コンロン地下闘技場編15
いくぜタッグバトル。
続きは小説です。
彼女は、己の半生を掛け、この技を編み出した。
全方位からの魔法攻撃。
それは、対峙する者に絶対的な強さを示し、多くの者を圧倒してきた。
それを"天才"と呼称する者まで現れ、彼女はその呼び名に恥じぬ生き方をしてきた。
だが、目の前の男は違う。
特殊な能力を持ちながら、それを善良な人々のために使わず、時に悪行に加担し、依頼のため、金のためならどんな事でもやってきた。
彼女の中の正義に反する悪。
涼の中ではそんな人物にしか見えなかった。
どんな事があっても、この男にだけは負けたくない。
どんな事があっても、この魔法だけは破られてはならない。
それはプライド、意地でもあり、彼女の人生そのものなのだから。
ギリギリッ!
涼は唇を噛み締め、凄まじい形相でファルシオンを睨みつけた。
「……こんな……こんな単純なことで……」
怒りに手を震わせながら、次の魔法力を腕に纏わせた。
「妾の……妾のスペルフィストが………」
それを振り上げ、次なる魔法を放った。
「負けて………たまるかあああああぁぁッッ!!」
ゴオオオオッ!
放たれたサイキックウェーブは、ファルシオンに直撃する。
「グハッ…!」
体が再び壁に叩きつけられ、苦しみに顔を歪める。
ダァンッ!
同時に、涼も後方に吹き飛んだ。
地面を転がり、己の魔法の強さを、その"反射"によって実感する。
体が軋み、両の足で地に立つことすら難しいほどに。
「…………ける、な………」
涼は小さく呟いた。
そして、次の瞬間、
「……ふざけるなああああああああッッ!!!」
怒声と共に、彼女は再び魔法を放った。
恐らく、スペルフィストに魔法を乗せないだけで、彼女の勝利は揺るがないだろう。
たったそれだけのことが、出来なかった。
それをやめれば、自分が自分ではなくなるような感覚に陥る。
そして、リフレクトシールドを発動することしか出来ないファルシオンから、逃げたくはなかったのだ。
真っ向からそれを打ち破ってこその、彼女の美学がそうさせなかったのだ。
「………俺には……成さねばならぬことが……ある………」
ガラッ
ファルシオンは、壁から前に出た。
まるで、自分から魔法にぶつかりに行くかのように。
「それを……成し遂げるまで………」
ドオオオォォッ!!
涼の放った魔法が、ファルシオンの眼前に迫っていた。
「……負けられ………ないんだ………」
ドガアアアアアアアアァァンッッ!!
轟音をあげ、闘技場は再び土煙に包まれた。
涼は全身を警戒させた。
やがて襲い来るであろう衝撃に身を備えて。
しかし、
「…………?反射が………」
しかし、いくら待てども、衝撃はやってこない。
やがて煙が晴れ、彼女は対峙する者を見た。
「……もう、勝負はつきました。攻撃をやめなさい」
「…なっ……あなたは…!」
彼女も、この大会に出ているぐらいなら名を知らぬはずはないだろう。
『……な、なんと……なんということでしょう……』
実況の神咲も、同様に驚愕していた。
ファルシオンは、確かに闘技場に足をつき、立っていた。
その目の前に、魔法を防ぎ、立ちはだかる者。
前大会優勝者として名高い大魔導師、"マザー=マリサ"の姿があったのだから。
『……あの人は間違いない……前大会優勝者の、マザー=マリサだ……』
『ええ!?本物ですか!?』
ザワザワ!
アヘンの言葉に、会場中がざわめき始めた。
とてつもない大物の登場と、謎の行動に。
「…ど、どきなさい!まだ決着はついていな………っ!?」
涼は、そこで初めて気が付いた。
本来ならばあり得ないことに。
マリサは振り向き、ファルシオンを見た。
「…よく、頑張りましたね……」
彼女は瞳に涙を浮かべている。
「だから……もう、いいんです………いいんですよ、ファルシオン………」
両の足を地に着き、真っ直ぐに立ち、ハッキリと前を見据えていた男。
"便利屋ファルシオンは、立ったまま気絶していた"。
精神力、意志の強さだけで、確かにそこに存在し、気を失って尚、戦いを続けようとしていたのだから。
ワアアアアアアアアアアアァァッッ!!
選手控え室へと移動中の涼に、後方から観客の声援が聞こえてきた。
前座だと思われていた試合。
しかし、涼の圧倒的な魔法の力、ファルシオンの気絶して尚、立ち向かう心意気に、その心は動かされていた。
「……………」
涼は傷付いた体を庇いながら、壁にもたれかかり、唇を噛み締めた。
その表情は、悔しさが滲み出ている。
スッ
彼女の横に立ち、ホワイトスリムポーションを差し出す男の姿があった。
「お疲れ、涼さん。サツキからの差し入れだよ」
「………瀬戸…誠……」
現れたのは瀬戸誠。
肩には、巨大な斧、嵐斧ハリケーンフューリーが担がれている。
涼は静かにポーションを受け取り、ゆっくりと飲み干した。
「……次はあなた達の試合ですか?」
「うん、応援よろしくね」
誠はそう言い残し、闘技場の中心へと歩みを進めた。
コツ、コツ
その後ろから、もう一人の女が現れた。
言わずもがな、誠の相方、サツキである。
「……………」
目の前を通り過ぎようとするサツキを、涼は無言で睨むように目を細めた。
「悪くない試合だったぜ」
サツキは振り向かず、そう言った。
それにも涼は応えない。
数秒立ち止まったサツキは続けた。
「悔しかったら、這い上がって来い」
そう言い残し、オーバージェネティックは戦いの場に足を運ぶ。
「さて……」
実況席で、ゆっくりと立ち上がった男。
その名は、動かない石像こと、アヘン。
彼は小さな笑みを浮かべ、闘技場に入場した誠を見た。
「嵐斧を修復したか……だが、お前に斧の使い方を教えたのは、誰だったかな…?」
不敵に笑う男は、肩に巨大な斧ギガントアックスを携え、闘技場へ歩みを進めた。
サツキ&誠 vs アヘン&神咲
戦いの火蓋が、今切って落とされようとしていた。
続きは小説です。
彼女は、己の半生を掛け、この技を編み出した。
全方位からの魔法攻撃。
それは、対峙する者に絶対的な強さを示し、多くの者を圧倒してきた。
それを"天才"と呼称する者まで現れ、彼女はその呼び名に恥じぬ生き方をしてきた。
だが、目の前の男は違う。
特殊な能力を持ちながら、それを善良な人々のために使わず、時に悪行に加担し、依頼のため、金のためならどんな事でもやってきた。
彼女の中の正義に反する悪。
涼の中ではそんな人物にしか見えなかった。
どんな事があっても、この男にだけは負けたくない。
どんな事があっても、この魔法だけは破られてはならない。
それはプライド、意地でもあり、彼女の人生そのものなのだから。
ギリギリッ!
涼は唇を噛み締め、凄まじい形相でファルシオンを睨みつけた。
「……こんな……こんな単純なことで……」
怒りに手を震わせながら、次の魔法力を腕に纏わせた。
「妾の……妾のスペルフィストが………」
それを振り上げ、次なる魔法を放った。
「負けて………たまるかあああああぁぁッッ!!」
ゴオオオオッ!
放たれたサイキックウェーブは、ファルシオンに直撃する。
「グハッ…!」
体が再び壁に叩きつけられ、苦しみに顔を歪める。
ダァンッ!
同時に、涼も後方に吹き飛んだ。
地面を転がり、己の魔法の強さを、その"反射"によって実感する。
体が軋み、両の足で地に立つことすら難しいほどに。
「…………ける、な………」
涼は小さく呟いた。
そして、次の瞬間、
「……ふざけるなああああああああッッ!!!」
怒声と共に、彼女は再び魔法を放った。
恐らく、スペルフィストに魔法を乗せないだけで、彼女の勝利は揺るがないだろう。
たったそれだけのことが、出来なかった。
それをやめれば、自分が自分ではなくなるような感覚に陥る。
そして、リフレクトシールドを発動することしか出来ないファルシオンから、逃げたくはなかったのだ。
真っ向からそれを打ち破ってこその、彼女の美学がそうさせなかったのだ。
「………俺には……成さねばならぬことが……ある………」
ガラッ
ファルシオンは、壁から前に出た。
まるで、自分から魔法にぶつかりに行くかのように。
「それを……成し遂げるまで………」
ドオオオォォッ!!
涼の放った魔法が、ファルシオンの眼前に迫っていた。
「……負けられ………ないんだ………」
ドガアアアアアアアアァァンッッ!!
轟音をあげ、闘技場は再び土煙に包まれた。
涼は全身を警戒させた。
やがて襲い来るであろう衝撃に身を備えて。
しかし、
「…………?反射が………」
しかし、いくら待てども、衝撃はやってこない。
やがて煙が晴れ、彼女は対峙する者を見た。
「……もう、勝負はつきました。攻撃をやめなさい」
「…なっ……あなたは…!」
彼女も、この大会に出ているぐらいなら名を知らぬはずはないだろう。
『……な、なんと……なんということでしょう……』
実況の神咲も、同様に驚愕していた。
ファルシオンは、確かに闘技場に足をつき、立っていた。
その目の前に、魔法を防ぎ、立ちはだかる者。
前大会優勝者として名高い大魔導師、"マザー=マリサ"の姿があったのだから。
『……あの人は間違いない……前大会優勝者の、マザー=マリサだ……』
『ええ!?本物ですか!?』
ザワザワ!
アヘンの言葉に、会場中がざわめき始めた。
とてつもない大物の登場と、謎の行動に。
「…ど、どきなさい!まだ決着はついていな………っ!?」
涼は、そこで初めて気が付いた。
本来ならばあり得ないことに。
マリサは振り向き、ファルシオンを見た。
「…よく、頑張りましたね……」
彼女は瞳に涙を浮かべている。
「だから……もう、いいんです………いいんですよ、ファルシオン………」
両の足を地に着き、真っ直ぐに立ち、ハッキリと前を見据えていた男。
"便利屋ファルシオンは、立ったまま気絶していた"。
精神力、意志の強さだけで、確かにそこに存在し、気を失って尚、戦いを続けようとしていたのだから。
ワアアアアアアアアアアアァァッッ!!
選手控え室へと移動中の涼に、後方から観客の声援が聞こえてきた。
前座だと思われていた試合。
しかし、涼の圧倒的な魔法の力、ファルシオンの気絶して尚、立ち向かう心意気に、その心は動かされていた。
「……………」
涼は傷付いた体を庇いながら、壁にもたれかかり、唇を噛み締めた。
その表情は、悔しさが滲み出ている。
スッ
彼女の横に立ち、ホワイトスリムポーションを差し出す男の姿があった。
「お疲れ、涼さん。サツキからの差し入れだよ」
「………瀬戸…誠……」
現れたのは瀬戸誠。
肩には、巨大な斧、嵐斧ハリケーンフューリーが担がれている。
涼は静かにポーションを受け取り、ゆっくりと飲み干した。
「……次はあなた達の試合ですか?」
「うん、応援よろしくね」
誠はそう言い残し、闘技場の中心へと歩みを進めた。
コツ、コツ
その後ろから、もう一人の女が現れた。
言わずもがな、誠の相方、サツキである。
「……………」
目の前を通り過ぎようとするサツキを、涼は無言で睨むように目を細めた。
「悪くない試合だったぜ」
サツキは振り向かず、そう言った。
それにも涼は応えない。
数秒立ち止まったサツキは続けた。
「悔しかったら、這い上がって来い」
そう言い残し、オーバージェネティックは戦いの場に足を運ぶ。
「さて……」
実況席で、ゆっくりと立ち上がった男。
その名は、動かない石像こと、アヘン。
彼は小さな笑みを浮かべ、闘技場に入場した誠を見た。
「嵐斧を修復したか……だが、お前に斧の使い方を教えたのは、誰だったかな…?」
不敵に笑う男は、肩に巨大な斧ギガントアックスを携え、闘技場へ歩みを進めた。
サツキ&誠 vs アヘン&神咲
戦いの火蓋が、今切って落とされようとしていた。
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