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コンロン地下闘技場編10

もはや何も言うまい。



続きは小説です。



ドガアアアアアアァァァンッッ!!


アニキの手にするグロリアススピアから、再びストームブラストが放たれる。

ツサカはそれを正面から受け止め、その場から一歩も動こうとしない。


もはや観客席の半分以上は吹き飛び、避難を始める者も出始めている。


「……このままいくと、どうなると思いますか?ジルさん」


ダズの問いに、ジルは数秒の間を置き、口を開いた。


「あのツサカという男も徐々に疲弊してきているな。逆に、アニキのほうはルーンの力を借りている以上、反動は少ないと見ていい」


「じゃあ、このままいけば、先に倒れるのはツカサさんのほうだと…?」


少なからずダメージを受けている以上、蓄積した力がやがてツカサを押し潰すことになるのだろうか。

しかし、ジルは首を縦に振ろうとはしなかった。


「いや……ストームブラストは数に制限がある。ルーンの力が膨大すぎるため、所持量を一定以内に収めなくてはならないからだ」


そう、ルーンには回数制限がある。
それを無視することは出来ない。

彼が最初に瓢箪から取り出したルーンストーンは多く見積もっても"20個程度"である。


「…その20発を防ぎ切ればツカサさんの勝ち……それまでに倒れれば、アニキさんの勝ち、と」


「そういうことになるな……だが、本来なら一発食らっただけでも即死級だ。それを20発も受けるなど……到底考えられんな」


ジルの言葉は尤もだった。
この威力を武器や盾で防ぐ事もなく凌ぐことは不可能に近い。



ドガガガアアアアァァンッ!!


そう言っている間にも、アニキは立て続けにストームブラストを放ち続けている。


「クソォッ!まだ倒れねえのかぁ!?」


ドガアアアアァァンッ!!


既に10発近くの攻撃を撃ち込んでいるにも関わらず、ツカサは未だ地に足をついている。


「ハァッ…ハァッ…!まだ、だ…まだ耐えられる…!」


だが、彼も息を切らし始めていた。


観客は戦慄し、静かに勝負の行方を見守っている。
闘技場は静かだった。


ドガアアアアアァァァンッ!!


アニキが攻撃を放つ音だけが響き渡るほどに。



しかし、少しずつ変化が現れ始めた。




「……が、がんばれ…!」


観客の一人が、声援を送った。

その人物の声は、静かだった闘技場に反響するように大きく響き渡った。


「…がんばれ!アニキ!!」


「ツカサー!負けるなぁー!」


正々堂々とした勝負を繰り広げる二人に、彼等の心は大きく動かされる。


「やっちまええー!アニキイイィー!!」


「諦めるなツカサアアァー!!」


やがて観客達が一つになるように、二人の戦士に大きな声援を送る。


『見てくださいアヘンさん!今、会場が一体となって彼等を応援しています!』


『素晴らしいです。皆がこの戦いに心を動かされ、気持ちが一つになろうとしているんですね』


実況席の二人も同じく、興奮を押さえられないのだろう。



「コノヤロ!コノヤロォ!」


ドドオオオォォンッ!!


「ウオオオッ…!!」


アニキが攻撃し、ツカサが護る。

単純であり、かつ奥深いこの戦い。
終焉の時が、少しずつ近づいていった。



何度目だろうか。

幾度となく続けられたその攻防に終止符を打ったのは、やはり



スッ


「……へっ……弾切れだぁ……」


アニキのほうだった。

彼は構えを解き、剣を下げる。
その表情はどこか清々しく、大業を成し遂げたように満足気だった。


誰もがツカサの勝利を確信した。

その時、



ズザッ!


直後、砂利にまみれた闘技場の真ん中に、膝をつく者がいた。


「……どうやらこちらも……限界の、ようだ……」


ボロボロになった甲冑を身に纏った、ツカサ本人である。


ドサッ!


彼は朦朧とする意識の中で膝を付き、その後己が敗北を悟ったように崩れ去った。



『こ、これは……立っているのはアニキ選手ですが…』


『難しいですね……ですが、ここは己の技を出し切ったとは言え、倒れたのはツカサ選手ですから、アニキ選手の…』






「ちょっと待てやコラァッ!!」



神咲の言葉に答えようとしたアヘンの声を、怒声をあげて制止する者がいた。
彼は言葉を続ける。



「引き分けだぁ。俺も余力なんざ残ってねえんだよ」


カランッ!


アニキは槍を地に落とした。

それが事実なのかどうかはわからない。
だが、力を使い果たしたとはいえ、相手は地に倒れ伏しているのだ。

例え偽りだとしても、己が勝利を周りが認めてくれるのを待てばいい。
自分が武器を振ることも出来ない程だと、気づかせなければいいだけなのだ。



だが、彼はそうしなかった。



ガシッ!


アニキは、倒れるツカサの腕を掴み、自分の肩へと回し、担ぐように持ち上げた。

そして実況席、観客席を見渡し大きく叫んだ。



「オラァッ!選手退場だぞ!?声援を送らねえかあ!!」





ワアアアアアアアアアアァァァッッ!!!


次の瞬間、かつてないほどの声援が二人に向けられた。


己のプライドを賭けて、全力の力を出し尽くした者。
己のプライドを賭けて、全力でその身を護り抜いた者。

男と男の、意地を賭けたぶつかり合いは、引き分けに終わったのだ。


互いを認め合う、友情を育みながら。




『おおお…!これぞ男同士の戦いから芽生える友情なのですね…!私も感動で涙が出てきそうです!!』


『本当に素晴らしい……彼等は己がプライドを貫き通し、更に互いを認め合ったのです。これ以上求めるものなどありません…!』


神咲は瞳に涙を溜め、アヘンも感動に心を揺らしている。



「………よかったのか…?俺は君の攻撃に耐えきれなくて…」


「…ヘッ!20発も俺のストームブラストを食らっといて、謙遜してんじゃねえぞぉ?」


うなだれながら、アニキに肩を担がれながら歩くツカサは、小さくアニキに語りかけた。

しかし、アニキは彼を全く卑下しなかった。


「俺の勝ちでもあり、お前の勝ちでもある!そんな勝負があってもいいじゃねぇか。俺は満足してるぜぇ?」


「………ふっ…そうか……ありがとう…」


誰もが彼等を評価し、認め、称賛する。


決着はついた。
二人の勝利という形で。













「つーかーさーく~ん?」


バッ!


ツカサは勢い良く顔をあげた。


この闘技場内で、"一人だけ違う顔をした者がいた"。


喜び、怒り、哀しみ。
全てを混ぜ合わせたような、不気味な表情で、



「あ……あっ……」


「仕事に行くって言ってたのに…こんなところで何をしているのかな?」


一人の女が、ツカサの前に立っていた。

ツカサは口を閉じるのも忘れるほどに驚愕し、表情を青ざめさせていく。


誰が見てもわかる。

彼は恐怖していた。



「今度ばっかりは……」


「ま、待て"ぶち"!これにはちゃんとした訳が…!」


ツカサは自分が疲弊していたのも忘れるほどに、慌てふためいた。



「許さない」


ニコッ


彼女は手の平をゆっくりと頭上に掲げた。

それが何を示しているかは、すぐにわかった。



ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


この闘技場は地下に存在する。

つまり、天井から地上までは、分厚い岩盤に覆われており、日の光は差し込まない。


だが、



『……ど、どういうことでしょう……』


『わ、私にもわかりませんが……誰かが"魔法"を…?』


不穏な気配を感じ取り、神咲とアヘンはすぐにその異変を目の当たりにした。


ザワザワ


観客達は声援を止め、一斉に頭上を見た。



そう、そこからは、



「た、太陽の……光…?」


ツカサはそれを見、理解した。
次に何が起こるのかを。



シュイイイイィィンッ!


次の瞬間、闘技場全体が"巨大な魔法陣に包まれた"。



ドドドドドドドドドッ!!


轟音と共に、地上へと繋がった穴の向こうから、何かが振り注ごうとしている。


隕石。
いや、違う。

メテオストームにしては数があまりにも多過ぎる。

いかに強大な術者であれ、これ程までに巨大な魔法陣を持ったメテオストームは唱えられない。


「あれは……」


「…"コメット"、だな」


同じく頭上を見上げていたダズとジルも、その流星群を捉えた。



「クッソォッ…!」


フォンッ!


ツカサは無念を顕に、スキルを放った。

光の紐、それはクルセイダー系が他者のダメージを請け負うための献身。
"ディボーション"である。


それも、一本や二本ではない。
この会場に存在すら"全ての人に対して"。


それらのダメージを全て請け負うとするのなら、既に疲弊している彼に待つのは、死だけである。













「さぁて、大変なことになったなぁ」


腰に手を当て、満面の笑みを浮かべるのは、オーバージェネティック、サツキ。


「………(よく言うよ、ぶちさんにチクったのお前だろ……)」


「あ?何か言ったか"マコ"?」


その横に立つ男。
サツキの相方の一人にして、オーバーメカニックと呼ばれた者。

瀬戸誠である。



「いいや、なんでも……とにかく、あれを全部撃ち落とせばいいんだな?」


「おう、話がわかるじゃねえか。いくぜ、マコ!」


ブオオッ!


サツキは靴に取り付けたバーナーのスイッチを入れ、カートブーストと共に地を蹴った。


「……はいはい、わかったよ。サツキ」


ガシャンッ!


誠は片腕に散弾銃、ロボットの腕であるショットガンを取り付け、サツキの後を追った。



"女神遊戯/ヴィーナスレクイエム"。
"炸薬交響曲/ショットガンインパルス"。

神と鋼の力を借りた二人が、この地に舞い降りた。














「さて、私達も行きますよジルさん!」


サツキと誠が動き始めたのを確認し、ダズは声を張り上げた。


「なんだか楽しそうだな……まあ、こうなってしまったものは仕方ない。行くとするか」


シャンッ!


やれやれという表情で、腰の剣を引き抜き、ジルも立ち上がった。


「なんだかんだ言って、ジルさんやる気じゃないですか。じゃあ……私も!」


ギンッ!


再び目を開いたダズの瞳は、黒と金。

"魔眼の死神/イービルアイ=デスサイズ"。
魔王バフォメットと契約した彼女は、その力を借り、召喚したクレセントサイダーを手に駆け出した。


「……ドラゴン、乗ってくればよかったな……」


勿体無いことをしたというように呟くジル。

彼女は"人類最強"と唄われたプロンテラの騎士。

"真紅の龍騎士/スカーレットリンドブルム"。
ドラゴンに乗らずとも、その力の底は計り知れない。


人の頂点に立つ者。
魔族の力を使う者。


ここに先の二人を含めた四人の人外が揃い、放たれた流星群を撃ち落とさんとしていた。
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