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三国戦争編5

なんか執筆が思うようにいって楽しい。


続きは小説です。



「ねえねえ、ジル」


ここはプロンテラ王国、ヴァルキリーレルムにある庭園。

10歳にも満たないであろう少女が、後ろにいる騎士に呼び掛ける。

少女の腕の先で、更に小さな幼女がその手を握り、もう片方の指を口にくわえている。


「はい、なんでしょう?」


後ろにいる女騎士が、それに答えた。
真紅の長髪と瞳が非常に特徴的である。


「ジルは、なんで騎士になったの?」


少女の質問に、ジルと呼ばれた女騎士は少し困ったような顔をした。


「私は……父のようになりたいと思っていました。その後ろ姿を追っていたら、自然とこの道を選ぶことになっていたんです」


「そっかぁ、ジルのお父上はすごいもんね」


その答えに何の疑問も抱かず、無邪気に語りかける少女にジルは少し戸惑っていたが、やがて柔らかな笑みを浮かべた。


「はい……私の家族の、自慢の父です」


ジルの微笑みに答えるように、少女も満面の笑顔を浮かべた。


(こんな理由、ネオには絶対に言えないな……)


同期として、同じ騎士団に所属となった友の顔が浮かぶ。


「じゃあ、私達を守ってくれてるのはジルのお父上だから、ジルも私達のことを守ってくれるんだよね!」


真っ直ぐな言葉に、ジルは面食らったように目を開いた。

しかし、やがて真剣な面持ちで、それに答える。




「はい。必ず私がお守りします。"ユノン様"、"ヒナノ様"」























「そろそろです、総大将殿」


「……ムッ………」


ここはリヒタルゼンのすぐ近くに位置する、シュバルツバルド共和国領である。

ラヘルから東へ進軍するアルナベルツ教国本隊の先頭で、ドラゴンに跨がった女騎士"ジル=フィザット"が小さく口を開く。


「顔色が優れないようにも見えますが……ここらで休息を取られますか?」


その横を歩く覆面の男が告げる。

ジルはその男には目もくれず、前だけを見て答える。


「少し昔を思い出していただけだ。構わん、このまま進むぞ」


「はっ」


覆面の男も再び前を見、アルナベルツ教国本隊は進軍を続ける。


(ローウェル姉妹、か……恐らく城から出て来ることはないだろうな。あちらの本隊を潰し、そのままプロンテラへ進軍させてもらうとしよう)


ジルは小さく笑った。


その表情に、過去の面影はなかった。




















「…ネ……た……う……」


誰かが"我"に語りかける。


「ネオ隊長」


「……あぁ、すまんな、ダズ。どうかしたか?」


ネオと呼ばれたロイヤルガードの"オオニシ=ネオ"は、横から語りかけるルーンナイトのダズに顔を向ける。


「いえ、ここを直進すれば恐らくアルナベルツ教国本隊とぶつかります。作戦通りでよろしいのですね?」


「問題ない。シュバルツバルド本隊は貴殿の友に任せるとしよう」


そのネオの様子が、ダズには心配でならなかった。


「……ネオ隊長、やはりここらで休息をとってはいかがでしょうか?」


「必要ない」


ネオはその言葉に即答した。
しかし、それが予想通りだと言わぬばかりに、ダズは笑みを浮かべた。


「プロンテラから長い距離を歩いて来たのです。"兵達"にも疲れの色が見えます。ネオ隊長も分かっていたことでは?」


「…ヌ……」


ネオはダズの提案が自分に対しての気遣いだと思ったのだろう。
それを考え過ぎた故に、兵達の様子の確認を怠った。



「……一本取られたな。よし、ここらで兵を休ませよう」


「はっ。伝令兵!部隊にここで休息を取ることを伝えてください!」


ダズの言葉を聞き、後方に控えていた兵が、長い軍の列の後ろにまで走っていく。

ネオはグリフォンを降り、近場の岩場に背をもたれた。


「ふう……」


「やはり、お疲れのご様子ですね」


遠くを見つめるように一息をつくネオに、ダズは歩み寄った。

対するネオは、視線を逸らさぬままダズに語りかける。


「いや……少し昔を思い出してな。つい、気を取られてしまった」


「昔、ですか…?」


このタイミングで考えること言えば、恐らく件の"ジル=フィザット"のことだろう。


過去に何があったのか。
ダズはそれを聞いていない。


その時、ネオが観念したかのように、口を開いた。


「貴殿には、話しておいたほうが良いかもしれんな」


「……私も、お聞きしたいと思っていました」


そんなダズの表情を見、ネオは微笑んだ。


「ハハ、そうだろうな。貴殿の顔にそう書いてあるぞ」


恥ずかしがるダズをよそ目に、ネオは続けた。




「あれは、騎士団に所属して数ヶ月の頃だったか……奴と初めて言葉を交わしたのは……」






















(聞いたか?この前の模擬戦闘での順位)


(あぁ、また"あの女"が一位だったらしいな)


プロンテラ城の内部で、騎士団の兵士と思われる男達が静かに会話をしていた。


(これで何度目だよ。父親の力を使ってイカサマでもしてるんじゃないか?)


(おいおい、それは言い過ぎじゃないか、っと……噂の"真紅様"のお通りだ)


「……………」


ヒソヒソと会話する兵士達の横を、真紅の髪と瞳を持つ騎士、"ジル=フィザット"が通り過ぎた。

勿論、そんな会話が聞こえていない訳ではない。
つまらない言い争いをするまでもないと思い、ジルも何も言わなかった。


(チッ、親の七光りが……)


(よせよ、聞こえるぞ)


騎士団内では、彼らのようにジルのことを快く思わない者達が多数いた。

騎士団長の立場を持つ父親の背を追い、必死に鍛練を続けていたジルに対抗できる者は、今の騎士団にはほぼいない。


それ故に、疎ましく思われるのは仕方がないのだろう。
結果だけで全ての者が納得する訳ではない。

圧倒的な強さとは、時として気味の悪い存在へと成り代わる。


(戯れ事だ……耳を傾けなければいい……)


自分にそう言い聞かせ、ジルは己の信じる道だけを進んでいく。


「おい」


(第一、男のくせに軟弱すぎるのだ……女に負けて言い訳をするような男に騎士など務まるものか)


言いたいことは心の内だけにしまいつつ、外部の音声を遮断しようとする。


(男共は軟弱すぎる……もっと鍛練を積めば私ぐらいの強さになることなど造作も…)


「おい!!」


「!?」


後ろから物凄い怒声をかけられ、ジルは恐る恐る振り返った。

そこには、同じ騎士団に所属しているであろう女が立っていた。
言葉の強さ通り、険しい表情をしている。


「貴殿がジル=フィザットだな?」


「……そ、そうですが…」


質問に答え終えると、女はゆっくりとジルに歩み寄った。

その行動にジルは一瞬たじろぐ。
何せ、騎士団ではジルに話し掛ける者など滅多におらず、こんなにも堂々と目の前に近付く者は今までにいなかったのだから。


「我が名はオオニシ=ネオ。先日の模擬戦闘訓練で、貴殿の次の順位をつけられた者だ」


「……………」


その自己紹介に、ジルは表情を暗くする。

どうせ自分に罵声でも浴びせにきたのだろう、それぐらいしか話し掛けられる理由は考えられなかった。


バッ!


(ビクッ)


急に差し出された腕に、ジルは一瞬身構えた。

だが、予想外の展開に、ゆっくりと警戒をといていく。


「次は負けない。我が必ず貴殿を越えてみせる。以後、正々堂々とした関係を求む」


ネオはジルに"握手"を求めていた。
言葉の通り、友情の証ということなのだろう。

ジルは戸惑いながら数秒の間をおき、静かにその手を取った。



「こちらこそ……よろしく頼む、ネオ」






これが、後にプロンテラの二大巨頭と呼ばれる二人の、最初の出会いだった。
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