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番外編「砂漠の猟犬」その2

次で終わると思います。


続きは小説です。




プロンテラを出たダズ達は、リィンの先導により、真っ直ぐ南下する道を取っていた。

それにより、この事件に"猟犬"が関わっている確率は非常に高くなっている。



ただし、それはリィンの先導が正しいということが前提になるが。



「ところで、リィンさん」


彼女とて人間である。
いくら不可思議な男と共にいようとも、会話の一つや二つはしたくなる。

むしろ、ここで彼の素性を少しでも知っておく必要があった。


「おぉ…また名を呼んでくれましたね、愛する妻よ」


リィンは歩みを止めずに振り返り、至福を感じるような目線をダズへ向ける。


「うっ……その、あなたはどこの出身なんですか?私は剣士ギルドのあるイズルート出身です」


ダズもさすがに妻と呼ばれることを流せるようになってきたようだ。


「…出身、ですか」


それすらも憚られるというように、リィンは口ごもる。


「いや、それぐらいなら……そうですね、あなたはイズルートでしたか。私は国境を越えた北の国、ジュノーからやってきました」


間を置き、リィンは答える。
まるで追求をされたくないかのような反応だったので、ダズもそれ以上は聞こうとはしなかった。


「随分と遠くから来られたのですね」


そこで本題へと移る。


「しかし、どうして彼ら、"猟犬"と思われる集団がこっちに逃げたとわかるのですか?」


それにリィンは間を置かず答えた。


「先程私は鼻がきくという話をしましたね。チェムさんでしたか。彼女を連れて走り去った者からは、人間とは少し違う"匂い"を感じ取れたからです」


「違う……"匂い"…?」


その言葉から、ダズの中で一つの結論が導かれる。


「もしかして……」


「そうです。これには"魔物(モンスター)"が関わっている可能性が大きい」


相手は人の姿をした魔物であるということだろうか。

それならば、自分の腕の見せ所である。
問題なのは、リィンの戦闘能力にもよるが、彼を守りながら戦わねばならないということ。


「では、ここから先は私が前を歩きましょう。案内をお願いしますね」


そう言い、彼女は一歩前へと歩み出る。


「しかし、本当にすごいものですね。いくら鼻がきくとは言え、そこまで推測できるとは」


純粋に自分にはない能力に、少しの憧れが生まれる。

信用できないとは言わないが、彼のことも少しずつ理解していかねばならないだろう。



と、考えていると、後ろにいるリィンからの反応がないことに気付く。


「……リィンさん…!?」


咄嗟に振り向いたダズだが、すぐ後ろにいたはずの男の姿がない。

すぐに辺りを見回すと、


「…モガ……モゴ……」


"砂漠の砂に飲まれるように"、腕だけは地表に晒す彼の姿があった。

しかも、砂の塊は動き、少しずつリィンをダズから遠ざけていく。


「これは…サンドマンか!」


シャンッ!


直ぐさま剣を引き抜き、彼の元へ駆け寄る。


「ハアアアアァァッ!!」


ゴオッ!


掛け声と共に剣に炎を纏わせ、それを振り抜いた。


「マグナムブレイクッ!!」


ドドォッ!!


リィンの周囲で小さな爆発が起き、サンドマンは弱点である火属性の攻撃に焼かれ、砂へと還るように消滅していった。


未だ地面に埋もれるリィンの手を取り、勢いよく引き抜く。


ズボッ!


「……まったく、この程度のモンスターにやられないでくださいよ」


「面目ない……あなたの後ろ姿に見取れてしまい、つい」



ここまで来ると、前にいようが後ろにいようが関係ないのではないかと思えてくる。

呆れながら溜め息をつき、頭から砂を被るリィンを地に立たせた。


「そういうのはいいですから……道案内、またお願いしますよ」


「いいえ、もう着きましたよ」


当然のように返すリィンに驚き、ダズは周囲を見回す。


「え?どこに……」


「ほら、あちらに」


リィンが指差した方向。
そこには、小さな岩の間に空洞が出来ており、地下奥へと通じているようだった。


「匂いは中から強く発せられています。恐らくあそこが彼らの本拠地ではないかと」



まったくもって、彼の感覚には驚かされるばかりだった。




















「ん……うぅ……」


空気の冷えた暗い洞窟の中で、チェムは目を覚ました。


「ここは…?」


どれぐらい気絶していたかは解らない。
だが、体のどこにも痛みは無く、外傷も見られない。
自分の治癒魔法を使うまでもないだろう。

一つ問題があるとすれば、両手を後ろで拘束された状態で寝かされていたため、体の自由が利かないことである。



「……目が覚めたか」


「っ!だ、誰…!?」


チェムは突然語りかける声に驚き、身を震わせる。

暗闇に少しずつ慣れてきた目が、ぼんやりと前の景色を映し出す。


そこには頭から大きく黒いローブに身を包み、チェムの前に立つ男の姿があった。

直感で理解できる。
自分はこの男に連れ去られてきたのだと。


「そう警戒するな。用が済んだら街に返してやる」


「……やはり、あなた達が"猟犬"なんですね…?」


その言葉に、男は答えない。

頭から被っている布のせいで、顔すらも確認できない。



「お前、魔法は使えるか?」


「……え…?」


突然のことに、一瞬考える間が生まれた。


「魔法は使えるかと聞いている」


「……あ、はいっ…!回復魔法なら少し…」


その言葉を聞いた瞬間、男は小さく反応する。

そしておもむろにチェムに近付き、手の拘束を解いた。


「……あ、あの…」


「着いてこい」


男はチェムに背を向け、ゆっくりと歩き始めた。

しばらく唖然としていたチェムだったが、すぐに我に返り男の後を追う。



(……なんだろう、悪い人には見えないなぁ……でも、なんだか不思議な感じがする)


チェムはそう思いながら、男の背中をじっと見つめていた。



















「……どういう状況でしょうこれは」


「さぁ…どうなんでしょうね」


グルルルルル


ダズとリィンは背中合わせとなり、唸り声をあげながら円を描くデザートウルフの大群に囲まれていた。


「リィンさんが寝てる狼の尻尾を踏むからですよ…!」


「私のせいにしないでください。不可抗力ではありませんか」


ダズ達は洞窟の中で、静かに眠る狼達の群れに遭遇した。

無駄な殺生を避けるべく通り過ぎようとした際に、躓きそうになったダズを助けようと前に出たリィンが、狼の尻尾を踏んでしまったことで現状に至っている。


「なんとかなりませんか、リィンさん」


「………しょうがないですね」


リィンは背に担いだ弦楽器を手に持ち、静かに演奏を始めた。


ポロン


「"安らぎの子守唄(ユーアースリーピング)"」


すると演奏を聞いた狼達は次々に床に座り込み、静かに寝息をたて始めた。


「フアァ……すごい威力、ですね……私まで眠、く……」


あまりの効果に、ダズまでが眠気を誘われる。


「起きてください、妻よ。でないと寝ているあなたにあんなことやこんなことを…」


「それは困ります」


ブンブン


必死に首を左右に振り、目を擦った。
油断もスキもない男である。




ザッ!


「「!!」」


その時、奥から足音が聞こえ、二人は咄嗟に身構える。


そこから姿を現したのは、紛れも無い、



「…チェムさんを連れ去った奴か!」


ダズは剣を前に構え、臨戦体勢を取る。

対する男は、周囲のデザートウルフ達を見、体を震わせる。


「……貴様等…どこまで我等を虐げれば気が済むのだ……」


バリッ!


「えっ…?」


身に纏う布が徐々に膨れ上がり、耐え切れなくなった部分が破れ、落ちていく。


メキッ!ゴキッ!


骨格が軋む音と共に、目の前の男は姿を変えていったのだ。


「オオオオォォッ!!」


目の前に姿を現したのは、四本の足で地に立つ、"巨大な狼"だった。


「なっ…!」


「……ふむ、あれは仮の姿だったということですか」


冷静に分析するリィンはさておき、ダズは驚愕する。


やがて変化を終えた狼は、その大きな口を開く。


「我等"砂漠の猟犬/デザーティア=ハウンドドッグ"の平穏を妨げる者は、何人たりとも許さぬ!!」


「お、狼が喋った!?」


「ほう、これは興味深い」


もはやリィンにはツッコまないダズである。


それはさておき。
その狼の大きさたるや、大の大人10人分はあるであろう。

瞬く間にダズ達はその影に覆い尽くされる。


「我が名は"賢狼"タロー=アイコニクス!!障害となる人間など、全て引き裂いてくれる!!」


「リィンさん下がって!来ます!!」


ダズはリィンを押し退けるように前へ出、迫る巨大な狼と対峙する。





彼女等はまだ知らない。
理解し得ない。


賢狼の意図する事、その真意を。
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