コンロン地下闘技場編11
りょさんの知り合いの誠道さんという方から、詠唱文をお借りしました。
これからところどころ登場させていきたいと思います。
続きは小説です。
『雲海の彼方より彼の者は現れる
其の尾は星を払う爪
其の身は星を薙ぐ刃
星を砕く星よ
仄暗く瞬く凶ツ星よ
破滅の足音を引き連れて
来るぞ、喉笛を搔き切りに
"コメット"』
会場内は最早パニックとなっていた。
人々は逃げ惑い、助けを求めている。
「キャアアアーッ!」
先に放たれたコメットの一つが、逃げ遅れた子供達の頭上に迫っていた。
それはマザー=マリサに連れられて来た孤児院の子供だった。
「クッ!」
ダンッ!
一人の男が駆け出し、子供達を庇うように間に入った。
彼の名はファルシオン。
自分が育った場所、その孤児院に現在もいる子供達は自分の兄弟も同然である。
動かずにはいられなかったのだろう。
「クソッ…!逃げ場がない…!?」
一人ならば何とかなろう。
しかし、誰かを、ましてや小さな子供達を護りながら対峙するには、あまりにも相手の隕石が強大過ぎた。
「ハアアアアァァッ!!」
ズオオオオォッ!
次の瞬間、隕石の横から一人の女が現れ、掛け声と共に隕石を殴りつけるように吹き飛ばした。
「何をしているんですの!?早くその子達を連れてお逃げなさい!!」
彼女の顔に、ファルシオンは見憶えがあった。
そう、先程自分に話しかけて来た、ソーサラーの涼風涼である。
彼女は、片手に魔法力を集中させたスペルフィストを隕石にぶつけたのだ。
「か、勘違いしないでください!あなたに倒れられては、次の妾の試合が出来なくて困るんですのよ!」
「……すまん…!恩に着る!」
ファルシオンは子供達を連れ、直ぐさまこの場から退避した。
一人となった涼は、迫り来る流星群を前に笑みを浮かべた。
「さあ!どこかの"ツインスペルフィスト"とかいう欠陥魔法との違いを見せて差し上げますわ!」
それがシュバルツバルド共和国、セージキャッスルの学長を務めるアリルのことをさしているのは明らかだった。
涼の手に風を纏った魔法力が展開される。
"表裏虐殺/リバースカルネージ"
彼女の魔法に、表や裏などという概念は存在しない。
「羅刹覇王撃ィッ!!」
ドドドドドドドンッ!!
マサオの拳から放たれた連弾が、隕石とぶつかり合う。
「くそっ!やっぱり粉々にするのは難しいか……っ!?」
ズオオオオオッ!!
降り注ぐ砕かれた岩を、粉砕するように飛び交う炎があった。
それは魔法や衝撃波ではない。
「大丈夫か!?マサオ氏!」
それは、空中を飛翔するケビン自身だった。
「へへっ!大きなお世話だぜケビン!」
好敵手であった者の再来に、マサオは悪態をつきながらも顔をほころばせる。
「ジルさんと一緒に考えた技!今こそ使うときだ!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ!
二人の頭上から、一際大きな隕石が落下してくる。
ケビンは手にした紅炎のツインエッジを前に、"魔法を詠唱した"。
「いっけえぇ!メテオストーム!!」
ドガアアァンッ!
そこから放たれたのは、目には目を、隕石には隕石を、下から上へと上昇するように放たれたメテオストームだった。
隕石同氏はぶつかり合い、細かく砕かれていく。
ダンッ!
「これが本当の…昇龍豪炎だぁ!」
ズオオオオオッ!
ケビンは降り注ぐ隕石を蹴り飛ばし、空中を飛翔しながら次の対象へと、凄まじい速度で破砕していった。
ケビンの見せる新しい技に、マサオは武者震いを隠せなかった。
「…やるじゃねえかケビン!私も負けてられないな!」
ドォンッ!
言葉と共に、マサオは潜龍昇天をし、爆裂波動状態に移行した。
龍と虎はここで再び相まみえ、共闘の産声をあげるように、宙を飛び交った。
「オラアァッ!!」
ドゴォッ!
サツキはカートブーストの勢いに任せて壁を蹴り、隕石をその拳や足で破砕して回っていた。
小細工は弄さない。
己の持つ力のみを行使する姿は、まさに戦闘神と呼ばれる由縁であると言えよう。
ドォンッ!ドォンッ!
サツキが砕き切れなかった(もしくはワザと砕き切らなかった)破片を、下から誠が手にしたショットガンで粉砕していく。
息のあったコンビネーションであり、それをコンタクト無しにやり遂げられる二人をそこに垣間見ることが出来る。
しかし、
「おぉ…!?」
「何だあれは……今までのと大きさのレベルが違う…!?」
闘技場の上に大きく空いた穴を埋め尽くすかの如く、巨大な隕石が落下を始めたのだ。
「これで締めにする気か…!?マコ!全弾撃ち込め!!」
「わかってるッ!!」
ガシャン!
サツキの言葉が言い終わるのが早いか、誠は直ぐさまリロードをし、銃口を天へと向けた。
「その必要はないですよ」
それは突然現れた。
手にした大きな鎌は、まるで死神を象徴するかのような輝きを放っている。
「おいおい、おいしいところ持っていく気か?ダズ」
「そんなつもりもありません…よっと!」
フォン!フォン!
からかうサツキを横目に、ダズは真上に向けて真空波ソニックウェーブを二発放った。
ザシュウウゥッ!!
十字を描くようにクロスした斬撃が、巨大な隕石を引き裂き、四分割に吹き飛ばす。
「すごい…!たった二発で割れるのか!?」
誠は心底驚いた声をあげたが、正直そんなものは序の口だと、彼も心のどこかでわかってはいたことだろう。
自分の周りには、サツキを含めこんな連中がゴロゴロいるのだから。
「お願いします!ジルさん!!」
ダズは振り返り、真紅の長髪を兜から靡かせる女騎士を見た。
彼女、ジル=フィザットも、誠が考える中でトップクラスの人外である。
「……手加減はせんぞ!纏めて破壊する!!」
「げぇ!?皆逃げましょう!"巻き込まれる"!!」
ゴオオオオオオォォォッ!!
ダズは、サツキと誠に退避を促し、自身も一目散に走り出した。
ジルの手にした剣が炎に包まれ、周囲に突風を巻き起こす。
ビリビリッ!
ダズが駆け出した後、残った二人が考えるより先に足を動かすまでの時間、僅か2秒。
それ程までに、"あり得ない"のだ。
この人類最強は。
「イグニッション…!!」
構えは、下段。
標的は、四つに砕かれた隕石"全て"。
放たれるのは、地獄の業火も生温い程の衝撃。
「ブレエエエエエエエイクッ!!」
ドゴオオオオオオオオオオォォンンッッ!!!
先程ジルは言った。
アニキの放ったストームブラストは、この闘技場すら吹き飛ばしかねないと。
その言葉に、ダズも納得した。
彼の力は自分達並にあるのではないかと。
それを今、全力で訂正したいと考えた。
この女は、"街ごと吹き飛ばしかねない"。
ゲームで例えるなら、マップ兵器。
過去に出会ったどんなモンスターの一撃よりも強力で、圧倒的に、絶対的に、周囲に塵一つすら残さないほどの破壊の咆哮が、一人の人間から放たれた。
ドガガガガアアアアアァァァンンッッ!!
ジルの放ったイグニッションブレイクは、巨大な隕石をまるで飲み込むかのように焼き尽くす。
止まらぬ炎は地上へと突き抜け、コンロンの街に火柱を上げた。
「……もうあいつ一人でいいんじゃねえか…?」
「「……………」」
サツキの言葉に、ダズと誠は無言の肯定を表した。
最も彼女の近くにいた三人は、闘技場の観客席であった場所まで吹き飛ばされている。
「本当に常識じゃ考えられないな、あの人は……」
「……戦争の時より更に強くなってんじゃねえか?」
恐らく、サツキの考えに間違いはない。
三国戦争時に人類最強を目指した者が、その名を世界に知らしめるほどになったのだから。
「まあ、だからこそ俺は楽しみでしょうがないんだがな…」
「……?サツキさん…?」
サツキが笑みを浮かべる意味が、ダズにはわからなかった。
倒れる男を前に、女は言った。
「これで少しは懲りたかな?」
倒れる男、ツカサはそれに反応することが出来ない。
するほどの余力すら、今は残っていないのだから。
「じゃあ、今日は帰るから」
淡々した口調で、言い終えるや否や、その場から立ち去る。
「ちゃんと"優勝"してくるんだよ」
女はそう言い残し、ツカサの前から姿を消した。
(………優…勝……?)
彼女の言葉が、その一つの単語が、頭の中で引っ掛かる。
(…でも……俺はもう負け…て……)
彼の思考はそこで止まり、意識は途絶えた。
崩壊したコンロン地下闘技場だけが後に残り、深々とつけられた傷跡は決して見逃せぬものではなかった。
これからところどころ登場させていきたいと思います。
続きは小説です。
『雲海の彼方より彼の者は現れる
其の尾は星を払う爪
其の身は星を薙ぐ刃
星を砕く星よ
仄暗く瞬く凶ツ星よ
破滅の足音を引き連れて
来るぞ、喉笛を搔き切りに
"コメット"』
会場内は最早パニックとなっていた。
人々は逃げ惑い、助けを求めている。
「キャアアアーッ!」
先に放たれたコメットの一つが、逃げ遅れた子供達の頭上に迫っていた。
それはマザー=マリサに連れられて来た孤児院の子供だった。
「クッ!」
ダンッ!
一人の男が駆け出し、子供達を庇うように間に入った。
彼の名はファルシオン。
自分が育った場所、その孤児院に現在もいる子供達は自分の兄弟も同然である。
動かずにはいられなかったのだろう。
「クソッ…!逃げ場がない…!?」
一人ならば何とかなろう。
しかし、誰かを、ましてや小さな子供達を護りながら対峙するには、あまりにも相手の隕石が強大過ぎた。
「ハアアアアァァッ!!」
ズオオオオォッ!
次の瞬間、隕石の横から一人の女が現れ、掛け声と共に隕石を殴りつけるように吹き飛ばした。
「何をしているんですの!?早くその子達を連れてお逃げなさい!!」
彼女の顔に、ファルシオンは見憶えがあった。
そう、先程自分に話しかけて来た、ソーサラーの涼風涼である。
彼女は、片手に魔法力を集中させたスペルフィストを隕石にぶつけたのだ。
「か、勘違いしないでください!あなたに倒れられては、次の妾の試合が出来なくて困るんですのよ!」
「……すまん…!恩に着る!」
ファルシオンは子供達を連れ、直ぐさまこの場から退避した。
一人となった涼は、迫り来る流星群を前に笑みを浮かべた。
「さあ!どこかの"ツインスペルフィスト"とかいう欠陥魔法との違いを見せて差し上げますわ!」
それがシュバルツバルド共和国、セージキャッスルの学長を務めるアリルのことをさしているのは明らかだった。
涼の手に風を纏った魔法力が展開される。
"表裏虐殺/リバースカルネージ"
彼女の魔法に、表や裏などという概念は存在しない。
「羅刹覇王撃ィッ!!」
ドドドドドドドンッ!!
マサオの拳から放たれた連弾が、隕石とぶつかり合う。
「くそっ!やっぱり粉々にするのは難しいか……っ!?」
ズオオオオオッ!!
降り注ぐ砕かれた岩を、粉砕するように飛び交う炎があった。
それは魔法や衝撃波ではない。
「大丈夫か!?マサオ氏!」
それは、空中を飛翔するケビン自身だった。
「へへっ!大きなお世話だぜケビン!」
好敵手であった者の再来に、マサオは悪態をつきながらも顔をほころばせる。
「ジルさんと一緒に考えた技!今こそ使うときだ!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ!
二人の頭上から、一際大きな隕石が落下してくる。
ケビンは手にした紅炎のツインエッジを前に、"魔法を詠唱した"。
「いっけえぇ!メテオストーム!!」
ドガアアァンッ!
そこから放たれたのは、目には目を、隕石には隕石を、下から上へと上昇するように放たれたメテオストームだった。
隕石同氏はぶつかり合い、細かく砕かれていく。
ダンッ!
「これが本当の…昇龍豪炎だぁ!」
ズオオオオオッ!
ケビンは降り注ぐ隕石を蹴り飛ばし、空中を飛翔しながら次の対象へと、凄まじい速度で破砕していった。
ケビンの見せる新しい技に、マサオは武者震いを隠せなかった。
「…やるじゃねえかケビン!私も負けてられないな!」
ドォンッ!
言葉と共に、マサオは潜龍昇天をし、爆裂波動状態に移行した。
龍と虎はここで再び相まみえ、共闘の産声をあげるように、宙を飛び交った。
「オラアァッ!!」
ドゴォッ!
サツキはカートブーストの勢いに任せて壁を蹴り、隕石をその拳や足で破砕して回っていた。
小細工は弄さない。
己の持つ力のみを行使する姿は、まさに戦闘神と呼ばれる由縁であると言えよう。
ドォンッ!ドォンッ!
サツキが砕き切れなかった(もしくはワザと砕き切らなかった)破片を、下から誠が手にしたショットガンで粉砕していく。
息のあったコンビネーションであり、それをコンタクト無しにやり遂げられる二人をそこに垣間見ることが出来る。
しかし、
「おぉ…!?」
「何だあれは……今までのと大きさのレベルが違う…!?」
闘技場の上に大きく空いた穴を埋め尽くすかの如く、巨大な隕石が落下を始めたのだ。
「これで締めにする気か…!?マコ!全弾撃ち込め!!」
「わかってるッ!!」
ガシャン!
サツキの言葉が言い終わるのが早いか、誠は直ぐさまリロードをし、銃口を天へと向けた。
「その必要はないですよ」
それは突然現れた。
手にした大きな鎌は、まるで死神を象徴するかのような輝きを放っている。
「おいおい、おいしいところ持っていく気か?ダズ」
「そんなつもりもありません…よっと!」
フォン!フォン!
からかうサツキを横目に、ダズは真上に向けて真空波ソニックウェーブを二発放った。
ザシュウウゥッ!!
十字を描くようにクロスした斬撃が、巨大な隕石を引き裂き、四分割に吹き飛ばす。
「すごい…!たった二発で割れるのか!?」
誠は心底驚いた声をあげたが、正直そんなものは序の口だと、彼も心のどこかでわかってはいたことだろう。
自分の周りには、サツキを含めこんな連中がゴロゴロいるのだから。
「お願いします!ジルさん!!」
ダズは振り返り、真紅の長髪を兜から靡かせる女騎士を見た。
彼女、ジル=フィザットも、誠が考える中でトップクラスの人外である。
「……手加減はせんぞ!纏めて破壊する!!」
「げぇ!?皆逃げましょう!"巻き込まれる"!!」
ゴオオオオオオォォォッ!!
ダズは、サツキと誠に退避を促し、自身も一目散に走り出した。
ジルの手にした剣が炎に包まれ、周囲に突風を巻き起こす。
ビリビリッ!
ダズが駆け出した後、残った二人が考えるより先に足を動かすまでの時間、僅か2秒。
それ程までに、"あり得ない"のだ。
この人類最強は。
「イグニッション…!!」
構えは、下段。
標的は、四つに砕かれた隕石"全て"。
放たれるのは、地獄の業火も生温い程の衝撃。
「ブレエエエエエエエイクッ!!」
ドゴオオオオオオオオオオォォンンッッ!!!
先程ジルは言った。
アニキの放ったストームブラストは、この闘技場すら吹き飛ばしかねないと。
その言葉に、ダズも納得した。
彼の力は自分達並にあるのではないかと。
それを今、全力で訂正したいと考えた。
この女は、"街ごと吹き飛ばしかねない"。
ゲームで例えるなら、マップ兵器。
過去に出会ったどんなモンスターの一撃よりも強力で、圧倒的に、絶対的に、周囲に塵一つすら残さないほどの破壊の咆哮が、一人の人間から放たれた。
ドガガガガアアアアアァァァンンッッ!!
ジルの放ったイグニッションブレイクは、巨大な隕石をまるで飲み込むかのように焼き尽くす。
止まらぬ炎は地上へと突き抜け、コンロンの街に火柱を上げた。
「……もうあいつ一人でいいんじゃねえか…?」
「「……………」」
サツキの言葉に、ダズと誠は無言の肯定を表した。
最も彼女の近くにいた三人は、闘技場の観客席であった場所まで吹き飛ばされている。
「本当に常識じゃ考えられないな、あの人は……」
「……戦争の時より更に強くなってんじゃねえか?」
恐らく、サツキの考えに間違いはない。
三国戦争時に人類最強を目指した者が、その名を世界に知らしめるほどになったのだから。
「まあ、だからこそ俺は楽しみでしょうがないんだがな…」
「……?サツキさん…?」
サツキが笑みを浮かべる意味が、ダズにはわからなかった。
倒れる男を前に、女は言った。
「これで少しは懲りたかな?」
倒れる男、ツカサはそれに反応することが出来ない。
するほどの余力すら、今は残っていないのだから。
「じゃあ、今日は帰るから」
淡々した口調で、言い終えるや否や、その場から立ち去る。
「ちゃんと"優勝"してくるんだよ」
女はそう言い残し、ツカサの前から姿を消した。
(………優…勝……?)
彼女の言葉が、その一つの単語が、頭の中で引っ掛かる。
(…でも……俺はもう負け…て……)
彼の思考はそこで止まり、意識は途絶えた。
崩壊したコンロン地下闘技場だけが後に残り、深々とつけられた傷跡は決して見逃せぬものではなかった。
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