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コンロン地下闘技場編22

出しちゃった、テヘッ



続きは小説です。


「貴様アアアァァッ!」


ダンッ!


闘技場の内部の医務室の前で、一人の女がもう一人の女の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。


「おいおい……焦んなって言ってんだろ」


壁に背をぶつけられたのはサツキ。

彼女はどこか楽し気な表情を浮かべている。



「全て分かっていてやったんだな…?」


対して、サツキの胸ぐらを掴むのはジル。

その表情は怒りに満ちており、今にも剣を抜きそうである。


「私に対する"復讐の手伝い"でもしたつもりか…?ふざけるのも大概にしろ!そのせいでダズがあんな目にあっているんだぞ!!」


「俺だってこんな事になるなんて思いやしねえさ。それに、もう俺の薬は投与済みだ。すぐ目を覚ますさ」


「そんな無責任なことが許されるか!!万が一後遺症でも残ったらどうする!!」


ググッ!


ジルは拳に更に力を込め、強く押し付けた。

サツキもそれには少し苛立ちを覚えたらしい。


「テメエ……何なら俺は今ここでおっ始めても構わねえんだぜ…?」


ガッ!


サツキはジルの腕を掴み、力を込める。


二人の間に言い知れない険悪なムードが漂い始める。














事の発端は、マサオの出生にあった。


彼女は元々シュバルツバルド共和国、リヒタルゼンの出身。

だが、悪名高い"人体実験"の毒牙にかけられそうになった彼女を、両親達は隠し、守っていた。




彼女は気付けば一人だった。



一人きりで、荒野に捨てられていた。


両親は惨殺された。

その記憶も無い。


言葉を喋ることもままならない彼女。
いや、その幼女に、現実は辛い矛先しか向けなかった。




それを拾ったのは、ラヘルの地に古来から住んでいると言われる狼のモンスター"アトロス"。



アトロスは彼女を喰らおうとはしなかった。


それを育て、慈しんでいた。


最早奇跡としか思えないその所業。




しかし、長く続いたマサオの幸せな生活も、10を過ぎた頃に終止符をうたれる。



ラヘル周辺のモンスターの討伐、掃討作戦が決行された。













「……確かに、"私の父はその掃討作戦に参加していた"。間違いない。彼女の育ての親とも言えるモンスターを殺したのも、恐らくその部隊の仕業だろう……」


ジルはサツキを掴む手の力を抑え、ゆっくりと後ろに下がった。


「だからと言って、それぞれの子にまでその負の感情を継がせるのは間違っている………私はわかったんだ、三国戦争の時に……それがいかに虚しいものかを……」


「………………」


その言葉に、サツキは答えない。


ジルを説得するために命を賭けたダズ。

復讐からは何も生まれない。
分かり合うことが出来るのが人間だと。



「あの野生そのものと言える強さの……いや、本能は、疑い様もない。どう考えても常人が辿り着く領域を越えている」


「へっ、ビビってんのか?」


下を向くジルを、サツキは更に煽る。



「……貴様とはいずれ決着を着けねばならんようだな……」


「おうおう、安心しろ。ダズはそのうち目を覚ます。マサオは人を殺しちゃいねえ。ルール上問題なく、お前らは二回戦進出だ。そしたら……」



そう、サツキ&瀬戸誠ペアと、ダズ&ジルのペアは、トーナメント上次に当たることになっている。



「……首を洗って待っていろ。オーバージェネティックとやら」


「テメエこそな……人類最強さんよ」


暫しの間睨み合い、サツキはその場から去った。



小さく一息つき、ジルは医務室の扉を開けた。


ダズはベッドの上で、小さな寝息を立てていた。

命に別状はない。
しかし、目覚める保証はされなかった。



胸に受けた傷は大きく、その跡は一生消えないかもしれないとのことだった。


「………お前は、本当に馬鹿だ……」


ジルはベッドの横に置かれた椅子に腰掛け、ダズの顔を見た。


「どうせ私を助けるためにやったのだろう…?私が攻撃された後なら、いくらでもお前がやれるチャンスはあったはずだ……」


ダズは、自分へマサオの注意を向けるために、ワザと囮になった。


もし、ジルが先に攻撃されていたとしたら、その後には大きな隙が生まれただろう。

ダズはそこを狙っても、確実に仕留められたはずだ。



「初めて会ったときもそうだ……」


ジルは目を細め、俯く。

昔を思い出すように。




「もう少し、周りを頼れよ………私はまだ、お前に何も返せてないんだからな……」

















ワアアアアアアアアアアアッ!!


観客の声が一体となり、闘技場に響き渡る。


「このっ!このぉっ!!」


ゴオオオオォォッ!


その真ん中で、一人の女が声を荒げていた。



『さあ!"ペアなど必要ない"と言ってトーナメントに参加した涼風涼選手!やはりこの二人相手に攻撃を通すのは難しいかぁっ!?』



真ん中に立つ女。

それは、先程ファルシオンと激闘を繰り広げた、ソーサラーの"涼風涼"。



対する二人とは。




「おいツカサァ!この"ディボーション"ってのスゲえな!?全然痛くねえぞ!」


前方で、涼の魔法攻撃を浴び続けるのは、ルーンナイトのアニキ。


「…そ、そうか……それなら、なるべく早く攻撃に移ってくれると……助かる……うっ…!」


その後方にいるのは、ロイヤルガードのツカサ=SBK。


直接攻撃を喰らっている訳ではない彼が、何故痛みに顔を歪めているのか。

それは、彼からアニキへと繋がる一本の線、献身"ディボーション"によって、アニキが受けるはずのダメージを肩代わりしているからである。



途轍もない防御力を誇るツカサが後ろにいることで、同じく途轍もない攻撃力を誇るアニキが、自身へのダメージを気にすることなく暴れる事ができる。

凄まじいまでの相性の良さが、そこにはあった。



「おうよ!じゃあ……」


アニキは前に向き直り、不敵な笑みを浮かべ、剣を構えた。


「一丁ハデにぶちかましてやるよぉ!」


ゴゴゴゴゴゴゴッ!!


周囲の大気が振動し、アニキの手にしたグロリアススピアに、強力な波動が集中し始める。


「クッ!と、止められないですって…!?」


その間にも、休まず攻撃をし続ける涼。
しかし、アニキどころかツカサもビクともしない。


(耐久力が…尋常じゃない…!?)


「いくぜいくぜええぇっ!!」


やがてアニキの力が一点に集中し、"それ"が振り下ろされる。



「ストーム…!」


会場を壊すなという命令を、完全に無視して。



「ブラストオオオオオオォォッッ!!」



ドッゴオオオオオオオオオォォンッ!!


ルーンの秘められた力を開放するストームブラストは、戦いの場を全て巻き込むほどの凄まじい衝撃波を放ち、涼に襲いかかる。



「ぼ、僕の直した壁があああああっ!!」


誠は、吹き荒れる突風で吹き飛ばされる闘技場の壁を見、涙を流した。


『アニキ選手!忠告を全く無視しての猛攻だああ!!これは誠選手がいたたまれないいいっ!!』


対する神咲は、何やら楽しそうに声を張り上げていた。



ドドドドドドッ!!


「……万事休すですわ……あれ程まで簡単に必殺技を撃たせてしまうとは……」


涼は迫り来る衝撃波を前に、腕を下ろした。


発動してしまえば、防ぐ事のできない絶対的な攻撃。

今の涼を諦めさせるには、充分な威力だったかもしれない。


ガードしたとて、立っているのがやっとだろう。



「……悔しい……悔しいですわ……」


己の無力さを垣間見、涼は小さく肩を落とした。











"諦めてはいけませんよ。涼"


ジジッ!


その時、涼の耳に微かな声が響いた。

同時に、目の前に複数の"音符の形をした光"が現れる。



「こ、これは…!?」


涼はそれに見覚えがあった。


忘れることの出来ない、記憶の中にある、"懐かしい人物の面影"が浮かび上がる。















パチッ



「…っ!ダ、ダズ!?」


ジルはベッドで静かな寝息を立てていたダズが、突如目を見開いたことに驚いた。


ガバッ!


「お、おい、いきなり起き上がったら…!」


それだけではなく、彼女は上半身を起こし始める。



しかし、どこか様子がおかしい。



「…あ……あぁあ……あぁ…!」


「だ、大丈夫かダズ!?……なっ!?」


突然頭を押さえ、困惑するダズの様子を見、ジルは焦る。

顔は青白く、何かに怯えて震えているようにしか見えない。



「く、来る……逃げ…逃げなきゃ……逃げなきゃあぁ…!」


尋常ではない。


何せダズの瞳は金色に、バフォメットの力を無理矢理開放したように震えあがっていたのだから。



「………まさかっ!?」


バッ!


ジルは一つの結論に達した。


ダズがこれ程までに恐れるもの。

それが、すぐ近くまで迫っているのだと。
















「ドミニオンインパルス」


ドガガガガアアアアアァァンッ!!


直後、涼の目の前に展開された音符達が爆発し、アニキの放ったストームブラストと衝突した。


それはその凄まじい衝撃波を沈静化し、相殺する。



スタッ!


「大丈夫ですか?涼」


涼の着地し、横に現れた者。

それは、楽器を手にし、吟遊詩人の格好をしていた。

大きな帽子で表情まではうまく見れない。



涼は知っていた。

何年離れようとも覆ることのない関係。



「……リィン…お兄…様………」



兄妹、そして家族という関係を。













「おいおい……とんでもねえのが出てきたな……」


さすがのサツキも、驚きを隠せない様子だった。


「え、えぇ!?あれはシュバルツバルド共和国の…モガッ!」


「バカ、声がでけえぞマコ」


それを口走りそうになった誠の口を、サツキがすかさず手で封じる。














「やはり……やはりあいつか……」


ジルは医務室を抜け出し、闘技場の様子を見に来た。


「……お忍びというやつだろうが、度が過ぎやしないか…?」


三国戦争時に、彼女も目にしたであろう。


「リィンよ……」



シュバルツバルド共和国現最高責任者。

"リィン=R=セレスティア"だった。














「さて、妻の音を追ってきてみれば、こんなところに迷い込んでしまいました。と思いきや、久しぶりですね、涼」


「お、お兄様こそ、どうしてこんなところに…?」


案外理由はいつも通りだった。


何年経ってもその信念は揺るがないらしい。



「……困っている女性を見ると、どうしても放っておけないものでして」


ザッ!


楽器を手に、リィンは前に出た。


「さて、ここで本名を語るのはよろしくありませんねえ………では、こうしましょう」


少しの間考え、リィンはすぐに答えを出した。



「皐月……皐月涼と、名乗っておきましょう」







破滅の音を引き連れて。

リィン、もとい"皐月涼"がこの地に降臨した。
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まとめ【コンロン地下闘技場編】

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