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コンロン地下闘技場編4

春さんvsファルさん、決着。


続きは小説です。



『な、何と言う事でしょう…!春選手再び立ち上がり、戦おうとしています!!』


『素晴らしいガッツですね』


ワアアアアアァァッ!!


その様子に会場の観客は更に湧き上がり、声援を送る。



「……やめておけ。そんな体でまだ勝機があると思っているのか?」


ファルシオンは息を切らす春を見、棄権を促す。

春は引き攣る頬で唇を小さく吊り上げ、鼻で笑った。


「ハッ…同情なんかいらんでえ。勝てるかどうかなんてなぁ……」


バチッ!


手にした杖に電流が走る。


「やってみなきゃ……わからんからなぁ!!」


パァンッ!


宙を走る電撃、ライトニングボルトが放たれ、ファルシオンに襲い掛かる。


「無駄だと言っている!!」


キュイイィンッ!


しかし、マジックロッドの前にそれは阻まれ、吸収される。


「まだまだいくで!!」


春は立て続けに魔法を放ち、相手に動くスキすら与えない。


ゴオォッ!


ファイアーボルトを放ち、


キィンッ!


続けてコールドボルトを放つ。


何も判らない者からすれば、ファルシオンは防戦一方である。
実際はマジックロッドに魔法力を吸収されているため、春は常に精神力を消費し続けることになる。



しかし、ファルシオンは違和感を覚えた。


(…おかしい……)


今でも攻撃の雨はやまない。

そこで生まれた違和感とは、


(魔法の威力が、"上がっている"…?)


そう、彼女から放たれる魔法は、徐々にその威力を増してきているのだ。


そして、ファルシオンは再び春を見た。



「……あれは…」



ヒュイィンッ


春の周囲には、光り輝く"赤"、"青"、"黄"の球体が浮かんでいた。


「……そうか、それを使って威力の底上げをしているのだな」


「……ちっ!」


春は気付かれた事に舌打ちした。

その正体は"サモンボール"。
各属性に対応した魔法の球を召喚することで、己が放つ魔法の威力を高めるというもの。


バチンッ!


「ぬっ!?」


更に、それはマジックロッドで防ぎ切れない程の威力まで達し、ファルシオンの周囲の地に傷を付け、砕かれた岩盤が襲い掛かる。


「持久戦に持ち込む気か……だが!!」


ヒュンッ!


ファルシオンは先程と同様に、ハイディングで姿を消し、魔法を逃れた。



ニヤリ


春は不敵に微笑んだ。


「それを……待っとったで!!」


ボォッ!


次の瞬間、彼女の周囲に炎の球が燈り、回転し始めた。


「ハッ…!?」


ファルシオンはそこで気付いた。
ハイディングを"誘われた"のだと。


春が展開したのは"サイト"。
隠れた相手をあぶり出すスキルに他ならなかった。



「そこやな!サイトラッシャーッ!!」


ゴオォッ!


「ぐおっ…!」


更に、サイトを全包囲へと拡散させ、相手を後方へ吹き飛ばした。


ダァンッ!


ファルシオンは壁にたたき付けられ、背中を強打させられる。


「痛いやろ…さっきのお返しや!シエナエクセクレイトッ!!」


「くっ…!?」


パキッ!


ファルシオンがスキを見せた瞬間、春の石化スキルが決まり、足元から侵攻が始まっていく。


つまり、彼は身動きが取れない状態となった。



「今度こそ、これで終いや!!」


春はサモンファイアーボールを唱え、周囲に赤い光を燈す。

杖が炎に包まれ、次の攻撃へ移るために。


「最大火力!!クリムゾンロックッ!!」


ゴオオオォォッ!!


「く、そぉっ…!!」


どうあがいたとしても、その魔法は受けることしか出来ない。

石化状態にあるファルシオンの現在の属性は、火に最も弱い、"地"属性。


ドガガガアァンッ!!


クリムゾンロックは命中し、その周囲の地面ごと焼き尽くす。

土煙があがり、彼の姿を隠した。



『つ、強い!これが過去優勝経験を持つマザー=マリサの弟子!東雲春の力だぁ!!』


『これは決まったかもしれませんね』


神咲の声が闘技場に響き渡り、春に大きな拍手と声援が送られる。


春は肩の力を抜き、己が勝利を確信した。



ふと観客席に目をやると、子供達が嬉しそうな顔を浮かべ、こちらに声援を送っていた。


(……みんな、先生はやったで…!)


手を振り、それに答えてやろうと思い、ゆっくりと手を挙げようとした。



その時、煙が晴れ、一つの影が春の視界に入った。


いくら本気で放った魔法とは言え、あれだけの強者である。死にはしないだろう。

そこには気を失ったファルシオンが倒れているであろうと、容易に想像できた。




だが、彼女の目に映ったものは、




(……っ!た、盾…!?)



そこには地面に置かれた一枚の"盾"が存在していた。


春はその形に見覚えがあった。





かつて天界で戦う戦乙女達が所持していたと言われる伝説の盾。


その名は、"ヴァルキリーシールド"。





「"詰めが甘い"と言った」


「えっ…!?」


それは突然、春の目の前に出現した。


他の誰でもない。
魔法の直撃を受けたはずの、ファルシオン本人である。



「セ、セイフティ…!」


「遅い!滅ッ!!」


ズガガガガガガガッ!!


両手からアサシンが得意とするスキル"ソニックブロー"の連撃が放たれ、彼女の体ごと宙へ吹き飛ばした。


(なっ……なんで…!まだサイトは発動してたはず…じゃ……)


空から落下する春は、ハイディングならばあぶり出せると考えていた。


しかし、その気配は全く感じられなかった。
直撃を盾で防ぎつつ受けたとして、瞬時に自分の元へ近づけるスキルなどあろうか。



その疑問に、ファルシオンは再び答えた。



「モンクスキル、"残影"。一度は見ていたはずだ。警戒すべきだったな」


そう、それは最初の選手登場でマサオが見せた"残影"。

それを理解し、己の浅はかさを知る。




春の意識はそこで途絶えた。






















バサッ!


次に彼女、東雲春が見たものは、見知らぬ天井。

それを見、己が横になっていることを知った春は、勢いよく上半身を起こした。


「こ、ここは…!?」


ふと横を見ると、己の師マザー=マリサが微笑んでいた。


「闘技場の医務室です。吹き飛んだあなたは意識を失って、運営からのストップがかかったんですよ」


「試合…!試合は!?」


春は受け入れたくなかったのだろう。

マリサは真剣な面持ちで口を開いた。



「あなたの、負けです」


「……………」


その言葉を聞き、春はシーツを握る手から力を失い、数秒の間放心した。


ここに運ばれている時点で気付くことだ。
しかし、それを受け入れたくない、認めたくないが故だろう。



「……う……くっ…!」


瞳から涙を零し、悔しさで拳を強く握りしめた。

マリサは春の肩に手を添え、優しく撫でた。


「年頃の娘がそんな簡単に泣くんじゃありません。あなたは十分頑張りました。それに……」


マリサは目線だけを扉にやった。


「……あ…」


そこに立っていたのは、紛れも無く、先程激闘を繰り広げたファルシオンであった。

言葉を失う春に、マリサは微笑んだ。


「どこかの便利屋さんが、"教室と孤児院復興のために無償で戦ってくれる"そうですから」


「え…?そ、それってどういう……」


ガタッ!


マリサの言葉の意味がわからず、首を傾げた春だったが、ファルシオンの立つ入り口からした物音に、自然と顔が向いた。


「おまえ…!せんせいをいじめるわるいやつだ!」


そこには孤児院にいる子供達が並んでおり、怒りの表情をファルシオンに向けていた。


「……………」


便利屋は黙したまま、淋しげな表情を子供達へ向けた。


「こら!やめなさいお前達!」


マリサが一喝し、子供達は悔しげな表情を顕にする。


「みんな、先生に顔を見せておやりなさい。さあ、こっちへ」


マリサは優しく手招きし、子供達を中へ、春の横たわるベッドへと迎えた。


春は子供達の顔を見、再び涙をためた。


「ごめん……ごめんなぁ、みんな……先生勝てへんかった……」


「そんなのいいよ!春先生が危ない目にあうほうがずっと嫌だ!」


「そうだよ!先生がいなくなってさびしかったよ!」


子供達は口々に春を励まし、彼女はそれに涙を流しながら微笑み、優しく抱きしめた。


「…ありがとう……ありがとうみんな…!先生もみんなのことが大好きやぁ……」



その様子を横目に、マリサはファルシオンと共にそっと病室を抜け出した。



















「……これで良かったんだな?」


通路を歩きながら、ファルシオンは小さく口を開いた。


「えぇ、ありがとうございます。どうでしたか?"兄弟子として"彼女の戦いっぷりは」


ニコニコと微笑み、マリサは言葉を返す。


「……悪くはない。だが、感情に流され過ぎだ。あれではいつまでも成長できんぞ」


相変わらずの無表情で、ファルシオンは答える。

マリサは一息つき、再び口を開いた。


「同じ"私の孤児院で育ったあなた"に、こんな形で再会することになるとは夢にも思いませんでした……」


「……………」


そう、ファルシオンも幼い頃にマリサに拾われ、孤児院で育てられた。

つまり、春と同じ境遇だったのだ。


「つい娘のことが心配になって、息子であるあなたにもお願いすることになってしまいました……この頼みを、聞いてくれますか?」


「……受けた依頼は必ず完遂する。それが便利屋としての俺だ」


ザッ!


ファルシオンはそう言い残し、マリサに背を向け、歩き出した。


「いつからあんなに無愛想になったのやら………あ、そうだ、"盾"は後で返してくださいねー」

マリサは、振り返らぬファルシオンの背中に手を振り続けた。



そんな彼女の表情は、再会を喜ぶ微笑みでありながら、どこか不敵な印象を見るものに与えていた。
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