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番外編「砂漠の猟犬」その3

久しぶりに自分で書いてて恥ずかしくなった。

長くなったので分けます。

続きは小説です。




グオッ!


頭上からタローの巨大な足が振り下ろされる。


ババッ!


ダズとリィンは咄嗟に左右に分かれ、地を蹴った。


「デカいのに、速い…!?」


体が大きいとは言え、元は狼である。
そのスピードは変わらないのだろう。


「ハアアァッ!」


ダズは直ぐさま攻撃に移り、振り下ろされた足に向かい、斬激を放つ。


キィンッ!


「っ!?」


しかしそれは足から生える大きな爪に捕らえられ、威力を殺される。


「ヌゥンッ!!」


タローはそのまま足を振り抜き、捕らえた剣ごとダズを吹き飛ばした。


ドンッ!


「ぐぁ…っ!」


壁に叩きつけられ、背に激痛が走る。


「何時までもその詩人を庇っていられると思うなよ!」


(くそ…!バレてるのか!)


ガキィンッ!


更にタローの足がダズに迫り、咄嗟に両手で押さえた剣でそれを防ぐ。

しかし、圧倒的な力で壁に押さえつけられ、身動きが取れない。


そう、タローも恐らく気付いているのだろう。
リィンがサンドマンにすらやられかけるほど、戦闘能力がないことに。

ダズがそれを庇い続けられるのも時間の問題だった。



「リィンさん…!逃げて、ください…!!」


「……逃げる?」


リィンはまるでダズの言っていることがわからないというように返す。


そして、


「妻よ。私はあなたを置いて逃げる(エスケープ)などしない」


楽器を前に、タローに対峙した。


「な、何を!?」


「ここで私の力を見せるのも良いでしょう。では、妻よ…」


自信に満ち溢れた笑みを浮かべ、口を開いた。


「この状況を打破できたあかつきには、私の求婚を受けてくれますか?」


「は、はぁ!?この状況で何を言って…!」


ギギギッ!


タローが更に強い力でダズを壁に押し付ける。


「こんな状況だからこそです。答えてください」


笑みが徐々に不敵なものへと変わり始める。

ダズは半ばやけになり、言葉を返す。


「わ、わかりました!!結婚でもなんでも考えてあげますから…!お願いですから逃げ…!」



ドォンッ!!


「グ、オォッ…!」


次の瞬間、ダズの目の前を"何かが横切った"。

それにより、タローの足が勢いよく吹き飛ばされる。


「え…?」


「き、貴様…!一体何をした!?」


見えない攻撃に、タローだけでなくダズも驚きを隠せない。

リィンは再び笑い、小さく口を開いた。


「"ドミニオンインパルス"。私の得意な、"音による攻撃"です」


その正体は"音"。
楽器によって奏でられた音を飛ばす、まさに音速の攻撃だった。


「……妻よ、私は一つ嘘をついていました。鼻がきくというのは、実は違います」


「う、嘘…?」


リィンはゆっくりと前に歩み始める。


「私は一度聞いた音を忘れません。そして、音によって"全てのものを判別することが出来ます"」


そう、リィンはチェムを連れ去った者の"音を追って"ここまで辿り着けたのだ。


「絶対音感。そして音速の攻撃。これを合わせ持つ、私の二つ名をお教えしましょう」


「クッ!」


ズオッ!


タローは近づく人間に畏怖を感じ、己の足は頭から叩き付けんとした。




「"絶対音速/スパイラルアブソリュート"」




ドドオンッ!!


タローの足は振り下ろされ、岩盤を砕いた。


しかし、



「もう一つ、言い忘れましたが…」



リィンは無傷で、地に足をつけていた。
ダズが目で追えないほどの速さで移動をして。


「私は音を操り、"自分を音に乗せることが出来ます"。さしずめ、"音速の移動が出来る"というところでしょうか」


サラッととんでもないことを言うリィンである。


「何が音速だ…下らん!!」


再びタローは振りかぶり、攻撃せんとする。


「せっかちですね……犬らしい"お手"というところでしょうか。では……」


ブオッ!



「"地獄の歌(待て)"」


ビビビッ!


リィンは再び音を飛ばした。

それはまるでロープのように波紋を広げ、タローを拘束していった。


「ウオォッ…!」


振りかぶった腕ごと拘束され、身動きが取れなくなる。


更に、


ヒュンッ!


「次は、"伏せ"といきましょうか」


瞬時にタローの頭上に移動し、楽器を高く振りかぶった。


ズドオォンッ!!


「ゴアァッ!!」


そして、落下の勢いをそのままにそれをタローの背に勢いよく叩き付け、地面を陥没させる。

あまりの衝撃に、タローは呻く。


「では、最後(フィナーレ)としましょう。おっと、あなたは犬ではなく狼でしたか……まあ、いいでしょう」


バババッ!


リィンは冗談を交えつつタローの背に乗り、頭上に無数の光の矢を放った。


そう、菫吏が使ったものと同じく。
"シビアレインストーム"を放つため。


「す、すごい……」


ダズは感嘆の声をあげる。

それはそうだろう。
なんせ先程サンドマンにやられかけた男が、自分がてこずる相手に無双している。

とても信じられたものではない。


「シビアレイン……」


ばら撒かれた無数の光の矢が、タローに向かい降り注ぐ。

誰もが勝利を確信した。





「待ってください!!」


ピタッ!


その時、暗闇の奥から聞こえた声で、リィンは光の矢を寸前のところで制御した。


「チ、チェムさん…?」


ダズは捕らえられていたはずの彼女が無事であったことに安堵する。


しかし、同時にその腕に抱えられていたものを見、首を傾げた。



「クゥン、クゥン…」


「……デザートウルフの……子供…?」


チェムの両腕には、怪我をした子デザートウルフ達が抱えられていた。

小さな体の傷である。
放っておけば死に至る致命傷となる可能性もあるだろう。


「お、お前…!?」


タローは驚き、なんとか地獄の歌を解こうともがくが、リィンがそうはさせない。


そんな様子を見、チェムは小さく微笑んだ。



「大丈夫です」


パアアアァァッ!


その瞬間、チェムを中心にまばゆい光が放たれた。

それはまるでチェムの背から生えた翼がデザートウルフ達を包み込むように見え、傷をみるみるうちに癒していった。


「はい、もう元気になりましたよ」


「クゥン!」


子デザートウルフ達はチェムの腕で大きく尻尾を振り、地面におろされると、必死に地を蹴り、タローの元へと駆け寄っていった。


「ワンッ!」


「お、お前達……」


元気に尻尾を振るその姿に、タローは驚きもあれ、安堵した。


「これが、"治癒息吹/ホーリーブレス"の力、か……」


ダズも過去に見た力ではあるが、何度見てもその技術には感服させられる。


「この子達を治してほしかったんですよね?だからタローさんは街で人をさらって、魔法を使える人を捜していたんです」


なるほど、とダズは頷いた。

確かに、素性の知れぬ、ましてやモンスターに進んで協力しようとする者などそうはいないだろう。

人を無理矢理にでも連れ去り、強制させなくてはならなかったのだ。


「これで、一件落着ですね!」


チェムの行動、そしてその言葉で、事件は終止符をうたれることとなった。
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