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三国戦争編17

さて、ラストへ向けて突っ走りますよ。

続きは小説です。



「ハァッ!ハァッ…!」


「クッ…ハァ!ハッ!」


ダズとジルは、互いに疲弊していた。

それもそのはずである。
小一時間全力を出し、力と技をぶつけ合っているのだから。

しかも、どちらも血を流すような大きな傷は負っていない。
少しでも見誤れば致命傷を与えられるほどの強さを互いに持ち合わせているが故、絶妙な加減で攻めと守りを繰り返しているからである。

体力も精神力も、限界に近いことが伺える。



「強いな…ネオ以上に私と闘りあえたのはお前が初めてだ……」


そこに驕りはない。
揺るがない誇りと意地があった。


「……もう、やめましょう……」


しかし、ダズは構えを解き、再び彼女の説得を試みる。


「あなたももう気付いているはずです…!父の意志が何であるかを!」


「……………」


ジルは黙し、それに答えない。


「"命を賭けて二人を護れ"と、そう感じ取れるはずです!それが何故わからないんですか!?」


「黙れ!!」


ダズの言葉に、ジルは罵声を浴びせる。

剣を持つ手は震え、顔を歪ませる。


「父を…父さんを侮辱するな…!もう……」


言葉と同時に、ドラゴンは攻撃体勢に入った。


「後戻りなど…出来んのだ!!」


ゴオオオオォォッ!!


紫色の炎"ドラゴンブレス"がダズに向かって放たれる。


「ウウウアアアアァァッッ!!」


ダズは鎌を大きく振りかぶり、迫り来る炎に対峙した。


「イグニッション…ブレエエェェイクッ!!」


ドドオォンッ!!


ダズを中心に放たれた炎がドラゴンブレスとぶつかり合う。

炎は相殺され、爆発するように土煙をあげる。


ズオッ!


煙の中からダズが現れ、ジルに向かい真っ直ぐ突進する。

ドラゴンブレスを撃ったことで、すぐにデスバウンドは放てないからであろう。


「スパイラル…!」


ジルは腕を捩るように剣を持ち、それを迎え撃たんとする。


パアァッ!


ダズは懐から一つのルーンを取り出し、それを砕いた。


「クラッシュ…!」


大鎌"クレセントサイダー"は光に包まれ、"最後の一撃"を放たんとする。



それが、互いに全力をかけた最後のぶつかり合いになるだろう。




「ピアアアァーーースッ!!」


「ストラアアァーーイクッ!!」


ズオオオォッ!!


ダズは鎌を大きく振り下ろし、ジルは真っ直ぐ剣の衝撃波を放つ。

突き出す攻撃である分、リーチはジルの剣のほうが長い。
まず間違いなく先に攻撃が届くであろう。



だが、



カンッ!


「な…にっ!?」


ジルの衝撃波は、ダズの前に突如出現した"防壁"に阻まれた。


「キリエ…エレイソンだと!?」


そう、初めて攻撃が当たった瞬間発動したのは、出発前にヒナノがかけた"プラエファティオによるキリエエレイソンだった"。
ダズも狙っていた訳ではない。
しかし、これで攻撃は確実に通るであろう。


ガキイイィィンッ!!


凄まじい金属音をあげ、ダズの鎌はジルの"剣へと振り下ろされた"。


"クラッシュストライク"は武器の全ての力を使い放つ一撃。
ジルの手にした剣を粉々に吹き飛ばすと同時に、ダズの大鎌も脆く崩れさった。



「ありがとう……クレセントサイダー」


言葉と同時に、ダズは右手に力を集中した。


「ハアアアアアァァッ!!」


そして凄まじい勢いでジルの頬に向かい、己が拳をぶつけた。


ドゴオォッ!!


「グハッ…!」


その勢いに、ジルは再びドラゴンから振り落とされる。

しかし、今度ばかりは前のようにはいかない。
地面を転がるように体がたたき付けられる。


ズシャアッ!


ダズも力を使い果たしたことで同時に体ごと地に落ちる。


再び地に足をつけて立とうとする二人を、蓄積されたダメージがそうはさせない。


「ハァッ…!ば、馬鹿な…この私が…!動けない、だと…!?」


初めて味わう感覚に、ジルは困惑した。

痛みが全身を駆け巡り、いくら動かそうと脳に命令を送ろうとも、疲弊した体が言うことを聞かない。


それはダズも同じであった。


『時間切れだ。ダズリングよ』


「く、そっ…!限界、か…!」


バフォメットはそう言い残すと、ダズの纏っていたオーラと共に気配を消した。

瞳の色が元に戻り、襲い来る激痛にダズは顔を歪める。



あえて勝敗について語るというのなら、間違いなく"引き分け"の状態であった。



ダズは動かぬ体に鞭を打ち、喉から声を振り絞った。



「何が…何が"後戻りできない"、だ…!ふざけるな!!」


力の限り声を荒げ、罵声を浴びせる。


「あなたを、思っている人々の気持ちを…踏みにじる気か!?父や母だけじゃない!ネオさんや!ヒナノさんや!そして…」


















「もういいんです。ダズ……」



ザッ!


背後に気配を感じた。

しかし、それは対面に位置するジルからは既に見えている存在。


「お、お前は……何故だ…"何故貴様がここにいる"!?」


彼女の表情は様々な感情に支配されていた。
驚き、怒り、哀しみを全て含めた感情に。



ダズは振り返らずとも、判断が出来た。


彼女のよく知る"女の声"。
それが、誰であるかを。


振り返り、ダズは小さく口を開いた。




「……ユノン…様………」



プロンテラ王国第十三王女"ユノン=N=ローウェル"が、そこに立っていた。


ユノンはゆっくりと地に倒れるジルに歩み寄った。

当然ジルが警戒し、体を震わせる。


「…貴様が…いなければ!父さんや母さんは…死なずに…!」


体の動かないジルの横に立ち、ユノンは小さく口を開いた。



「……貴女の御父上の、"最後の言葉"を伝えます」


「なっ…!?」


ジルは驚愕し、目を見開く。

ユノンは悲しげな表情を浮かべたまま、言葉を続けた。


「それを聞いた上で、貴女がどういう行動に出ようとも、私は構いません」


そしてユノンは伝えた。


ジルの父親の、最後の言葉を。




















「フィザットさん!!」


目の前で山賊達に拘束されるジルの父を見、ユノンは叫んだ。

自分が不甲斐ないせいで、妹のヒナノまで巻き込んでしまったことへの後悔が頭を駆け巡る。


ジルの父は単身山賊達のもとへ乗り込み、自分を人質にすることと引き換えに、ユノンとヒナノの解放を申し出た。

しかし、山賊達がそんな約束を守るわけもなく、彼も拘束され、今みせしめに殺されようとしている。


「ユノン様、一つ頼みたいことがあるんだ」


「こ、こんな時に一体何を!?」


彼は小さく微笑み、続けた。


「後で必ず、あの"馬鹿娘"がやってくる。あいつのことを、よろしく頼む」


「そ、そんな…!」


ユノンにはそれがまるで遺言であるかのように感じ取れた。


「あいつはまだ俺の背中ばっかり見てやがる。もう随分前に俺より強くなっちまいやがったのにな」


それを否定したい、その気持ち一心で首を横に振る。


「だから、あいつに"自分が何をやりたいのか"を、考えさせてやってほしい」


瞳に涙を浮かべるユノンを見、微笑みながら彼は続けた。


「その上で、最後にこう言っておいてほしい」


山賊の一人が彼に歩み寄り、剣を振りかぶった。





「"最愛の娘、ジル=フィザット。お前が護るべきものを護れ、と"」






















「………これが、貴女な御父上の最後の言葉です」


ユノンはその一部始終を語り終え、ジルを見た。


「……………」


ジルは顔を下げ、放心するように黙していた。


「ジル=フィザット。この先を決めるのは、貴女自身です」


ユノンは振り返り、ジルに背を向ける。
その表情は重く、暗く、深い悲しみに包まれていた。



「……父さん………」



ジルは小さく口を開いた。

その瞳から涙が零れ、頬を伝う。


「……私は……私、は………」


彼女を縛り付けていた鎖が、ゆっくりと解かれるように。



「あ……う…あああああぁぁぁーー!!」


そして、その跡にはジルの泣き叫ぶ声が戦場へとこだました。






戦争は確実に終焉へと向かっていた。


ユノン=N=ローウェルは決意の表情を顕に、この地に降臨する。
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