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コンロン地下闘技場編17

さあさあ、こっから盛り上がってまいりますよ。



続きは小説です。



「おい、マコ。アヘンに何か弱点とかねえのか?」


「無い」


サツキの問いに、誠は即答した。

その言葉にため息をつきつつ、肩を落とす。


自分が無双をして楽々と倒せる相手ならば、そんな事は聞かないだろう。
彼女が探りを入れなくてはならないほど、容易にはいかない相手であることが伺える。


「じゃあせめて戦い方とかねえのか?全くわからない訳じゃないだろ」


「………そうだな、まずはあの人が"動かない石像"と言われる由縁だ」


誠は表情を険しくし、言葉を続けた。


「あの人は本気を出したとき、とにかく"動かない"。その場を動かずに襲い来るものを返し打つ、言わばカウンター型と言えるかもしれない」


「ほう……動かずに、ねえ……」


俄かには信じ硬い、サツキの表情からはそう読み取れる。
自分の力を過信しているからこそ、そう思わずにはいられない。


「……でも、"その後動き出したらヤバい"。僕は一度だけ見たことがあるが、あの人の移動速度は目じゃ追えない。そして、動いたと思ったら相手が吹き飛んで、また同じように"動かなくなるんだ"」


動かない石像が動くとき、相手は既に蹂躙されているという。


誠は今まで数々の神速と呼ばれる者を見てきた。

魔王の力を借りたダズ。
サツキのカートブーストの加速力。
春通の残影による瞬間移動。
リィンの音に乗った音速の移動。

それらと比べても差異はないと言うのだろう。


「更に、あの人は"恐ろしいまでに頭がいい"。物事を全て式にして瞬時に解いてしまうんだ。さっきサツキの攻撃、受け流されただろ?」


「受け流されたっつーか、受け止められたっつーか。まあ、変な感覚はあったな」


サツキは自分の拳を見、握り直すように感覚を確かめた。


「あれはあの人が瞬時に計算して、"最適な方向へ衝撃を吸収されたんだ"。お前の馬鹿力とは相性が悪いかもな」


「あぁん?手加減したに決まってんだろあんなの。つかお前そこまで見てたんなら助けろよ!」


サツキのツッコミは尤もだった。

本当は緊張していたなんて嘘なんじゃないかと思えるほど、誠の指摘は的確だった。


パワー自体はサツキや誠に多少劣るであろう。
だが、アヘンはその驚異的なまでの計算能力でそれを補っている。


体のどこを、どの様に動かせば最適な動きが出来るか、それを方程式により求める。
それを応用したのが、彼が"動かない石像"と言われる由縁であり、ある意味天才的な頭脳は戦闘に活かされると言える。


誠は最後に口を開いた。



「"雷帝方程式/メカニカルリミット"。雷の如き速さで動く、天才的頭脳の持ち主。それが彼に……アヘンさんにつけられた二つ名だ」


「……おいおい、石像はどこいったんだよ……」



半ば呆れたサツキは、再び前を向き直った。



「お喋りはそのぐらいにしておけよ」


二人に対し言葉をかけるのは、勿論対峙する男、アヘンに他ならない。


「作戦会議だ。そういうのも必要だろ?」


サツキはシニカルな笑みを浮かべ、それに返す。



二人の作戦。

まずはサツキが、アヘンの動かない石像モードに対してどれ程まで対処できるのか。
それがもし、なんとかなる程度なら、誠はサツキをサシの状態に持っていけるように、神咲を足止めしていれば良い。

サツキは自信満々にアヘンを倒すと言った。
ならば、それを確かめてみるのも一興である。


カチッ


サツキは足に取り付けたバーナーのスイッチを入れた。


ゴオオオオウッ!


「行くぞマコッ!!援護ぐらいやってみせろよ!!」


「当たり前だ!!」


ダンッ!


サツキはカートブーストを使い、凄まじい速度でアヘン達に飛び掛った。



「させませんよ!!」


バッ!


サツキの進路を塞ぐように、神咲が前に出た。


ドォンッ!ドォンッ!


「うわっ!?」


しかし、誠がそうはさせない。

神咲はサツキの後方から飛んできた弾丸を回避するため、バック転で距離を取った。


そのスキに、サツキは一気に距離をつめる。


「オオラアァッ!!」


速度をそのままに、サツキは拳を振り上げた。



対するアヘンは動かない。

まさにその拳が直撃するであろう瞬間、彼は小さく口を開いた。




「"動かざること……石像の如し"」



ガァンッ!



「あぁっ…!?」


目の前で、大きな金属音が響いた。

サツキは最初それが何なのかわからなかった。
突き出したはずの拳が弾かれ、自分の突進の威力すら殺されている。


まるで何かに衝突したかのように、体は吹き飛ばされる。


しかし、対するアヘンは、その場から"動いた形跡がない"。



「クソッ!一体何してやがん…っ!?」



フォッ!


それは、叫ぶサツキの横に突然現れた。

目でそれを追う頃に、アヘンは既に斧を振りかぶっていた。



「ハァッ!」


ドゴォッ!!


サツキは五感で感じ取れる最速の時間で、咄嗟にガードの体勢を取ったが、斧は腕に当たり、体は壁に向かって吹き飛び始めていた。


ガァンッ!


「…グッ!」


「サツキッ!?」


硬い闘技場の壁にまで吹き飛び、叩きつけられる。


誠は一瞬のことに判断が遅れた。



「あまり余所見をしないほうがいいですよ」


目の前の神咲は言った。

勿論、誠は何が飛んでくるかを警戒する。



それこそが、神咲の罠であった。



フッ!


「…あっ!?」


「私が何かをするわけではありませんがね」


その背後には、既に斧を構えたアヘンが立っていた。


そう、神咲は囮に過ぎなかった。

たった一言の声を発するだけで誠の注意を引き、アヘンが後ろに回り込むまでの時間稼ぎを行ったのだ。



ドゴォッ!


「グアッ…!」


誠は背中を強打され、サツキと同じく壁まで一直線に吹き飛ばされる。



「マコォッ!」


ガシィッ!


サツキはなんとかその体をキャッチし、衝撃を和らげる事に成功した。


ゴロゴロッ


だが、勢いを殺しきれず、二人は抱き合いながら地面を転がった。



「クッ…!すまないサツキ…!」


「いや、いい。俺も何がなんだかわからねえぜ……」



二人には石像の力を看破することが出来ない。
その上、神咲のプレッシャーも大きい。

攻守共に優れた力を持つ者がいるだけで、自分達の力技がここまで封じられるものかと思い知らされる。





だが、二人はそんな事では絶望していなかった。



「……マコ、"あの技"使ってもいいか?」


「ああ、試すなら今しかないかもな………だが、一回だけだからな?」



サツキの言葉に誠は頷き、二人は再び立ち上がった。



「まだやる気は十分なようだな」


アヘンはさぞ嬉しそうに笑い、再び構えを取る。


「いやはや、実に素晴らしい。アヘンさんはさる事ながら、あのお二方も噂通りだ……諦めずに何やら策を興じてきそうな雰囲気ですね」


その横で、神咲も笑い、一歩前に出た。




「では、その出鼻を挫かせてもらいましょう」


スッ


神咲は掌を前に、スキルを発動した。





ズゥンッ!


「…な、なんだ!?」


「あの野郎…!また何かしやがったか!?」


カチッ


体を包む不穏な感覚に、そうはさせまいと足に取り付けたブースターのスイッチを入れる。


しかし、


「……あ、あん…?」


カチッ  カチッ


スイッチを何度入れ直しても、カートブーストが発動しない。


「馬鹿、こんなときに何やって………あれ…?」


ガチッ!


誠も、手にしたショットガンに違和感を感じた。

慌てて中を開き、確認をする。


「…な、なんでだ?銃が…撃てない…!?」



ガチッ!


引き金が、鉄のように硬く動かないのだ。


突然の不可思議な現象。
それが同時に起こるようなことは、本来ならば有り得ない。


その原因は、二人共おおよその予想は出来ていた。


バッ!



「お気付きですか」


サツキと誠は、同時に前を見た。

自分達の前に対峙する男、神咲北斗に他ならない。



「"マスカレード/イグノアランス"。あなた方の厄介なスキル。少しばかり"封印"させていただきました」


彼は言った。

封印、と。



それにより封じられたのは、サツキと誠が発動するスキル、全てである。



後に二人は知ることになる。


決して神咲を過小評価していた訳では無い。

アヘンが目立った攻撃を行っていたため、その影に隠れて見えなかったのだ。


職業名と同じく、影として。




その気になれば、この男は自分達二人の動きを"同時に拘束することが出来た"のだと。




"封印流転/ローリングカルマ"。


神咲の隠された力が今、二人に襲い掛かる。
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