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コンロン地下闘技場編3

庭に間に合ってよかった。


続きは小説です。



「ジャック…フロストォッ!!」


キィンッ!キィンッ!


春を中心にし、鋭い氷の柱が地面を伝い、ファルシオンに襲い掛かる。


「ストーム…!」


対するファルシオンも魔法の詠唱を完了させ、両手を前に撃ち放つ。


「ガストォッ!!」


ビュオオオォッ!


闘技場を包み込むような激しい吹雪が巻き起こり、ジャックフロストを打ち消していく。



『す、凄まじい魔法の押収です!この実況席にまでまるで極寒の地に立たされたかのような寒さが伝わってきます!!』


『両者一歩も引かない戦いですね』


身を震わせる神咲と違い、涼しげな顔をするアヘンであった。




「魔法には魔法ってか…!?でもな、こっちも魔法のエキスパートや!」


春は杖を握る腕に更に力を込めた。


「そうそう負けたりは……せえへんで!!」


ドドドドドドッ!!


ジャックフロストは更に勢いを増し、氷の柱はストームガストをものともせず突進する。


「…やはり一筋縄ではいかないか……速度増加!!」


ヒュインッ!


ファルシオンは自己強化の魔法をかけ、その速さを活かし、氷の柱を避け始める。


「甘い!クアグマイアッ!!」


ドロォッ


「何っ…!?」


突如ファルシオンの足元の地面がぬかるみ、その動きを封じられる。

彼の使用した速度増加はたちまちその効力を失い、身動きが取れない状態となった。


「これで…終わりや!!」


ゴゴゴゴゴゴゴッ!!


春は杖を高々と掲げ、己の頭上を指し示した。

空から轟音をあげ、接近する物体を操るように。



『あ、あれは…!?い、隕石だあああぁぁッ!!』


『メテオストームですね。大きさからしてかなりの魔法力が込められているのが分かります』


動揺する神咲と、相変わらず動じないアヘンだった。




「メテオストオオォーームッ!!」


「……っ!」


ドガアアアァァァンッ!!


爆音をあげ、メテオストームはファルシオンの立つ地に直撃した。

周囲に暴風が吹き荒れ、悲鳴をあげる観客もいる。



「ハァッ!ハァッ…!」


春は肩で息をし、土煙をあげる地を見た。


その時、一つの疑念が彼女の脳裏を過ぎる。


『フ、ファルシオン選手は大丈夫なんでしょうか…!?』


「し、しもた…!やり過ぎたか…!?」


そう、この大会において、相手を殺してしまっては反則となることだ。


徐々に晴れる煙の先、大穴があいた地に、春は駆け寄った。


「だ、大丈夫か!あんちゃん!?」


煙が完全に晴れ、春は地の底に目をやった。

魔法力によるダメージとはいえ、あれだけ強力な攻撃を受けては、並の人間では無事に済まないだろう。



しかし、



「……い、いない…!?」


春の予想を裏切るかのように、そこに倒れる便利屋の姿はなかった。


避けることなど不可能な状況である。
何故彼の姿が無いのか。




「……詰めが甘い」


「…なっ!?」


「ハンマーフォールッ!!」


ドガアアアァァンッ!!


それは、突如彼女の後ろに現れた。


ファルシオンは春に向かい、具現化した巨大なハンマー、ブラックスミスの得意とするスキル"ハンマーフォール"を繰り出した。



「…う、がっ…!」


体が痺れる感覚に、春は動きを封じられた。
ハンマーフォールによるスタンを受けたのである。



「フンッ!」


ドゴォッ!


「がはっ…!」


ファルシオンは掌を春の腹部に打ち付け、後方に勢いよく吹き飛ばした。


ダンッ!


壁に激突し、春は意識を失いかける。


(な、なんで……いきなり後ろ、に……)


彼女の疑問に、ファルシオンは答えた。



「"トンネルドライブ"。ハイディング状態でも動ける唯一のスキルだ」


そう、彼はメテオストームが直撃する前に、ハイディングで姿を消し、春の後ろまで静かに移動を果たしていたのだ。


「……まあ、もはやこの声も聞こえんだろうがな」


ファルシオンは春に背を向け、闘技場から立ち去ろうとしていた。



(………待て……まだ、うちは……)


彼女はほぼ意識を失っていた。

ファルシオンの攻撃は強く、重く、まるで内部から身体を破壊されるような感覚を受けた。


(……あかん……もう、体……動かへん……)


手足の指一本を動かす力も残ってはいない。

時を待てば、大会関係者によるストップがかかり、ファルシオンの勝利は揺るがないものとなろう。


(ごめん……ごめんなぁ、子供達………先生…勝てへんかった……)


孤児院の子供達一人一人の顔が脳裏を過ぎり、


(……マザー………すいません……うち、は………)


彼女の師、そして親とも呼べる人物を、彼女は最後に思い浮かべた。


















「……る………い…!」


(…なんや……騒がし……)


「…は……ん…い…!」


まるで己に呼び掛けるかのように、その声は頭に響いた。


(……あれ…?この声……?)


春はその声を知っていた。


目を開けねば、意識を取り戻さねば、そんな気持ちに包まれる、その"声"を。














「はるせんせぇーーーいっ!!」



パチッ


春は意識を取り戻した。


瞳を開け、声がした方へ、ゆっくりと顔をあげる。


そんなはずはない。
知らないはずなのだ。


そう思いながらも、ゆっくりと。




「立って!!春先生ーーっ!!」


「負けないで!!春先生ーーっ!!」


紛れも無い、自分の教え子。

孤児院の子供達の姿が、観客席に見えたのだ。



「…な……なん、で…?みんな…?」


朦朧とする意識の中で、春は子供達の横にいる一人の人物と視線が逢った。


「……マ、マザー………」


彼女はそれを見、理解した。

辺境の、しかもこんな物騒な場所まで子供達を連れて来たのは誰なのかを。


「………ハ…ハハッ……」


春はもう一度下を向き、笑った。


そして、震える体に鞭を打つように、立ち上がった。



「なん…だと…?」


それには、さすがのファルシオンも我が目を疑った。

彼女は明らかに重傷を負っているはずである。


それでなくとも、意識を取り戻すことなど有り得ないというのに。



「……何しとんやろなぁ…うちは………」


フラフラと覚束ない足を押さえ、彼女は再び杖を構えた。



負ける訳にはいかない。

彼女には使命があった。



「……行くで……便利屋のあんちゃん…」



己の帰りを待つ者。

護るべき者のために、勝ち続けるという使命を。








彼女の魔法は、"終わることのない攻撃の雨、まるで弓矢のように蒼く降り注ぐもの"として、こう呼ばれた。




"永劫の蒼穹/エターナル=ミリオンダラー"と。
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