三国戦争編4
とーりんの戦いをキリのいいところまで。
さて、こっからが本番だ。
続きは小説です。
さて、こっからが本番だ。
続きは小説です。
バチバチッ!
「シビア…!」
菫吏は弓に力を込め、弦を引いた。
だが、そこに存在する矢は実体ではない。
「レインストームッ!!」
放たれた"光の矢"は天高く舞い上がり、ある地点で弾け飛んだ。
「降り注げえぇー!!」
パァッ!
菫吏の声と共に、弾けた光から先程と同じく、実体を持たない光の矢が雨のように降り注いだ。
ズドドドドドッ!!
「う、うわあああぁ!」
迫り来るシュバルツバルド本隊のグランペコ隊は、自分達に襲い来る攻撃に混乱する。
まずは足止めに成功した、と菫吏は考える。
そして手にした弓を再び背に担ぎ、次に腰に挿した鞭を引き抜き、伸ばす。
パァンッ!
鞭をしならせ、勢いよく地面を叩く。
さながら、見た目はどこぞの女王様である。
「ペコペコ隊!突撃!!」
ドドドドドッ!!
菫吏の合図を待っていたと言わんばかりに、後ろに控えていたペコペコの騎士達が突撃する。
それらが自分の横を通り抜けたのを確認すると、菫吏は鞭を操り、"舞い始めた"。
「メランコリー!!」
キュピイィンッ
菫吏が叫ぶと、前を走るペコペコ隊が赤い光に包まれた。
補助を得意とするワンダラーのスキルの一つである。
「先頭列!ブランディッシュスピア!!」
この"メランコリー"は、特定のスキルを数倍の性能に引き上げる力を持っている。
菫吏が指示したのは勿論、強化されたスキルを使用するためである。
「オオオオオォォッ!!」
ズバアァァァンッ!!
先頭にいた数人の騎士達が、槍による範囲攻撃を一斉に放った。
それだけで、数十人のグランペコ隊が吹き飛ばされる。
「え……えっ!?」
スキルを放った騎士達自身でさえ驚いているようだ。
「後方列!スパイラルピアース!!」
立て続けに菫吏が指示を出す。
ズガガガガガガッ!!
地面に螺旋状の傷を付けながら、ロードナイト達が突撃をかける。
ダズのそれと比べても、勝とも劣らないだろう。
相手側も、菫吏の力によるものだと感づき始めたようだ。
「あ、あの女を止めろー!!」
からくも攻撃から逃げ切ったグランペコ隊の騎士が、後方に控えていたセージ、プロフェッサー達に指示を出し始めた。
その様子を見、菫吏は不敵に微笑んだ。
「そうでしょう、そうするしかないんです」
パァンッ!
再び鞭を地面にたたき付け、ステップを変え始めた。
「月明かりの…セレナーデ!!」
パァァッ
菫吏は次に、自分の後方に控えていたウィザード、ハイウィザード達にスキルをかけた。
青白い光が魔導師達を包み込む。
「ウィザード隊!ストームガストッ!!」
ビュオオオォォォッ!!
菫吏の指示と共に放たれた吹雪の大魔法は、凄まじい勢いで周囲を凍りつかせていった。
それもかつてタイタンや奈那留が唱えたものとも引けを取らない。
自分が一騎当千するのではなく、味方に一騎当千させる"力を与える"のが菫吏の能力であり、才能であった。
「な、なんだあの女は…!?」
「くそ…!う、美しい…!」
背につけた羽と鞭の煌めきが、敵兵までも魅了する舞となる。
(彼女が"戦場の戦乙女/ブレイブヴァルキュリア"と呼ばれるようになったのは、シュバルツバルド共和国が最初だとも言われている。)
「これなら…いける!」
菫吏は確信し、次の攻撃をその閉めにせんとする。
「ハイウィザード隊!いきます!」
「ははっ!!」
強力な範囲攻撃魔法を得意とするハイウィザード達。
皆が一斉に杖を唸らせ、"魔法力増強"を行う。
「叩き潰します!メテオストーーームッ!!」
ゴゴゴゴゴッ!!
雲を分け、空から巨大な隕石が落下してくる。
これではいくらシュバルツバルド本隊とはいえ、ひとたまりもないだろう。
その時、
ダンッ!
(あ、あいつは…!)
崖下から大斧の男が姿を現した。
恐るべき跳躍力で、相当な距離を駆け上がってきたように思われる。
あろうことか、他のシュバルツバルド軍が避けた"隕石の落下地点"にいる。
(何をして……えっ!?)
男は大斧をその場で振り回し始めた。
まるで隕石を受け止めようとでも言うように。
その素振りがピタリと止まり、男は大きく息を吸い込んだ。
「ハアアアアアアァァァッ!!」
ズオォッ!!
次の瞬間、大斧を勢いよく右から左へ回転させる。
それにより、目の前にまるで竜巻でも吹くかのような風が巻き起こった。
「唸れ!!"ハリケーンフューリー"!!」
風は地面から上空へと、地形的に"有り得ない風向き"で吹き荒れる。
(あ、あの男…!)
菫吏は男が何をしようとしているのかを理解した。
理解すると同時に、全身が震えた。
(本気か…!?)
既に、隕石は男の上空数十メートルまで接近している。
「ダアアアアアアァァァッッ!!」
ズガアアァァァンッ!!
男は大斧を横薙ぎに大きく振り、隕石に直撃させた。
そう、男は"隕石を破砕する"気など微塵もなかったのだ。
その狙いは、"隕石を弾き返す"こと。
もはやその狙いなど言うまでもない。
「さて、このままでは部隊が隕石の下敷きだ。どうする?美しいお嬢さん……」
大斧の男は笑った。
この上ないほどに、不敵に。
「…っ!スイングダンズ!!」
菫吏は即座に鞭を弾き、部隊全体に移動速度上昇の補助をかけた。
「全軍!!隕石の落下地点から離れて!!」
言うが早いか、後方の騎士、魔導師達はクモの子を散らすように走り去った。
「た、隊長補佐は!?」
一人残った騎士が、菫吏が動こうとしないことに気付く。
菫吏は腰に挿した矢筒から矢を全て引き抜き、宙に放り投げた。
バッ!
「出来る限り…破砕します!!」
手にした鞭に力を込め、落下する数十本の矢を次々と弾き飛ばす。
「ハアアアアアアァァァッ!!」
パンッ!パンッ!パンッ!
菫吏の放つアローバルカンが隕石に突き刺さる。
少しずつではあるが、徐々に表面が削られていく。
「アアアアアァァッ!!」
パンッ!パパンッ!
だが、やがて全ての矢を撃ち切ることになり、成す術が無くなる。
それでも直径数メートルの隕石が破砕仕切れず残り、軌道すら変えることができない。
「クッ…!」
菫吏は直撃を覚悟した。
ドガアアアァァンッ!!
隕石が地に落下し、大きな傷痕を地面に残していく。
巻き込まれた者は恐らくいないだろう。
ただ一人残った菫吏を除いては。
「さて、彼女はどうなったか……ん?」
落下地点を見、大斧の男は煙に紛れる人影を発見した。
土煙が晴れ、やがて倒れる菫吏の姿が確認できるようになる。
「く、う………っ!!」
全身に走る痛みに、気を失う暇さえ与えられず、菫吏は目を覚ました。
だが、同時に視界に飛び込んだのは、隕石によってえぐり取られた大地と、
「そんな…!どうして…!?」
覆いかぶさるように倒れる、最後まで菫吏の傍にいた騎士の無残な姿だった。
「菫吏…様……お逃げ…ください……」
騎士は全身の力を振り絞り、口を開いた。
体に残る傷が、もはや助からないことを表しているようだった。
騎士は落下の直前に菫吏を庇い、地に倒れた。
彼女にも恐らく、それが分かったのだろう。
「奴は……化け…物……です……お逃げ……く、だ……」
菫吏の胸の中で、騎士の体から力が抜けていくのが感じられた。
名前すら知らなかったであろう、その騎士の。
されど、一つの人間の命が尽きる瞬間を、菫吏は目の当たりにされる。
「素晴らしい騎士道だね」
大斧の男はいかにも関心するというように、しかしまるで興味がないともとれる表情で、口を開いた。
ブォンッ
男は斧を一振りし、前に構えた。
「では、僕は名乗ることでその騎士道に応えるとしよう」
変わらず、余裕さえ伺える表情で、堂々と続ける。
「シュバルツバルド共和国軍所属、"瀬戸 誠"。それが僕の名だ」
菫吏は戦慄した。
この上ない畏れと、恐怖を抱きながら。
「シビア…!」
菫吏は弓に力を込め、弦を引いた。
だが、そこに存在する矢は実体ではない。
「レインストームッ!!」
放たれた"光の矢"は天高く舞い上がり、ある地点で弾け飛んだ。
「降り注げえぇー!!」
パァッ!
菫吏の声と共に、弾けた光から先程と同じく、実体を持たない光の矢が雨のように降り注いだ。
ズドドドドドッ!!
「う、うわあああぁ!」
迫り来るシュバルツバルド本隊のグランペコ隊は、自分達に襲い来る攻撃に混乱する。
まずは足止めに成功した、と菫吏は考える。
そして手にした弓を再び背に担ぎ、次に腰に挿した鞭を引き抜き、伸ばす。
パァンッ!
鞭をしならせ、勢いよく地面を叩く。
さながら、見た目はどこぞの女王様である。
「ペコペコ隊!突撃!!」
ドドドドドッ!!
菫吏の合図を待っていたと言わんばかりに、後ろに控えていたペコペコの騎士達が突撃する。
それらが自分の横を通り抜けたのを確認すると、菫吏は鞭を操り、"舞い始めた"。
「メランコリー!!」
キュピイィンッ
菫吏が叫ぶと、前を走るペコペコ隊が赤い光に包まれた。
補助を得意とするワンダラーのスキルの一つである。
「先頭列!ブランディッシュスピア!!」
この"メランコリー"は、特定のスキルを数倍の性能に引き上げる力を持っている。
菫吏が指示したのは勿論、強化されたスキルを使用するためである。
「オオオオオォォッ!!」
ズバアァァァンッ!!
先頭にいた数人の騎士達が、槍による範囲攻撃を一斉に放った。
それだけで、数十人のグランペコ隊が吹き飛ばされる。
「え……えっ!?」
スキルを放った騎士達自身でさえ驚いているようだ。
「後方列!スパイラルピアース!!」
立て続けに菫吏が指示を出す。
ズガガガガガガッ!!
地面に螺旋状の傷を付けながら、ロードナイト達が突撃をかける。
ダズのそれと比べても、勝とも劣らないだろう。
相手側も、菫吏の力によるものだと感づき始めたようだ。
「あ、あの女を止めろー!!」
からくも攻撃から逃げ切ったグランペコ隊の騎士が、後方に控えていたセージ、プロフェッサー達に指示を出し始めた。
その様子を見、菫吏は不敵に微笑んだ。
「そうでしょう、そうするしかないんです」
パァンッ!
再び鞭を地面にたたき付け、ステップを変え始めた。
「月明かりの…セレナーデ!!」
パァァッ
菫吏は次に、自分の後方に控えていたウィザード、ハイウィザード達にスキルをかけた。
青白い光が魔導師達を包み込む。
「ウィザード隊!ストームガストッ!!」
ビュオオオォォォッ!!
菫吏の指示と共に放たれた吹雪の大魔法は、凄まじい勢いで周囲を凍りつかせていった。
それもかつてタイタンや奈那留が唱えたものとも引けを取らない。
自分が一騎当千するのではなく、味方に一騎当千させる"力を与える"のが菫吏の能力であり、才能であった。
「な、なんだあの女は…!?」
「くそ…!う、美しい…!」
背につけた羽と鞭の煌めきが、敵兵までも魅了する舞となる。
(彼女が"戦場の戦乙女/ブレイブヴァルキュリア"と呼ばれるようになったのは、シュバルツバルド共和国が最初だとも言われている。)
「これなら…いける!」
菫吏は確信し、次の攻撃をその閉めにせんとする。
「ハイウィザード隊!いきます!」
「ははっ!!」
強力な範囲攻撃魔法を得意とするハイウィザード達。
皆が一斉に杖を唸らせ、"魔法力増強"を行う。
「叩き潰します!メテオストーーームッ!!」
ゴゴゴゴゴッ!!
雲を分け、空から巨大な隕石が落下してくる。
これではいくらシュバルツバルド本隊とはいえ、ひとたまりもないだろう。
その時、
ダンッ!
(あ、あいつは…!)
崖下から大斧の男が姿を現した。
恐るべき跳躍力で、相当な距離を駆け上がってきたように思われる。
あろうことか、他のシュバルツバルド軍が避けた"隕石の落下地点"にいる。
(何をして……えっ!?)
男は大斧をその場で振り回し始めた。
まるで隕石を受け止めようとでも言うように。
その素振りがピタリと止まり、男は大きく息を吸い込んだ。
「ハアアアアアアァァァッ!!」
ズオォッ!!
次の瞬間、大斧を勢いよく右から左へ回転させる。
それにより、目の前にまるで竜巻でも吹くかのような風が巻き起こった。
「唸れ!!"ハリケーンフューリー"!!」
風は地面から上空へと、地形的に"有り得ない風向き"で吹き荒れる。
(あ、あの男…!)
菫吏は男が何をしようとしているのかを理解した。
理解すると同時に、全身が震えた。
(本気か…!?)
既に、隕石は男の上空数十メートルまで接近している。
「ダアアアアアアァァァッッ!!」
ズガアアァァァンッ!!
男は大斧を横薙ぎに大きく振り、隕石に直撃させた。
そう、男は"隕石を破砕する"気など微塵もなかったのだ。
その狙いは、"隕石を弾き返す"こと。
もはやその狙いなど言うまでもない。
「さて、このままでは部隊が隕石の下敷きだ。どうする?美しいお嬢さん……」
大斧の男は笑った。
この上ないほどに、不敵に。
「…っ!スイングダンズ!!」
菫吏は即座に鞭を弾き、部隊全体に移動速度上昇の補助をかけた。
「全軍!!隕石の落下地点から離れて!!」
言うが早いか、後方の騎士、魔導師達はクモの子を散らすように走り去った。
「た、隊長補佐は!?」
一人残った騎士が、菫吏が動こうとしないことに気付く。
菫吏は腰に挿した矢筒から矢を全て引き抜き、宙に放り投げた。
バッ!
「出来る限り…破砕します!!」
手にした鞭に力を込め、落下する数十本の矢を次々と弾き飛ばす。
「ハアアアアアアァァァッ!!」
パンッ!パンッ!パンッ!
菫吏の放つアローバルカンが隕石に突き刺さる。
少しずつではあるが、徐々に表面が削られていく。
「アアアアアァァッ!!」
パンッ!パパンッ!
だが、やがて全ての矢を撃ち切ることになり、成す術が無くなる。
それでも直径数メートルの隕石が破砕仕切れず残り、軌道すら変えることができない。
「クッ…!」
菫吏は直撃を覚悟した。
ドガアアアァァンッ!!
隕石が地に落下し、大きな傷痕を地面に残していく。
巻き込まれた者は恐らくいないだろう。
ただ一人残った菫吏を除いては。
「さて、彼女はどうなったか……ん?」
落下地点を見、大斧の男は煙に紛れる人影を発見した。
土煙が晴れ、やがて倒れる菫吏の姿が確認できるようになる。
「く、う………っ!!」
全身に走る痛みに、気を失う暇さえ与えられず、菫吏は目を覚ました。
だが、同時に視界に飛び込んだのは、隕石によってえぐり取られた大地と、
「そんな…!どうして…!?」
覆いかぶさるように倒れる、最後まで菫吏の傍にいた騎士の無残な姿だった。
「菫吏…様……お逃げ…ください……」
騎士は全身の力を振り絞り、口を開いた。
体に残る傷が、もはや助からないことを表しているようだった。
騎士は落下の直前に菫吏を庇い、地に倒れた。
彼女にも恐らく、それが分かったのだろう。
「奴は……化け…物……です……お逃げ……く、だ……」
菫吏の胸の中で、騎士の体から力が抜けていくのが感じられた。
名前すら知らなかったであろう、その騎士の。
されど、一つの人間の命が尽きる瞬間を、菫吏は目の当たりにされる。
「素晴らしい騎士道だね」
大斧の男はいかにも関心するというように、しかしまるで興味がないともとれる表情で、口を開いた。
ブォンッ
男は斧を一振りし、前に構えた。
「では、僕は名乗ることでその騎士道に応えるとしよう」
変わらず、余裕さえ伺える表情で、堂々と続ける。
「シュバルツバルド共和国軍所属、"瀬戸 誠"。それが僕の名だ」
菫吏は戦慄した。
この上ない畏れと、恐怖を抱きながら。
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