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三国戦争編15

今回戦闘は無し。


続きは小説です。




誠は驚愕した。


皆が眠りにつく深夜に、異常なまでの熱さを感じ取り目を覚ますと、自分の部屋、そこがある学院の寮が"火に包まれて"いたのだ。


「な、何だ一体!火事か!?」


誠はベッドから跳び起き、口元に布を当て、直ぐさま部屋から飛び出した。

幸い自分の部屋と外の廊下には、僅かだが通れる程の余地があった。


「ハァ!ハァッ!皆は…皆は無事なのか…!?」


徐々に周囲が煙に包まれていき、呼吸すらままならない状態でも、誠は仲間のことを考えていた。


「エリオット!エリセル!」


学友の名を一人ずつ叫んでいく。

しかし、声も虚しく、返ってくるものは何もない。


「春通!サツキ!」


走るうちに、誠は廊下の先で一人の少女が倒れているのを発見する。


「ハァッ!エ、エリー!?」


それは同じクラスの女生徒、エリーだった。



その時、エリーの周囲の煙が徐々に晴れていった。

そこにはもう一人の人間が立っていた。



「……サ、サツキ…?」


誠のよく知る女が、そこにいた。


だが、ゆっくりと振り向いた彼女を見、誠は体が止まる寒気を覚えた。


「お、おい……何だよそれ……血、か…?」


サツキの腕は真っ赤に染められ、もはや素肌と衣服の繋ぎ目すらわからない。

そして、もう一度エリーを見、誠は体を震わせた。


「エ、エリー……し、死んでる…のか…?」


横たわる彼女の胸は、無惨にもえぐり取られたように、ポッカリと穴が空いていた。


誠はそこで、一つの結論に達する。


「お、お前……エリーを…殺した、のか…?」


そうとしか考えられない程に、現状は示していた。


「おい…!何とか…何とか言えよ!サツキ!!」


声を荒げる誠に、サツキは答えない。

哀しみや怒り、それらを表しながらも表情は冷たく、目を細め誠を見ていた。



ガシャンッ!


次の瞬間、サツキは廊下の窓に体当たりするように、外へと飛び出した。


「サツキ!?待てよ…!待ってくれ!!」


誠はすぐに窓の外を覗いたが、夜の闇に溶け込むように姿を消す後ろ姿しか、確認できなかった。


ゴオッ!


「く、くそっ…!」


後方から迫る炎が強さを増し、もはや誠は逃げ道を失っていた。

このままでは自分まで焼け死んでしまう。
死への恐怖が誠を掻き立て、サツキ同様、自分も窓から飛び降りた。





半日以上続いたこのキル・ハイル学院の火災は、学院長であるキル・ハイルにより大きな騒動となること無くおさめられた。


しかし、生き残ったのは僅か三名。

瀬戸誠、七水春通、そして行方不明となったサツキ。

建物は全焼。
多数の死者を出しながらも、この事件を現在知る者は少ない。

そして、影で囁かれる噂に誠は驚愕する。



"サツキが焼け死んだ全生徒を、事前に殺害していた形跡がある"と。



誠は、己の中から徐々に生まれ出る感情を押さえずにはいられなかった。


そして、オーバークリエイターとして世界に名を轟かせるようになったサツキの噂を聞き、誠は心に誓った。



"サツキに復讐する"と。



















「……うっ………」


次に目を覚ました誠が見たのは、どこまでも続く、雲一つない青空だった。

自分が仰向けに寝そべっていることに気付くまで、少しの時間を要した。


「起きたか、遅えぞ……」


「…っ!?」


横には、静かに寝息を立てる春通の頭を膝の上に乗せ、形容しがたい視線を誠に向けるサツキがいた。


体を動かそうとしたが上手く力が入らない。
先ほどのダメージが蓄積しているのだろう。


「春通は……生きてるんだな……」


「当たり前だ、俺に治せない怪我があってたまるか」


誠は顔だけを傾け、静かに眠る"親友"の姿を見、安堵した。



「……なあ、サツキ……あの時お前は…」


「"俺が殺した"」



誠の言葉を遮るように、サツキは答えた。
まるで、聞きたいことがわかっていたかのように。

あまりにはっきりとした言葉に、誠は再び顔を歪めた。


「何でだ…!学院の皆を殺してまでやりたいことなんて…!!」


力を振り絞り、誠は叫んだ。

その様子を見、サツキは一息つき、ゆっくりと口を開いた。




「……あの学院はな、"戦争の道具を造るための工場"なんだ」


「……な…何だって…?」


驚愕する誠を横目に、サツキは続ける。


「学院の地下で、機械人形をせっせと造ってるんだよ。上ではそれを試験的に動かしているに過ぎん」


「じ、じゃあもしかして皆は…!?」


サツキの言葉が本当だとすれば、一つの結論に導かれる。



「あぁ……俺が殺したのは"全員機械人形だ"」


「……………」


誠は理解した。

サツキは何らかの方法でその計画を知り、それを"阻止するために学院を焼き払った"のだと。



「でも…そんな計画を一体誰が…?」


黒幕は誰なのか。
誠はサツキを問い詰める。


「………"キエル"。奴は学院長キル・ハイルが生み出した、機械人形だ」


キル・ハイルの息子として学院に存在していた"キエル"。

誰も知らなかった真実が、サツキの口から次々と明かされる。



「奴がそんな大それた計画を立ててたなんて、キル・ハイルのおっさんも知らなかったんだろうな」


「……お前の、その体も……」


誠は再びサツキの吹き飛んだ腕を見た。

サツキは肩を押さえ、答える。


「あぁ、訳もわからず参加させられた実験でな………今じゃ俺も体の半分が機械人形だ」


「……………」


誠は全てを悟り、少しの間目をつぶった。

そして、震える体を庇いながら、ゆっくり上半身を起こした。


「お、おい、まだ動いたら危な…いっ!?」


ドガッ!


誠は右の拳で、サツキの頬を殴った。

勢いで膝に乗せていた春通まで吹き飛ぶ。


「…いってぇ…!何すんだ!?」


「……どうして俺に"何も言わなかった"!?」


誠は怒っていた。
全身に走る痛みに顔を歪めながらも。


「………巻き込むわけにはいかねえだろ……こんな体になってまで…」


「ふざけるなっ!!」


顔を逸らすサツキに、誠は更に罵声を浴びせる。


「"友達"だから巻き込めないだと…?バカッ!"友達だからこそ巻き込めって言ってるんだ"!!春通だって…きっと同じことを言いたかったはずだ…!」


「…うっ……」


サツキは二人を巻き込むまいと思い、一人で行動に出た。

だが、誠の気持ちは違ったのだろう。


「俺は……俺は何年もお前を恨んで……狂ったように復讐に燃えて………馬鹿みたいじゃないか…!」


彼は瞳から涙を零す。


全ては"サツキの一人よがり"から始まった。

それを誠は、否定した。


「………すまねえ……」


サツキは俯き、誠に頭を下げた。
彼女も気付いたのだろう。


「…うーん……むにゃむにゃ……」


その時、寝転んだままの春通が小さく口を開いた。


「サヅギさん……オラはいつでも味方だぁ……ぐー……」


ただの寝言だった。

だが、二人の緊張を解すには十分だったろう。







たった一言が言えなかった。

それはプライドか、優しさか。

今では理解する必要もないかもしれない。




だからこそ、今なら言える。


"共に戦ってほしい"、と。
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