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番外編「砂漠の猟犬」その1

久々に番外編。
そんなに長くはならないかも。

登場キャラはダズ、りょーさん、ちぇむさん、おいぬさま。


続きは小説です。




「砂漠の……"猟犬"、ですか?」


ダズは聞き覚えのない名に、小さく首を傾げた。


「はい、元々砂漠のどこかを根城にしていたそうなのですが、あそこはほぼアサシンギルド領。肩身の狭い思いをしながらも、小さく活動をしていたようです」


ダズの疑問に、プロンテラ第十三王女"ユノン"は答えた。


「そして、その集団による……"誘拐事件"ですか」


ユノンはそれに頷いた。

大陸の中心に位置するルーンミッドガッツ王国。
その首都プロンテラは、屈強な騎士団によって治安が守られているが、未だに犯罪は増える一方だった。


この"猟犬"という集団は、風の如く街に現れ、民を無差別に誘拐していくという。
しかし不思議な事に、誘拐された人々は数日後"何事もなかったように帰ってくる"のだ。
そして、誘拐された本人達も、"何をされたか記憶にない"と口を揃えて言うらしい。


大きな被害は出ていないが、王国としてはそれを放っておくわけにはいかない。

そこで早急な解決のため、ギルド"WaterCarnival"のダズが派遣されてきたという次第である。


「彼らはソグラド砂漠に逃げ込んだ痕跡が見られるのですが、どうしてもその先の行方が知れません……あなたの腕を見込んでのことです。お願いできますか?」


ユノンの言葉に、ダズは即座に頷いた。


「了解しました。必ずや犯人達の所在を突き止めてみせましょう」



















ダズは城を出、大通りを南門へと歩いていた。


「とは、言ったものの……情報が少な過ぎるなぁ」


引き受けたはいいが、詳細がわからない以上迂闊には動けない。

頭を悩ませながら通りを歩いていると、


「聞き込みでもするか………ん…?」


ポロロン


ダズの耳に、弦楽器を奏でる静かな音が聞こえて来た。

ふと通路の端に目をやると、詩人らしき男が楽器を手に座り込んでいるのが見える。


「調度いい、あの人に聞いてみよう」


ダズはその詩人に近付き、大きな赤い帽子で隠され、未だ顔の見えない男に対し、口を開いた。


「あの、すいません。少しお伺いしたいのですが…」


すると、男はゆっくりと顔をあげ、ダズと視線を逢わせた。

帽子の間から、緑の髪が見え隠れする。


しかし、男はダズの顔を見た瞬間、みるみる表情を変えていった。


「……おお……おおおぉ……」


「……?」


何やら感嘆の声をあげ、不思議がるダズを凝視する。

次の瞬間、


バッ!


「え?」


男は勢いよく立ち上がり、ダズの手を強く握った。


そして、


「あなたこそ、私の運命の人……これがデスティニー……」


「………は?」


予想していない言葉を口にされたことで、思わず素の声が出てしまった。

男は表情を輝かせ、今度は両手でダズの手を包み込むように握る。


「私の妻、マイワイフとなってください」


「なっ…!何なんですかいきなり!」


ダズは身じろぎし、片足を後ろに下げたが、男は微動だにしない。

男は更に続ける。


「凛々しい眼差し、スマートな身のこなし、そして何よりもその美しい緑の髪(ビューティフォー↑グリーンヘアー↓)……私と同じ色です。これを運命と言わずなんと」


「ちょ、ちょっと待ってください…!いきなり結婚ってどういう……」


あまりに唐突な展開に、焦りの色を隠せない。

それでも軽くあしらうことの出来ないのは彼女の性格だろうが。


「おや、結婚はまだ早いと?ではまず結婚を前提にしたお付き合いから…」


「い、いやいやいやいや!そういうことじゃなくて!」


今すぐ手を振りほどいて逃げたほうがいいだろうか、と今度ばかりは思ったダズだったが、



「あ、ダズさんじゃないですかぁ」


そこに、おっとりした口調で声をかける人物が一人。


「チ、チェムさん!?」


「!!」


振り返った先には、聖職者"アークビショップ"の衣服を身に纏った女性が立っていた。


彼女の名は"チェムリット=シュガーポップ"。
この王国でユノン、ヒナノに続き聖職者としての才を認められ、三次職へと転職を果たした人物の一人である。

その類い稀なる治癒魔法の扱い方により、彼女は"治癒息吹/ホーリーブレス"という二つ名で呼ばれていた。



同時に、ダズは懸念する。


何たって、彼女は美人である。



「おおおおぉ!!」


(やっぱり……)


ダズの手を強く握っていたはずの詩人の男は、チェムの前にまるでテレポートでもしたかのように俊敏に移動していた。


「あなた程美しい女性を私は見たことがない。是非共に昼下がりの極上の喫茶空間(ティータイム)を満喫といこうではありませんか!」


「え?えぇ?」


ダズの時同様、手を握り、あまつさえ腰に手を回している。

あまりに急激な移り変わりに、その気が無くても苛立ちが生まれてくる。


「ちょっと、あなた一体何者なんですか…?」


おもむろに近付き、詩人の肩を掴む。


「あぁ、これは失敬。愛する妻よ」


「誰が妻ですか」


思わずつっこんでしまった。
完全に乗せられている。


「え…?お二人は結婚してるんですか?」


ダズの言葉がまるで耳に入っていないかというように、チェムは"妻"という単語にだけ反応する。


「ち、違いますって…この人とは今出会ったばかりで……」


「結婚を前提としたお付き合いをしています」


ダズの言葉に被せるように、詩人はハッキリと言う。

もちろん、チェムはダズの言葉には耳を傾けない。


「………へえ~……」


ニヤァ


口に手を当て、ゆっくりと唇を吊り上げるチェムの姿がそこにはあった。


チェムはダズ以外にも、マツリや菫吏とも繋がりがある。
在らぬ噂を立てられては、今後の生活にも関わってくる。


「だ、だから私はこの人とは今初めて話しただけで、まったくの他人なんです!全然知らない人です!」


「これから知り合っていけば良いではないですか、妻よ」



コイツ一度痛い目にあわせてやろうか。
と、一瞬でも考えた自分がいたが、紛いなりにも騎士として民間人に手を出す訳にはいかず、握りしめた拳をそのままに口を開く。


「せ、せめて名前ぐらい名乗ったらどうですか……」


「おっと、これは失礼」


男はやっとダズの言葉を聞き入れ、チェムの傍から少しの間をおいた。

そして姿勢を正し、深々と頭を下げた。


「私の名は"リィン=セレスティア"。詩を広めるため、世界中を旅しております。親しみを込めて、リィンと御呼びください」


リィンと名乗った男は頭を上げ、屈託のない笑みを浮かべる。


やっと話が進んだ、と静かに胸を撫で下ろしたダズは、口を開いた。


「……リィンさんですね。少しお伺いしたいことがあります。この辺りで"猟犬"と呼ばれる集団について…」



ゴオッ!


その時、三人の間に"風"が吹いた。
髪が靡き、少し体が揺れる程度の風が。


会話を切るようにタイミングよく吹く風に、ただでさえ苛立つダズを更に煽る。



しかし、


「……チェムさん…?チェムさん!?」


その場にいたはずのチェムリットが"消えていた"。

ダズが気付かない程の、一瞬の間に。


「チェムさんなら、あちらに」


口調変わらず、リィンが指差した方向。

そこには、何者かに担がれ、頭から布をかけられたチェムの姿があった。


「ムーッ!ンーッ!」


布の中で暴れるチェムだが、そう易々と振りほどけるものでもない。

何より聖職者である彼女には、生身の戦闘力など無いに等しい。


「なっ…!まさかあれが猟犬か!?」


シャンッ!


ダズは咄嗟に剣を引き抜き、攻撃の姿勢を取る。

しかし、リィンが間に入り、それを止める。



「ダメです、妻よ。彼女に当たってしまいます」


「……クッ…!」


悔しいが、最もである。

いくらダズの腕が立つと言っても、離れた相手の、しかも一緒にいるうちの一人だけを狙うなど不可能だった。



「ふむ……確かに先ほどから視線を感じると思ったのですが、そういうことでしたか」


「き、気付いていたんですか!?」


リィンの言葉にも驚いたが、それなら何故、




「"何故言わなかったのか?"と言いたげですね。妻よ」


「…っ!」


まさしくその通りである。

リィンは先ほどとは表情を一変させ、真剣な眼差しを向ける。


「"悪意"を、感じなかったからです」


「……悪意が、ない…?」


更に訳がわからなくなるダズに、リィンは続けた。


「彼女が美人であるが故、誰かが眼差しを向けているだけなのだろうと思っていました………しかし、連れ去るとなれば話は別ですね」


リィンはダズに背を向け、歩き始めた。


「ど、何処へ…?」


「何処へ、と。聞くまでもない事でしょう」


ここにきて、再びダズの予感は的中した。


嫌な予感が。



「追うんですよ。彼女を助けなくては、ね。ご安心を、これでも鼻はきくほうです。見失うことはありませんよ」



いや、そうじゃなくて。


「………あの、本当に一緒に行く気ですか…?」


「おおぉ……私の身の心配をしてくれているのですね?大丈夫です、愛する妻よ。少しばかりの戦う術は持ち合わせています」


それでもないんだが。


ここまで来て、ダズはついに諦めた。


「ハァ………わかりました。でも、危なくなったらすぐに引き返してくださいね。相手の戦力さえ未知数なんですから」


追えると自信あり気に言う彼のことも信じてみてよいかもしれない。
いや、それ以上に情報がない以上、頼らざるを得ない。


それに、彼の言う"悪意が無い"というのも気掛かりである。




ここに、騎士と詩人という新しい組み合わせが生まれた。



「ちょ、ちょっと!くっつかないでください!!」


「いいではないですか、将来のためにこれも練習のうちです」


腕を絡ませるリィンを、ダズは必死に振りほどこうとする。


先が思いやられるばかりだった。
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