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コンロン地下闘技場編13

涼さんvsファルさんの始まり始まり。



続きは小説です。



「誰かペアを見つけろって言われてもなぁ……」


マサオは一人呟きながら、会場内を歩いていた。


「サツキさんとマコちゃんは組むって言うし」


ふと闘技場の壊れた地面や壁をせっせと修復中の誠に視線を向けた。

運営スタッフがその補佐に当たっているが、どうやら手が回らないらしい。


「くそっ!サツキのやつふざけやがって…!」


(…………マコちゃん、南無……)


誠が怒声をあげながら作業を続けている。
何だかんだと言ってもサツキの指示に従っている彼に、心の中で合掌を送りつつ、マサオはその場を後にした。



「おおおおーい!マサオ氏ぃー!」


「……この声は…?」


耳に残る甲高い声に聞き覚えを感じつつ、マサオは振り返った。

予想通り、そこには自分の対戦相手だったケビン=コスギの姿があった。


マサオの前で立ち止まったケビンは、勢いよく頭を下げた。



「頼む!ワシと一緒にタッグを組んでくれんか!?」


彼女が前に現れたときに、マサオは何かを感じ取っていた。

そしてその言葉を聞き、自分の中で眠っていた何かが目覚めるのを確信した。


「……私の相方が簡単に務まると思うなよ、ケビン。足引っ張ったら置いていくからな?」


マサオの言葉に、ケビンは再び勢いよく頭を上げ、顔を綻ばせた。


「……おう!よろしくなマサオ氏!」


ガッ!


二人は拳を前に突き出し、微笑みあった。



龍虎の拳が重なり合い、伝説の獣に例えられし二人の戦士が、今共闘の産声をあげる。




















ザワザワ……


会場内は騒ついていた。
それもそのはずである。

世界に名を轟かせる者達を一度に何人も、更にその戦う姿まで目にすることが出来るのだから。

会場には噂を聞きつけ、戻ってくる観客の姿まである。



「ハァッ…ハァッ…!なんとか…最低限の修復は出来たな…!」


膝に手を当て、前屈みに肩で息をする瀬戸誠。
どうやら彼のおかげで、張りぼてではあるが闘技場の円形の壁が出来上がり、なんとか戦いのフィールドとして機能しそうである。


「おーっす、お疲れマコ」


「……………」


涼しい顔で現れた相方、サツキに対し、誠は無言で睨みをきかせた。


「そんな顔すんなよ。修繕費は大会の賞金山分けってことで」


「……いや、まだ優勝できると決まった訳じゃないだろ…?」


「そん時はプロンテラに請求するさ」


このオーバージェネティック、怖い物知らずである。

誠は呆れながら、フラフラした足取りで観客席に向かった。



そう、次の試合はファルシオンvs涼風涼。

タッグマッチの前に設けられた、唯一正規の試合である。




『皆様、大変長らくお待たせしました!コンロン地下闘技場大会を再開いたします!!』


ワアアアアアアアアアアアアァァァッッ!!


大きな歓声が闘技場を包み込み、皆が再開に歓喜している。


闘技スペースに二人が入場し、対戦位置についた。


『いやー、一時はどうなるかと思いましたが、無事に再開できてよかったですね。アヘンさん』


『はい、本当に嬉しい限りです。しかも、これ程までに素晴らしい選手達が集まっているのです。盛り上がりは間違いなく過去最大級でしょう』


『間違いないですねぇ。では、タッグマッチの前に両者の希望により成立した正規の試合を行います』


ザッ!


両者が向かい合い、互いを視認する。

ファルシオンは先程とうって変わり、先に口を開いた。


「子供達を護ってくれたことには感謝している。お前が希望するならばこの試合は受けて立とう。だが…」


「"手加減はしない"、と仰るんですか?」


涼はその言葉が言い終わる前に、挑発的な態度で応えた。


「……舐められたものですわ。あなた、特殊な能力をお持ちのようですが、あまりそれを過信し過ぎないことですわね」


凛とした態度で、更にファルシオンを煽る。




そんな彼等とは裏腹に、会場内はざわつきを止めない。
観客達はまるでこの試合に興味が無いとでも言うように。


それらにとって、二人の戦いはタッグマッチの前の前座でしかないと思われているのだろう。


涼は会場内を見渡し、溜め息をついた。


「本当に…どこまでも舐められたものですわ。この試合の……妾の戦いに全く感心が無いなんて……ふざけていますわね」


「……その通りだ。すぐに決着をつけてやる。後が押しているんでな」



カチン


ファルシオンのその言葉は、涼の頭に何かのスイッチを入れたようだ。


「……その言葉……そっくりそのままお返ししますわ……」


ゴゴゴゴゴッ


とてつもない覇気が涼を包み込み、その表情は怒りに震えている。





『それでは……試合開始です!!』


ジャアアアアアァンッ!!


待ち兼ねた開始のドラが叩かれた。


シュインッ!


宣言通り動くべく、ファルシオンは速度増加スキルを発動し、地を蹴った。


「"我と共に在るは精霊の風  悠久の時と成りて  彼の者を封じ込める檻と化せ!"  バキュームエクストリームッ!!」


ゴオオオオッ!


移動速度が上昇し、一気に距離を詰めようとするファルシオンを足止めさせるべく、彼を竜巻に閉じ込めんとした。


「遅いッ!!」


ダンッ!


ファルシオンは竜巻の発生場所を予測し、大回りにそれを回避する。

その数秒のうちに、涼は次の魔法の詠唱を完成させていた。


「近付かせませんわ。ファイアーウォールッ!!」


ドドオオオォンッ!!


突如涼の前方に巨大な炎の壁が現れ、行く手を阻む。


バッ!


対するファルシオンは後方に数歩分下がり、炎の壁を前に魔法の詠唱を開始する。



「"裏切り者の墓標  嘆きの川の流れ  終焉たる雫  白を染める白……"」


「なっ…!そんなものまで使えますの!?」


ババッ!


涼はファルシオンの詠唱を確認し、それがウィザード系の得意とするストームガストの詠唱であると理解した。
ファイアーウォールの天敵である水属性の魔法は、用意にそれを鎮火させるであろう。


すぐさまそれに対抗すべく、涼も詠唱を開始する。

だが、その完成はファルシオンのほうが一歩早かった。


「"虎狼の咆哮  凍てつく風を纏いし娘の舞踏  輝き散りて氷雪となれ!"  ストームガストォッ!!」


ビュオオオオオォォッ!!


凍て付く吹雪が巻き起こり、炎の壁と衝突する。

ストームガストの冷気が、徐々にファイアーウォールの威力を弱め、消し去っていく。



「…ぬっ!」


だが、炎の壁の向こうにいる涼は、既に詠唱を完成させつつあった。


「"氷晶の槍  凍て付く大気の蜿  陽光に輝きし開眼  数多の昇華と共に姿を現す  幻影の刃となれ!"  ダイヤモンドダストッ!!」


ドドドドドドドドッ!!


涼の手から、凄まじい数の氷柱が吹雪と共に放たれる。

一つ一つが騎士の扱う槍のような鋭さを持った凶器が、ストームガストを打ち消すように空中を飛翔し、ファルシオンに襲いかかった。


「チッ…!」


ヒュンッ!


それを防ぎ切るだけのスキルを持ち合わせていないファルシオンは、ハイディングで咄嗟の回避を行った。



「フン……隠れてやり過ごすつもりとは、便利屋が聞いて呆れますわ」


「……………」



パッ


ファルシオンは無言でハイディング状態を解除した。



今思えば、"それすらも涼の作戦であったと思えるように"。



「流石に自分を棚に上げるだけはあるな。だが、その程度の魔法で俺を倒せると思うなよ」


涼は応えない。

その挑発とも取れる言動は、試合前の彼女であれば食いついていたであろうに。



次の瞬間、


「……何っ!?」


ズドドドドドドドッ!


先程放たれたダイヤモンドダストと同じ形状の攻撃が、ファルシオンの"後方"から飛んできたのだ。


ザシュッ!


「くっ…!!」


あまりに突然の出来事に、 横に飛んでその回避を試みたが、鋭利な氷柱にいくつかの傷を負わされる。


(馬鹿な…!後ろから魔法が飛んできただと!?)


ファルシオンは何が起こったのかわからなかった。

それもそのはずである。


"魔法が後ろから飛んでくるわけが無い"。



その答えは、すぐに涼の口から明かされた。


「どうですか?妾の"ダイヤモンドフィスト"は」


その言葉に、ファルシオンは勿論聞き覚えが無い。


「…くっ……スペルフィストに、乗せたとでも言うのか…?」


ダイヤモンドダストとスペルフィストの融合。

彼の背中から、掠ったとはいえ目に見えて衣服が破れ、血が流れ出る。
一撃でも食らえば致命傷に成りかねない。



「そして、妾の二つ名は"表裏虐殺/リバースカルネージ"。魔法が表だけから飛んでくるとは、思わないことですわね」





彼女の名は、涼風涼。

名にも、魔法にも、表や裏という概念が存在しない。


彼女は究極のスペルフィストを編み出した。
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