれは壁に追い込まれ、逃げ道を無くす。
それが己の勝機が見える瞬間だと、セイレンも確信していた。
一つ不気味なことがあるとすれば、この交戦の間に、
「………クソが…」
サツキの表情が、まるで"つまらないものを見るような目に変化している"ということ。
次の横薙ぎで、相手は攻撃を避けるために後ろに下がるだろう。
そこを一気に攻め込めば、
バキィッ!
勝てるはずだ。
と、目の前の情景を見るまでは、そう思っていた。
いや、思っていられた。
「……"俺"はこの世で嫌いなものが三つある」
サツキは横薙ぎされる剣が当たる前に、自分の肘と膝で、まるで"白刃取りでもするように剣を受け止めていた"のだ。
更に、受け止めるだけならまだしも、剣が"折れている"。
真っ二つに。
こんな人間がいるはずがない。
いていいはずがない。
いや、いてたまるものか。
セイレンは戦慄した。
「まず、ワンパターンな奴!!」
スパァンッ!
サツキはセイレンの視界から消えるように、体勢は低くし、全身を使って足払いを放つ。
セイレンは宙に浮くように足元をすくわれる。
「次に!喋らねえ奴っ!!」
ドゴォッ!!
次に、宙に浮いたセイレンのみぞおちに向かい、立ち上がる勢いのまま、左手でアッパーを放つ。
背骨まで届くかのような一撃に、セイレンはサツキの顔とほぼ同じ位置まで浮き上がった。
「最後に!!」
サツキは、右の拳を溢れんばかりの力で強く握りしめた。
「テメェみたいに……死んだ魚の目をした奴だああぁッ!!」
ズドォンッ!!
拳をセイレンの後頭部にたたき付け、その勢いのまま地面にめり込ませる。
その衝撃で、地面はセイレンを中心に陥没し、威力の凄まじさをそこに表していた。
クリエイターとは思えない強靭な肉体技に、セイレンは二度と動くことはなかった。
「あの世で後悔するんだな。俺の嫌いなものを全部満たしちまった自分に……」
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