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コンロン地下闘技場編8

久々に現在の本編へ。

先を書くのが楽しみになってきた。


続きは小説です。







会場内は未だ、熱気に包まれていた。
大会史上初となる引き分けという異例の事態に驚きと興奮冷めやらぬ観客達は、担架に運ばれる選手、ケビンとマサオを見送るように声援を送り続ける。


「…………」


観客席の後方で、無言で腕を組み、ジルはそれを見ていた。

その複雑な、というより落ち着きのない表情に、横にいたダズは頬を緩めた。


「……行ってあげたらどうですか?ジルさん、そわそわしてますよ」


「ぬ……そうだな、すまん……少し行ってくる」


己の部下にあたるケビンのことが心配なのだろう。

期待の新人と言っていた程である。
それも当然の心境だろう。

ジルは足早に医務室へと歩みを進めた。



「さってと……」


一人残されたダズは、次の対戦への準備が進められる闘技場の真ん中へと目をやり、小さく伸びをした。


「私達を満足させるような人は……いるのかな?」















「アイタタタタタ…!」


医務室のベッドに横たわるケビンは、全身に走る激痛に、顔を歪める。


「マサオ氏、やるなぁ……次は、負けたくない…イタタ…!」


己の体の柔らかさを使っても受け流せない攻撃。
初めて相対したその強さに、彼女もまた興奮を抑えられないようだ。


ガチャ


その時、医務室の扉が開き、ジルが姿を現した。


「げっ!ジルさん!?」


「げっ!とはなんだ。全く、人が心配して来てやったというのに……まあ、その様子なら問題はなさそうだな」


突然現れた自分の上司を前に、驚きを隠せないケビン。
当然といえば当然の反応だろう。

その様子に、ジルは表情を緩め、ベッドの横の椅子へと腰掛けた。


「……すいません、ワシ負けてしまいました……」


「気にするな。良い勝負だったと思うぞ。これで勉強になったというものだろう」


引き分けとはいえ、勝てなかったことへの悔しさがケビンの表情に出る。


「……もっと強くなりたいか?ケビン」


ジルの問いに、


「もちろんです!!」


ケビンは即答し、拳を強く握り締めた。

その様子に、ジルは小さく微笑み、再び顔を引き締める。


「よし、まずはお前のあの技についてだが、もう少し改善すればスキを減らすことも……」


ジルは嬉しそうに口を開き、ケビンにアドバイスしていく。

ケビンもそれを真剣に聞き、相槌をうつ。


人類最強と言われた女騎士を上司に持つ彼女が、次にどんな戦いを繰り広げるのか。

予想が出来ないのは、そのトリッキーな戦闘スタイルと等しくあるものなのだろう。












「はあ…私にはお見舞い無しか……」


隣の医務室から聞こえるケビンとジルの声を耳にし、静かな自分の部屋に寂しさを覚えるマサオだった。


「私の勝ちでもいいのに……」


悔しげな表情を浮かべ、頭の後ろで腕を組み、ベッドに横になる。


「もう少し余力を残しておけば…!」


「俺から言わせれば、阿修羅程度で力尽きるのもどうかと思うがな」


バッ!


マサオは気づいた。
いや、気づかされた。

その声は、マサオの独り言に答えることで、"己の存在を他者に気づかせた"のだ。


瞬時にマサオは声のする方向に振り向いた。

今まで全く人の気配など感じなかった部屋の壁には、一人の女がもたれかかるように立っていた。


マサオはその人物を知っていた。

知っていたからこそ、気配に感する疑問は即座に解消される。


"あぁ、この人ならそんな芸当が出来ても不思議ではないな"、と。




「サツキさん、来てたんすか」


「おう、試合見せてもらったぜ」


世界にその名を轟かせる"オーバージェネティック"こと、サツキである。

マサオはサツキの言葉に、恥ずかしげに視線を逸らした。


「見てたんすか……いやぁ、情けないところを見られたな」


「あぁ、その通りだ。ホントに情けねえ」


ハッキリと言うサツキに、マサオは表情を暗くする。

だが、一息つき、サツキは続けた。


「まっ、しょうがねえ。引き分けになっちまったもんはな。何しろ相手のバックにはあの"人類最強"がついてるみたいだしな」


「"真紅の龍騎士"が…?それはまたすごい人が出てきましたね」


マサオも名ぐらいは聞いたことがあるのだろう。
プロンテラ騎士団最強にして、その強さの右に出るものはこの人類にはいないとされる女騎士、ジル=フィザットのことを。


バキバキ!


サツキはその指を鳴らし、笑みを浮かべる。


「……おもしれえよなぁ。一度は戦ってみてえもんだぜ……」


マサオは嬉しそうなサツキの表情に、ゴクリと生唾を飲み込む。


「…人類最強対オーバージェネティック、ですか……そんなの実現したらどうなるんすか…?」


想像も出来ない戦いが、そこには待ち受けているかもしれない。

だが、誰もが思うだろう。

実現できるのなら、"見てみたい"と。


「案外すぐかもな。そんな話も……」



サツキは笑っていた。

この上なく、不敵に。











ワアアアアアアアアアアアッ!!


闘技場は再び熱気に包まれていた。


『一回戦の試合が全て終了致しました!会場は物凄い熱気に包まれております!観客の皆様は次の対戦まで今しばらくお待ちください!』


『一回戦はどれもすごかったですね。二回戦で誰が勝ち上がるのか、私も全く予想できません』


神咲の実況と共に、アヘンが解説を進める。


「さてと、残った選手はっと…」


ダズは手元の参加者表を見、二回戦に出場が決まった選手達を見定め始めた。


一人目、竹屋商会社長の兄貴分と言われる、本名を伏せた謎の騎士、アニキ。


「この人はすごい力だったな……私や、下手をしたらジルさん以上かもしれない」


その彼の対戦相手を見やる。

このパワーを打ち砕く術があるとしたら、速さを極めたもの、もしくは強固な防御力を持ったものか、その二択となろう。


「…"ツカサ"……この人は確か……」


ダズはその選手の試合を思い出した。

彼は恐ろしいことに、相手に"
参った"と言わせ続けて勝利をしている。


その理由とは、


「相手の攻撃を全て受けて尚……平然と立っていた人か…」


そう、相手が全ての技を出し切り、それでも通用しなかったことから、降参を選択させたという恐ろしい耐久力を見せつけた選手である。


「……確かに、全力の攻撃をしても相手が無傷だったら、私でも降参したくなりそうだな……」



人外の攻撃力を持つ者。

人外の防御力を持つ者。

果たして最後に立ち、勝利するのはどちらなのか。


彼らのこれまでの試合からでは、結果を想像するに至らなかった。















「ちょっとあなた!聞いてますの!?」


ファルシオンは、黙しながらも気だるそうな表情を浮かべていた。

先程から、横で何やら叫ぶ女の姿があったからだ。


しかも、その矛先が自分に向けられているのだから尚更である。


シカトを決め込むファルシオンを前にし、女は更に声を荒げた。


「妾(わらわ)はあなたの次の対戦相手なのですよ!?よくそんな余裕を見せた態度でいられますわね…!」


女の身なりは、セージやプロフェッサーの上位職にあたる"ソーサラー"。

頭の上で、黒い帽子に小さなドクロのアクセサリーがアクセントとしてつけられた"スカルキャップ"を揺らし、女は更に声を荒げる。


ファルシオンも分かってはいた。
この女が自分の次の対戦相手であることを。

しかし、先程相対した東雲春以上によく喋る姿を前にしては、彼の性格からして面倒以外の何ものでもなかったのだろう。


「…くっ!試合で後悔すると良いですわ!妾の魔法の前にひれ伏しなさい!」


捨て台詞のように言葉を吐き、女はファルシオンの前から立ち去った。


「…………」


女の気配が消えたことを確認し、ファルシオンは小さく溜め息をついた。


「……まったく、やかましい女だ……というか、名ぐらい名乗っていったらどうなんだ…?」


相手が名乗らなかったことから、ファルシオンは仕方なく配られていた選手一覧表を見た。

いくら興味がないとは言え、次の対戦相手である。
見ておいても損はないと思ったのだろう。


「……何だこれは…?またおかしな名前だな……」


彼が目にした名前に目立つように載せられた漢字があった。

特徴的と言えばそうなのかもしれない。



"涼風涼"。


ファルシオンは、ゲフェンのような魔法都市の出身であるが故、アマツや龍之城のような国の違う言葉には疎いという自覚はあった。


「スズカゼ…リョウ、か……。逆から読んでも同じ、ということだな……」



彼はこの時気付きもしなかっただろう。


その名の特徴こそが、彼女の"能力"と関係があるということに。

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