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プロンテラ襲撃編3

詰め込んでたら案外時間がかかった。


続きは小説です。
"祭壇"と呼ばれる場所に辿り着いたユノンとヒナノ。

ヒナノは、ユノンをゆっくりと壁にもたれかけさせるように下ろした。


「すいません……ヒナノ……」


「さっきから謝ってばっかりだよ?大丈夫、後は任せて」


未だ顔色の優れないユノンに、ヒナノは笑顔で返した。


ユノンが懸念しているのは、自分の負ったダメージのせいだけではないだろう。

これから起こることに対する、ヒナノへの"不安"や"心配"が少なからず含まれていることが伺える。



祭壇と呼ぶには小さな部屋で、数本のロウソクで燈された空間の中心に、魔法陣が描かれているだけだった。

ヒナノはゆっくりと魔法陣の中心へと歩んでいく。
それに反応するように、魔法陣からは青白い光があがった。



ユノンは壁に背を預けながら、目を細めながらヒナノを見る。


(……頼みましたよ、ヒナノ……)


その表情はどこか淋しげだった。
まるで遠くにいる存在を羨むような。


(我が国の……護り神として……)


ヒナノは魔法陣の真ん中にしゃがみ込み、両手を合わせ、祈りを始めた。



















「ペコペコ隊怯むな!!グランペコ隊は支援を怠るなよ!!」


南門は他の門とは違い、必死の攻防を繰り広げていた。

戦場となった場所の真ん中で指示を出すのは、一人だけ他の騎兵隊とは違い、グリフォンに跨がった騎士だった。


ザシュッ!


迫り来るのは、ピラミッドダンジョンに棲息している、体に包帯を巻かれたモンスター"マミー"の大群。

グリフォンの騎士は、襲い来る包帯男達を次々と薙ぎ倒す。


「オォッ!さあ、次はどいつだ!!この騎兵隊隊長の"オオニシ=ネオ"が相手をしてやる!!」


オオニシ=ネオと名乗った女騎士は、グランペコに乗るクルセイダーやパラディンの上位職"ロイヤルガード"である。

世界でも小数しか存在しないこの職は、本来凶暴なグリフォンを使役することで更に機動性に優れたものとなっている。

支援補助、自己防衛力は他の追随を許さない。
まさに盾となり、味方を守る者の鏡と言える存在である。


ズドドドドッ!


「ぐわあああぁっ!!」


その時、前方のナイト達ペコペコ部隊が、衝撃波を受けて吹き飛んだ。


「な、なんだ…!?」


ネオは我が目を疑った。
あれほどの数を一瞬で吹き飛ばすような力を持つものが、包帯男の集団にいるとは思えない。


しかし、それはすぐに合点がいく。


「ピラミッドの王……"オシリス"か…!!」


他のマミー達とは違い、全身に紫色の包帯を巻いたものがその中心に立っていた。
周囲にはエンシェントマミーを取り巻きに従えている。


「ワアアアアァァッ!!」


次のペコペコ部隊が、オシリスに向かい突進をかける。


ズバァッ!!


決死の攻撃も虚しく、オシリスの放つ強力な範囲攻撃により、ペコペコ隊第二波は軽々と後方に吹き飛ばされた。


「ペコペコ隊!一旦退け!!グランペコ隊は負傷者を戦線から下げさせろ!奴には私が行く!!」


バサッ!


ネオは手綱を強く弾き、グリフォンを前進させた。

手には赤と白で彩られた聖なる槍"ロングホーン"が握られている。


「さあ来い、私が相手だ!古代の王とやら!貴様の時代は既に終わったということを教えてやる!!」



















キンッ!ギィンッ!!


火花が散る程の、金属のぶつかり合いが東門では行われていた。

片方はカタール"インバーススケイル"を装備したアサシンクロスのアヤ。
もう片方は魔剣"ミステルテイン"を装備したロードオブデスである。


鍔ぜり合いをする中で、ロードオブデスは焦りを覚える。


『クソッ…!何故だ!?何故貴様ごとき人間に…!我が押されているというのかぁッ!!』


対するアヤは不敵な笑みを浮かべ、余裕を見せている。


「へへっ!でもおじさんが弱くなったわけじゃないよ!」


キィンッ!!


カタールで魔剣を弾き返し、距離を取る。


「私が強くなった!ただそれだけのことっ!」


ズオッ!


その瞬間、アヤは体を回転させるようにカタールを振り、衝撃波"ソウルブレイカー"を放った。


ガキィンッ!


それは手にした魔剣をしっかりと狙い、弾き飛ばす。


『ナ、ナニィ!?』


剣を飛ばされ、無防備になった状態をアヤは当然見逃さない。
一気に懐に潜り込み、カタールで切り抜ける。

胴を分断され、ロードオブデスは成す術無く地に倒れた。


『クソォッ…!また、敗れるというのか……下等な、人間に…!!』


「……人間は下等なんかじゃない。成長して、強くなれるんだ」


それがロードオブデスの最後の言葉となり、その体は煙のように散り、風に乗って舞い上がっていった。



ドドドドッ!!


直後、主を失ったニブルヘイムのモンスター達は、次から次へと街に流れ込んできた。


「まずい…!エンチャントデットリーポイズンッ!!」


その数を一人で鎮圧できるとは到底思えない。


ザシュッ!


突進してきたディスガイスを切り刻み、アヤはモンスターの大群をせき止めんと地を翔ける。


「入って来るなぁ!メテオアサルトッ!!」


ズバァッ!!


先程のソウルブレイカーのような衝撃波を、広い範囲で攻撃可能にするスキルである。

しかし、数の前では一人が相手にできる量などたかが知れている。
アヤもそれはわかっているだろう。



「でも……一人になっても、戦うんだ…!ヤアアアァーーッ!!」


退けぬ理由がそこにはあった。

いかに傷付き、その身を焼かれようとも、守るべきものがそこにあるのだから。


アヤは捨て身の覚悟で大群に突進していった。






ズドンッ!!



「えっ!?」


大群に攻撃せんと武器を構えたアヤの後方から、"とてつもなく巨大な剣"が振り下ろされた。

その剣は一気に数十匹を捻り潰し、モンスター達を動揺させる。


もちろん、こんなものを扱えるのは人間ではないだろう。
更に、アヤの周囲を巨大な影が包み込んだ。

恐る恐る後ろを振り返ると、



「……ソ、ソードガーディアン!?」


トール火山の守護者"ソードガーディアン"がその剣を振り下ろしていた。

そしてその足元には、




「一人じゃ、ねえだろ?」


「………タイタン……」


"WaterCarnival"のギルドマスター、タイタンがそこに立っていた。

アヤは徐々に顔を緩め、最後には満面の笑顔を浮かべ、


「おかえり!!タイタン!!」


ガバッ!


「おわぁ!?」


体当たりでもするかの如く勢いで、タイタンに飛び付いた。

若干呆れ顔になりながらも、


「おいおい……再会を喜び合う前に、あっちをなんとかすんぞ?」


鋭い目線をモンスター達に向けていた。


ドドドドッ!


新たに現れたソードガーディアンに対し、モンスター達は大群で飛び掛かった。


グオォッ!!


しかし、守護者の振る巨大な剣の前に、地上を走るデュラハンやジビットは横薙ぎに一掃される。

それだけでは終わらんと、空中から飛び掛かるルード、キューブ、ハイローゾイスト達。



ドスッ!ドスッ!


「空からは行かせないよ!!」


「私達がいるからには、ここは通しません!!」


同時に複数の矢を放った二人。
スナイパーのマツリと、ダンサーの菫吏である。

二人はソードガーディアンの両肩に一人ずつ立ち、高い位置からの射撃を行っていた。


「一緒にいくよとーりん!シャープ…!」


「はい!アロー…!」


二人再び弓を引き絞る。

狙いは空を埋め尽くすかのように現れたモンスターの大群。


「シューティングッ!!」


「シャワーッ!!」


ズガガガガガッ!!


マツリのシャープシューティングは直線上のモンスターを一掃し、モンスターに埋め尽くされた黒い空に巨大な穴を開けた。
菫吏のアローシャワーはその周囲のモンスターを的確に撃ち落とし、地上へ落下させる。



「マツリ!菫吏!二人はここの防衛を頼む!すぐに"アレ"が来るはずだ!!」


その様子を見ていたタイタンは、笑顔の弓手達に指示を出した。


「わかったよおじさん!任せて!」


「タイタンさん!気をつけて!」


それに答え、互いに親指を立ててサインを送り合った。

タイタンは振り返り、アヤのほうを見た。


「よし、行くぞアヤ」


ピイイィィーーッ!!


そして、指笛で大きな音をあげる。
まるでそれが誰かに対する合図だというように。



バサァッ!


『キュイイィーーッ!!』


「わっ!すごい!本物のカーサだ…!」


アヤが驚くのも無理はない。
本来はトール火山にしか棲息していないはずのモンスター、火の鳥カーサが雲の上層から下りてきた。

カーサはタイタン達の前に着地し、翼をたたみ、頭を下げた。


「行くぞ!乗れ、アヤ!」


「わかった!」


こんな巨大なモンスターの背に躊躇無く乗れるのもアヤぐらいだろう。


ちなみにマツリは一度足に捕まれ、連れ去られた経験があるので、二度と乗りたくないと駄々をこねた話があった。
菫吏は服装からして、寒い空に上がるのは避けたほうがいいというタイタンの判断だった。


必然的に残ったアヤが飛び乗り、カーサは遥か上空まで一気に舞い上がった。






同時刻。
トール火山の前に一人の聖職者がいた。

何やら手を大きく振りながら、誘導をしているように見える。


「ガーディアンのみなさーん!ゆっくりと、一人ずつ乗ってくださーい!」


その聖職者は目の前に複数のワープポータルを召喚し、トール火山から出てくるソードガーディアン、ボウガーディアンを送り出していた。


ダズやシャオユウ、タイタンやマツリを送り出した張本人。
プロンテラ大聖堂のザーロットだった。

彼はいち早くプロンテラの異変に気付き、助けを求めタイタン達と合流した。


スルトの助力もあり、トール火山の主"イフリート"は氷の洞窟との戦いのために用意しておいた軍勢を貸し与えてくれた。
最早戦争が起こることがないと分かった以上、炎の魔人にとっても必要のないものなのだろう。


「皆さん……どうかプロンテラをお願いします……」


遥か遠方より心強い味方達を送り込む聖職者は、街の平和と戦う者達の無事を祈るばかりだった。







場面は戻り、カーサの背に乗ったアヤは、タイタンに向かって大きめな声で語りかけた。
高度も高くスピードも出る中で、声が伝わりにくいこともあってだろう。


「タイタン、西で戦ってる人が危ない!そっちの援護に行ってあげたほうが…!」


アヤと同じく、タイタンもそれを感じ取っていただろう。
戦っているのはアリルなのだから、尚更である。


タイタンはカーサに北へ向かうよう指示を出していた。


「西は大丈夫だ。既に"援軍"が向かってる」


「……援…軍?」


その言葉に、アヤは首を傾げた。

既にプロンテラ騎士団は全ての人員が東西南の門に送られたはずである。
他の援軍が望める状態とはとても思えない。


タイタンは振り向き、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。



「お前の"よく知ってる奴等"だよ」


「……??」



















「ハァッ…!ハッ!!」


アリルは肩で息をしながらも、両手に持ったカウンターダガーを強く握り締めた。


「クッ…フレイム、ランチャー…!!」


武器に火属性を付与し、二匹のオーク族の次の攻撃へと備える。

相手は地属性。
属性の相性は抜群のはずだった。


ゴロゴロ……


「…ッ!!」


頭上に暗雲が立ち込めていることに気付く。

それは自分も取得しており、特性も十分に理解している。
雷属性の範囲魔法"サンダーストーム"だった。


ピシャァンッ!!


すぐさま横に飛び退き、落雷を回避する。
アリルがいた地面に落ちた雷は地面に穴を開け、周囲に炎を撒き散らすほどの高威力だった。
直撃すればひとたまりもない。


それを放ったのはオークヒーロー。
もちろん、当てるつもりなどないのだろう。


本命はもちろん、


『ハッハッハーッ!!』


横から、その巨体とは思えないほどのスピードで迫り来る者がいる。

もう一匹のオーク族、オークロードである。


(野郎…!なんてスピードで動きやがる!!)


落雷を避けたことで体勢を崩したアリルには、最早受ける以外に方法がない。

オークロードはその巨体とスピードを活かし、無防備なアリルにドロップキックを放った。


アリルはそれを左腕で防がんと防御体勢を取った。

しかし、


ゴキィッ!


「ぐ…おっ…!」


鈍い音を上げ、衝撃が腕から肩、そして全身へと伝わるのが分かった。

受け切れなかった勢いで、アリルの体は真っ直ぐ吹き飛ぶ。


ドガァッ!!


その勢いのまま、壁に叩きつけられ、レンガの壁が無残にも破壊される。


(……左腕……肩も……逝った、か……)


瓦礫に埋もれながら、自分の半身が動かないことを理解する。

意識が遠のいていく。
恐らく立ち上がる程の力も残っていないだろう。


(チキショウ………ここで……終わるのか…?)


『ガハハッ!!他愛もないな!!』


『グハハッ!!その通りだな兄弟!!』


高らかに笑い、勝利を確信するオーク達。

このまま西門は突破され、街が崩壊するであろうことが想像できる。
ましてや二体の強力なモンスターの前に、プロンテラは成す術もないだろう。








その時、門の外で微かな異変が起きていた。




『グ、グアアアァァアッ!!』


西門前で突撃の準備をしていたハイオークやオークアーチャー達が、次々と悲鳴をあげ倒

れていった。


『何事だ!!兄弟!!』


オークロードは後方の異変に声を荒げる。


『ワカラン!!ワカランが何者かの攻撃を受けているぞ兄弟!!』


そう言っている間にも、オーク達は血飛沫を撒きながら断末魔の悲鳴をあげている。


『オイ!後ろに何かいるぞ!?』


オークの一人が声を上げ、指をさした。


その先には、腕を組み、荒野に一人仁王立ちをする者がいた。



「……………」


誰もが知っている、アサシンギルドの大幹部"ブラックベア"である。

オーク達の異変はブラックベアと遥か遠く離れた場所で起こっていたが、今のオーク達に疑わしき者はこのブラックベアだけである。


『野郎共!!アイツをやっちまえ!!』


『ウオオオオオォォォッ!!!』


オーク達は雪崩のようにブラックベアへ突進し始めた。


その時、ブラックベアが静かに片腕を前に出した。



ドスッ!ザシュッ!


『グオオォォッ…!』


その合図と同時に、前線のオーク達が次々と倒れていく。

何かの攻撃かとも考えられるが、ギロチンクロスにそういったスキルは存在しない。
どんなに修練を積もうとも、その場から動かずに遠距離の敵を的確に攻撃していくなど不可能に近い芸当である。


そしてブラックベアは再び口を開いた。



「アサシン部隊!!中央を突破せよ!!」


「オオオオォォーーーーッッ!!!」


ババババババッ!!


言葉と共に、ブラックベアの前に"数百を越えるアサシン達"が姿を現した。


そう、アサシン系の得意とする隠密スキル"クローキング"である。


「アサシンクロス部隊!!アサシン部隊の突破した場所から街へ入り込め!!!」


「ハッ!!」


更に、数十人のアサシンクロス達が姿を現し、アサシン達へ続いていく。









タイタンの言う"援軍"とはこのことである。


「す、すごい……アサシンギルドが動くなんて……」


上空からも見える程の、アサシンギルドの軍勢。
何よりも驚いたのは、馴れ合いを好まないはずのアサシンギルドがプロンテラを援護したことである。


この時アヤはまだ、ブラックベアとサツキ、春通を通したプロンテラとの関係をまだ知らない。










アヤと共にいるタイタンと、祭壇にいるユノンは、ほぼ同時に笑みを浮かべた。




「「さあ、反撃の時間だ(です)」」
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