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三国戦争編12

書くことはない。

続きは小説です。


「サヅキさん、サツギさん」


ユサユサと体を揺さ振られる感覚で目が覚めた。


「………もうつまらない講義は終わったか?」


顔だけを上げ、サツキは己の名を呼ぶ男、春通を見た。


「もうとっくに終わってるぞぉ。寮に戻るか研究室に行かないと…」


春通が言い終わるのを待たず、サツキは席を立った。
そして目を軽く擦りながら、眠たげに口を開けた。


「…研究室なんて行く必要ない。帰るぞ」


横に下げた鞄を取り、サツキは出口へと向かう。

春通は慌ててそれを追い掛けた。


「あと……俺はサヅキでもサツギでもない。いい加減覚えろよ」


振り返り、目を細めて睨む。
濁点をつける場所が毎回違うことから、狙ってやっているのかと思われるが、これは春通の自然な訛りでそう聞こえるだけである。



ドンッ


足を止めず振り返ったサツキは、目の前に現れた"何か"に顔ごとぶつかった。


「……なんだマコか」


怪訝そうに前に向き直ったサツキは、前にいる身長が自分より10cmは高いであろう男を見上げる。

その男は更に怪訝そうな表情でサツキを見る。


「サツキ、またサボるのか?」


「おぉ、マコじゃねえかぁ」


マコと呼ばれた男、瀬戸誠を見、春通は嬉しそうに顔を綻ばせる。

サツキは目を逸らし、視線を逢わせようとしない。


「別に……サボりじゃない。必要ないだけだ」


膨れるようにムスッとした顔をし、横を抜けようとする。

誠は呆れたように溜め息をつく。


「あのなぁ…一応お前は学院のトップなんだぞ。せめてそれらしい姿勢を周りに見せないと、また妬まれ口を……っておい、どこへ行く?」


誠が言い終わる前に、サツキはその横を抜け扉の前へ移動していた。


「どこへって、寝るために寮へ戻るんだよ」


「結局寝るのか……これ以上は俺もカバーしきれないぞ」


「ま、まあまあ二人とも……」


ピリピリした空気を放つ二人を宥めるように、春通は間に入った。









ここはジュノー南部に位置する、キル・ハイル学院。

世界でもトップクラスに優秀な者を集める学院であり、様々な研究・開発において大きな成果を残しているが、それゆえに裏では国々による技術の奪い合い、知識を恐れる上からの圧力が絶えない。


特に"機械"に関しての技術が進んでおり、サツキや誠、春通もそれを専門知識として学ぶ学生である。

サツキはその中でも群を抜いた成績で、不動の首席を守り続けている。
誠はそれに続き優秀な成績を残しているが、春通だけは二人と大きく掛け離れていた。

社交性のある誠や春通と違い、サツキは極端に他人との距離を置きたがるせいで、関わりは二人以外にないと言ってもいい。

そんなちぐはぐな三人だが、学院では仲の良いグループと認識されているようだ。



他愛のない会話を繰り広げて廊下を歩く三人は、まさにそんな印象なのだろう。

大体は誠がサツキを注意しているシーンだが。


「あらら、今日も喧嘩してるの?ホントに仲がいいんだね、マコとサツキは」


可愛い笑顔を見せ、三人の横を通り過ぎる女学生がいた。


「エ、エリー!?違うこれはサツキが不真面目過ぎるから注意して…!」


誠はその言葉を慌てて訂正しようとする。

エリーと呼ばれた女学生は、口元に手をあて、クスクスと笑いながら去っていった。


「おーエリー。飯食って歯磨いて寝るんだぞぉ」


「何言ってんだお前……」


彼女に手を振りながら、まったりとした口調で呼び掛ける春通と、突っ込むサツキ。

そしてサツキは次に、ニヤニヤと笑いながら誠を見た。


「おう、なんだマコ。エリーに惚れてんのか?」


「なっ!?ち、違う!そんな訳あるか!」


サツキが言い終わるか終わらないかのスピードで、誠は直ぐさま反論する。


「なんだぁマコ。隠すことないだろぉ?」


春通は誠の肩に腕を回し、サツキ同様ニヤニヤと笑い始める。


「そうだぞ、吐いちまえ。楽になんぞ」


サツキはその反対の肩から腕を回し、誠をガッチリと捕らえた。

軽く赤面し、動揺を隠せない誠は、大きく息を吸い込んだ。


「あぁもう!うるさい!今日は帰るぞ!!」


「「ヒャッホーッ!」」


腕を振りほどいた誠は、万歳するように両手を挙げる二人を見、己の口にした言葉に後悔した。


こんな時間がまだまだ続くと、ここにいる誰もが思っていただろう。



















場面は数年後に戻り、誠と春通&サツキは、臨戦体勢に入っていた。


「戦う前に聞こう、サツキ………何故だ…?」


手にした銃を前にし、誠はサツキに問い掛ける。


「……何がだよ」


サツキは数秒後に聞き返す。

まるで"わかっているのに答えたくない"というような顔で。


そんなサツキを見ながらも、誠は続ける。


「……何故、"皆を殺した"?学院を崩壊させてまで、成し遂げたいことでもあったのか?」


その言葉に、春通は動揺する。

サツキは無言で、それに答えようとはしない。


「マ、マコ……それは…」


「何も言うな、春通」


見兼ねた春通が口を開くが、サツキの言葉で制止される。


「そうか……弁解すら必要ないというんだな。ならば…」


それが戦闘の合図となるであろう。
誠は引き金を握る指に力を込めた。


「貴様を殺して、俺の復讐を成し遂げるだけだ!!」


ガァンッ!!


"ショットガン"。
それは散弾銃と呼ばれる、拡散する弾丸を放つ武器。

照準が多少ズレようとも、必ずいずれかの弾に当たるように出来ている。


「当たんなよ!春通!!」


「お、おう!」


ゴォッ!


サツキの履いている靴から、バーナーのような炎が噴き出す。

ジェネティックが使えるスキル"カートブースト"を、カートがない状態でも扱えるようにサツキが改造を施していた。

春通は菫吏を助けた時同様、残影で瞬間移動を繰り返し、弾丸を避け続ける。


ドォンッ!ドンッ!


誠は立て続けに弾丸を放ち、崖に挟まれた横幅の狭い通路で相手を追い込む。


春通のように小回りが効かないサツキは、必然的に壁へと追い込まれる。



「オオオオオォォォッッ!!」


常人ならば、そうなっていた。

だが、もはやサツキを常人扱いする者などいないのではないだろうか。



いや、いないだろう。


ダッダッダッ!!


サツキはそのまま崖を登り、重力に逆らうように"壁を走り始めた"。

そうすることで足を止めず、そして誠の攻撃を避けつつ、


ダンッ!


「ダアアアァラアアアアアァァッッ!!」


サツキ自身が"近付いて攻撃をすることが出来る"のだから。


「チッ!なんて速さだ…!」


凄まじい速さの奇襲に誠は迎撃を断念し、咄嗟に機械の腕でガード体勢を取る。



ドゴアッ!!


サツキの流星のような跳び蹴りに、受け止める誠もろとも数十メートル後方へ吹き飛ぶ。


ガガガガガガッ!!


しかし、誠はガード体勢を崩さず、彼を支える足が接する地面が軽々とえぐられていった。


「おいおい…今の止めんのかよ…!マジで蹴ったんだぞ…!?」


さすがの"女神遊戯"も、完全に防がれることは予想していなかっただろう。


「生憎だが、この機械は異世界で発見された新しい鉱石を使ってるからな。お前の力を持ってしても壊されはしない!」


ガシッ!


誠は銃とは反対の腕を伸ばし、サツキの首を掴む。


「グッ…!」


攻撃後のスキを狙われ、いとも簡単に体に触れることを許してしまう。


「……お前には後悔する暇すら与えん…」


カシャンッ


誠の銃を持つ右腕から、何かが零れ落ちた。


機械であることは確かである。


チッチッチッチッ


(……時間…?)


それは数字を刻み、表示には"5"と出ていた。


「テ、テメッ…!」


サツキは気付き、もがこうと首を絞める腕を掴む。

だが、誠の腕はびくともしない。


「サツキ……お前を殺して……」


「や、やめろ…!マコオオォッ!!」


ダンッ!


誠の表情を見た春通は全てを理解した。


それは彼のよく知る、昔から変わらない、真面目過ぎるほどの、"友"の顔。


「俺も共に死ぬッ!!」


チッチッチッ


数字は"3"から"2"、"2"から"1"へと、決してカウントを止めることはなかった。



「セルフ…ディストラクション…!」



ドンッ!


誠は覚悟を決めていた。


だからこそ、緩んだのだ。

半径数十メートルを一瞬にして吹き飛ばす爆発から、もはや逃れる術はないと。



その瞬間に、"男"は現れた。


次に脳が知覚を始めたとき、既にサツキは誠の腕の先にはいなかった。



「は、春…ッ!」


サツキは後方に吹き飛びながら、両の眼で見た。


己のパートナーが自分と誠の間に入り、体当たりをしてきたことを。


更に、



「マコ……すまん」


ドゴッ!


春通は次に、誠の腹部に掌を当て、彼をサツキとは反対の方向へと吹き飛ばした。


「ぐっ…あ……」



これで爆心地に残る者はいなくなった。




そう、ただ一人、"春通"を除いて。











「バカヤロオオオオオオォォォーーーッッ!!!」



カッ!



セルフディストラクションの秒数が"0"になり、辺りはまばゆい光に包まれる。



叫ぶサツキの声は、爆発の音に掻き消され、決して届くことはなかった。
コメント

はるつーさんがぁぁぁ!どうなるのっ。

次は別の場面に移してじらします。サツキさん&春通と誠ちゃんの決着もそろそろつくな…!
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