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三国戦争編10

ついにこの物語も10個目へ。

続きは小説です。



赤銅色の大地を、二人が平走する。

正確には、片方が二匹の獣を従えている。


「ハッ!」


シャッ!


ウォーグに跨がるマツリは、器用に矢を放つ。


「チッ、狼に乗ろうがお構いなく矢を射るか…!デタラメすぎるぞ!!」


キィンッ!


飛んで来た矢を、手にしたダガーで弾きながらアリルは叫ぶ。


本来、レンジャーはウォーグに騎乗した状態で矢を射ることは出来ない。

動いている最中、決して静かではないその背中は、体勢を極端に崩すほどバランスを取るのが難しいからだ。


それを物ともしないマツリの身体能力の高さが伺える。


「まだまだ!紫!!」


「キュイィッ!」


空からファルコンの"紫(ゆかり)"が迫る。

先程の矢を弾き、アリルは若干体勢を崩していた。
その上、ウォーグとほぼ同等の速度で平走していたため、ガードの体勢を取るしかなかった。


「ファルコンアサルトオォッ!!」


ガキィンッ!


「クソッ…!」


アリルは両手に持ったダガーをクロスし、ファルコンのクチバシによる攻撃を受け止めた。

しかし、尋常ではないその力の前に、短剣を吹き飛ばされる。


「武器がなければ!!」


バサッ!


マツリは自身の弓、"イクシオンの羽"の翼を大きく広げ、弦を強く引き絞る。


「シャープ…シューティングッ!!」


ズオッ!


空を切り裂くように、マツリの矢が凄まじい勢いでアリルへと放たれる。

武器を持たないアリルには、それを防ぐ術などないだろう。



「……甘いな」



と、思っていた。


ズドンッ!


アリルは地面を殴り付け、その岩盤を剥がすように盾にする。


ガァンッ!


マツリの矢は岩盤に弾かれ、失速する。


「う、うそぉ……どんな力してるの……」


武器を無くした状態で攻撃を防ごうとするのもそうだが、それ以上にいとも簡単に地面をめくりあげるアリルの能力には驚かされる。


「………おい、別に腕力だけでこんなことしてるわけじゃないぞ」


「え、そうなの?」


アリルの言葉に、マツリは首を傾げる。

心底不思議がるマツリに軽く頭を抱え、アリルは口を開いた。


「アタシがそんな怪力に見えるのか……腕力だけで何とかするのは、あの"オーバージェネティック"ぐらいだ」


サツキの名が出てきたことに、マツリは全く驚かない。

何せ本当のことなのだから。


「第一なんだお前は?ウォーグとファルコンを同時に使役するやつがあるか。どっちかにしろ」


「えぇ、そんなこと言われても……」


アリルからすれば当然の疑問だろう。

だが、マツリはほぼ"自覚がない"のだ。


「だって、一緒にいたいと思ったら自然に……そ、それよりアリルさんこそ腕力じゃなかったら何だって言うんですか!」


自分ばかり不公平だと思ったのだろう。
マツリは先の問いを投げ掛ける。

数秒の間を起き、アリルが口を開いた。



「アタシの能力は……」


ボッ!ゴォッ!


アリルが両の掌を空に向けると、右手からは炎が、左手からは吹雪が吹き上がる。


「"スペルフィスト"。これは基本四属性の魔力を集中させたものを、武器に付与するものだ。だが、アタシは……」


パチンッ!


アリルが両指を弾き、炎と吹雪を消す。


「これを、両手でそれぞれ違う属性にすることができる。さしずめ、"ツインスペルフィスト"といったところか」


マツリも噂は聞き及んでいた。

彼女は世界初のソーサラーにして、セージキャッスルの英雄と呼ばれている。



その二つ名は、




「"精霊守護神/エレメンタルガーディアン"……」


「……へえ、知ってるのかい」



アリルの目付きが変わった。


「悪いが、お前をここから先に行かせる訳にはいかん。"アタシはシュバルツバルド軍総隊長だからだ"」


マツリもおおよそ検討がついていたのだろう。

その言葉に、不思議と驚きは少なかった。


「続きと行こうか、マツリ」


「アリルさんも十分……デタラメですよ……」



引けぬ理由が、互いにある。

二人は再び戦いに身を投じる。























「ハァッ!!」


ガキィンッ!


ネオは空の利を活かし、攻撃しては引き、一撃離脱を心掛ける。

地を走るジルは圧倒的に不利な状況だろう。
しかし、それでも余裕を見せるのは、騎士団元最強と呼ばれた彼女の強さである。


「このままでは埒があかんな!だがッ!!」


ネオは聖槍ロングホーンを前に構えた。


ゴォッ!


次の瞬間、槍が炎のように赤い光に包まれ、ネオはそれを真っ直ぐに構える。


「我は一振りの槍にて全ての罪を刈り取り悪を滅する!!」


「来るか…!ネオッ!!」


ネオが武器に精神を集中し、突進を仕掛けんとする。

ジルもそれを見、己が武器を構えた。


「我が名はオオニシ=ネオ!推して参る!!」


バサァッ!


ネオがジルに向け、グリフォンを滑空させる。


「ハアアアアアァァァッ!!」


ネオの突進を前に、ジルは動かない。
正確には動けないのかもしれない。


しかり、その状況を前にして、ジルは僅かに唇を釣り上げた。



「バニシングッ…!!」


「かかったな!!」


ネオの槍が当たる直前、ジルはドラゴンに指示を出した。



グオオオオオオオオオオオオオオッ!!!


次の瞬間、ドラゴンは凄まじい咆哮をあげる。


「こ…これは!?」


「デスバウンドォッ!!」


そう。それはドラゴンを扱うルーンナイトだけが使えるスキル。

ジルはネオが大技を繰り出す、その瞬間を待っていた。


「グ…アアァッ!!」


グワアァァッ!!


デスバウンドはカウンター技。

相手の攻撃が強ければ強いほど、反射するダメージも大きい。


その攻撃をまともに受け、ネオは突進の方向とは真逆に吹き飛ばされ、グリフォンから振り落とされる。


ズシャアッ!


「ク、クソッ…!」


地に落とされたネオは、傷を負った体でジルを見る。


「貴様の猪突猛進な性格など百も承知。相変わらずだな」


ジルはドラゴンをゆっくりと前へ歩ませ、倒れるネオに近づく。


「小癪な、手を…!」


ネオは再び槍を構えんとした。


キィンッ!


しかし、その槍はジルに弾かれ、飛ばされる。


「……失望したぞ、ネオ。その程度の力で私と戦おうとしていたとはな」


「……………」


ネオは無言でジルを睨み付ける。
彼女の目はまだ死んでいなかった。


そんな表情が、ジルに苛立ちを覚えさせる。


「やめろ……私は間違っていない……」


チャキッ


ジルは剣をネオに向けた。


「この戦争で……フィザット家が最強であることを証明する」


その表情は怒りと、悲しみにも少なからず包まれていた。


「私は……父さんは、間違っていない……間違っているのは……」


ジルは剣をゆっくりと振り上げた。


「貴様等……ルーンミッドガッツ王国だ!!」


ブォンッ!


ジルの剣が、真っ直ぐネオに向けて振り下ろされる。

ネオはそれを避けようとしない。
避ける力が残っているかも、定かではない。





「……貴様はそれでいいのかもしれんがな………」



ネオは、小さく口を開いた。

振り下ろされた剣は、既にネオの頭部に接近している。

最早防ぐ術はない。



「だが……」



ガキンッ!



「なっ…!」


ジルは驚愕する。

振り下ろした剣が、何者かに防がれている。


それは音も無く接近し、二人の間に割って入った。




「"我ら"は……それでは気が済まないんだよ。なあ…?」


ネオは、目の前にいる女の後ろ姿を見た。

彼女は知っていた。



自分と同じく、怒りに燃える騎士がいることを。




「ダズ……」



緑の長髪が、兜の間から揺れる。

ダズの口が静かに開いた。



「王国騎士団元総隊長、ジル=フィザット……」


「誰だ……貴様ッ!!」


ジルは後方に数歩引き、声を荒げる。


ダズは顔をあげ、ジルを睨みつけた。



「私は王国騎士団のダズリング。"あなたの次に選ばれたルーンナイトだ"」


その言葉を聞き、ジルは再び笑みを見せた。


「フッ、王国はやっと二人目を選出か……随分と遅かったな」


彼女は少なからず喜びを感じていたのかもしれない。

ライバルとして互いを認め合った存在のネオ以外に、自分と対等な位置に立つ者が現れたことを。


「いいだろう、相手をしてやる。だが、貴様は知るだろう……この人類に、私を越える騎士は存在しないとな!!」


ゴオォッ!


ジルが剣を振ると、それだけで周囲に風が吹き荒れる。


「ダズ……気を付けろ、アイツは……」


ネオの言葉を、ダズは片手で制した。


「大丈夫ですよ、ネオ隊長」



ゴォッ!


ジルの風とぶつかるように、ダズの周囲にも風が吹き荒れる。


「なっ…!」


「これは……」


その場にいた二人は、我が目を疑った。



「あなたは、"人類"と言ったな……」


ダズの周囲を纏うオーラ、その色は、



「ならば、私は……」



黒く、邪悪なものであったのだから。





「あなたと戦う間……"人間をやめる"」



ギンッ!


再び顔をあげたダズの瞳を見たジルは、驚愕した。



「き、貴様……まさかっ…!?」



瞳は黄色く、瞳孔はまるで人間のそれとは似つかない。


それはまるで、



「……魔物と……契約したのか…!!」


魔族のそれと、変わりが無かった。





ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


周囲の大気が揺れ、ダズが差し出した手が、光に包まれる。



「私………"我"は……"魔王バフォメット"と契約せし者……」


キュイイィィィンッ!


ダズの手に、光と共に現れた一本の武器が握られる。



「……か、鎌…?」


ネオが見たものは、バフォメットの持つものと同じ、大きな"鎌"。

それは、死神の鎌と呼ばれる"クレセントサイダー"。



ダズは鎌を構え、口を開いた。



「我は"魔眼の死神/イービルアイ=デスサイズ"」


その言葉は、最早人間のものではなかった。



対峙するジルは、身の震えを抑えられなかった。



「……いいだろう……相手にとって不足はない」


それは恐れか、武者震いか。

知るのは当人しかいない。



「私は"真紅の龍騎士/スカーレットリンドブルム"、ジル=フィザット」


剣を構え、元騎士団最強の女は叫ぶ。


「私は最強の騎士にして、人類最強であることをここに証明する!!」


次の瞬間ジルが地を蹴り、ダズに飛び掛った。






人と魔物が戦場で向き合うとき、何を見るのか。


彼らは己が信じる正義の元に集い、戦いを繰り広げる。

この大地の上で。
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