移転
小説を書いていたブログがサービスを停止するそうで、今月末まで見ることはできますが更新ができなくなってしまいました。
移転先が決まるまでこっちにちょっと書いておきたいと思います。
内容があまりに厨二なため、興味ない方、こういう類のものに寒気がする方は見ないことをオススメします。
批判、要望などがある方はコメントにどうぞ。
移転先が決まるまでこっちにちょっと書いておきたいと思います。
内容があまりに厨二なため、興味ない方、こういう類のものに寒気がする方は見ないことをオススメします。
批判、要望などがある方はコメントにどうぞ。
WC編第四話「踊り子と男」
「ギルドを作りたいって?」
男は疑問の声をあげた。
見ればナイトとわかる容姿、その風格。
ここが酒場であることを忘れさせるような、そんなオーラを纏うナイトは、更に言葉を発する。
「それは構わないが……大変だと思うぞ?」
「あぁ、わかってる。ダズの力も借りようと思ってるしな」
その言葉に答えテーブルの向かいに座る男は、正反対に酒場の雰囲気と一致、同化していた。
それも彼がシーフ系列であるからこそだろう。
「だから、鷹。今日は分隊を作る許可を貰いにきた」
鷹、と呼ばれた男。
そう、彼こそがギルド"Heavenly Knight's"のマスター、ダークホーク"闇鷹"だった。
鷹は数秒の間考えこみ、チェイサーの男"タイタン"に言葉を返した。
「わかった、ギルド作成の許可を与える」
「おう、サンキュー」
ギルド作成の許可を得、タイタンは笑顔でそれを返す。
「しかし、何故ギルドを作ろうと考えたんだ?」
鷹は興味本意からタイタンに質問を投げる。
タイタンは目の前に置かれた酒を、グイッと音が聞こえてくるような豪快さで飲み始めた。
喉を大きく鳴らしながら半分ほど飲み終えると、酒をテーブルに置き口を開いた。
「プハーッ!あぁ、理由?それはな……」
ラヘルへの道のりは、飛行線により殆ど短縮された。
近代の技術の発達は目まぐるしいもので、船やワープポータルという移動手段以外にも新たに空路が設けられたことで、人々の生活は今まさに"進化"をしようとしている。
ミッドガルドからシュバルツガルドへ移住する者、冒険に出る者。
それには飛行線が既に必須な存在となっていたのだ。
「早いもんだな、もう着いちまった」
その文明の力を目の当たりにし、タイタンは感嘆としたセリフを口にする。
「まずは、宿の確保だよね?」
マツリは一歩前に出てから振り返って答えた。
これから始まる冒険へ、不安よりも先に期待が顔に表れている。
「マツリ、任務は遊びじゃないんだよ?気を引き締めなさい」
ダズの一言でマツリは顔から笑顔を消し、しゅんとしてしまう。
「わかってるよー……お姉ちゃんは真面目過ぎるんだから…」
「……まあ、ダズの言う通りだ。家族の旅行じゃないんだぞ。あと…一つ忠告がある」
「「?」」
タイタンは急に真剣な表情を顕にし、ダズとマツリは改めて向き直る。
「ここで、絶対に宗教や神の話をするんじゃないぞ」
シュバルツガルドでは、ミッドガルドとは違う神が信仰されている。
その神の名は"フレイヤ"。
「ここの街は"何かがおかしい"。俺はラヘルの教皇様の依頼で以前調査をしたんだが、どうも裏でヤバイことが起こってる節がある」
「…信仰は、時に人を狂わせる、か……」
ダズの言葉に、タイタンは無言で頷いた。
「こ、怖いこと言わないでよ、お姉ちゃん…」
いやがおうでも、3人は緊張に包まれ、マツリの顔から完全に笑顔が消えた。
その日の夜、タイタンは一人街をふらついていた。
宿を取ったはいいものの、部屋が一つしか空いていなかったのだ。
男性のタイタンとしては、女性二人と同じ部屋で寝るというのは、例え仲の良い家族のような存在と言えども憚られるものらしい。
「まっ、こういうのも悪くないわな」
と自分に言い聞かせるように歩を進める。
空にはそれは素晴らしい星達が、我こそはと競い合い、輝きを広げていた。
その時、
「…あん?」
タイタンは広場から少し離れた、人目につかない路地から声が聞こえるのが耳に入った。
しかも、普通の声ではない。
「や、やめてください!」
一人の女性の叫ぶような声。
そして、その周りを囲むように3人の男が立っていた。
いかにもガラの悪いシーフ系の男達である
男の一人が一歩前に出、いやらしく顔を歪ませ、女性の体をなめ回すように見る。
「おいおい、姉ちゃんのほうから誘ってきたんだろ?俺らも退屈させねえからよ…」
「私そんなつもりじゃ…!」
タイタンはその光景を見、建前のようにやれやれと首を振ったが、その表情は好奇心と期待で溢れているのがよく見てとれた。
タイタンはおもむろに男達に近付くと、わざと地面を擦るように足から音を鳴らした。
男達はそれに気付き、同時に3人はタイタンのほうへ振り返った。
「お?なんだテメェ」
「あ……」
男は、西洋映画ならそれを言った次の瞬間にやられる役のような、間抜けな声でタイタンを威嚇する。
女性のほうは、人を巻き込んでしまった、というような不安な顔を顕にした。
だが、そんな男達の威嚇にタイタンは顔に笑みを浮かべ、
「わりぃな、そいつは俺の女だ。さっさと消えとけ」
と涼しい声でしゃべり始めた。
「!?!?」
女性は目を真ん丸にして声にならない驚きをあげた。
男達は見た目にわかるほど怒りを表し、そのうちの一人がナイフを取り出した。
「このやろう、死にてえの…」
シュパッ!
相手がセリフを言い終わる前に、動きがあった。
タイタンはコートのポケットに両手を入れたままだったが、空を切るような音と共に何かが目の前を通った。
「…か……」
男がセリフを言い終えた頃には、なんと"ナイフの刃がなくなって"いた。
まるで強力な力で切られたように、刃は地面に落ち金属音をあげる。
タイタンはニヤッと不吉な笑みを浮かべ、再度口を開く。
「死にたいのは…お前達のほうじゃないのか?」
と言う頃には、男達の顔は青ざめ威勢を無くしていた。
「ひ、ひぇ!」
情けない声を上げ、目の前の強大な敵から一目散に逃げ出す男達。
タイタンはやっとポケットから手を出し、男達に別れを告げるように手を振った。
「あ、ありがとうございます。助かりました」
女性はタイタンにお辞儀をした。
タイタンは次に正面に向き直り、女性に声をかけたが、
「"やるじゃん"、姉ちゃん」
「………」
そのセリフを聞いた途端、女性は無言になり、先程とは打って変わって険しい表情をした。
そう、男のナイフに手を下したのはタイタンではない。
目の前の女性であった。
女性は、見た目こそ騎士団にいたミカンとそっくりだったが、ジプシーではなく、その下位職であるダンサーだった。
女性は警戒しながらも口を開く。
「今のが見えていたんですか……あなた、ただ者ではないですね」
「お、そう見えるかい?」
タイタンは余裕の表情でそれに答える。
だが、すぐに両手を上に上げ、
「あぁ、別になんかしようってわけじゃない。よかったら散歩にでも付き合ってくれないか?」
「……??」
女性は首を傾げる。
タイタンは相変わらずニヤニヤしていた。
「そうですか…家族で任務に」
「家族っていうか、まあ似たようなもんだが…」
タイタンは頭をかきながら、満更でもない表情を浮かべる。
女性の名前は"董吏"といい、歌と踊りを披露しながら世界中を旅しているのだという。
「私の踊りを見てくれませんか、って話し掛けたら、いきなり路地裏に連れ込まれて……」
董吏は事の経緯をタイタンに話す。
タイタンはその話を聞いて目を細める。
「…話しかける相手を間違えたな。それに、その言い方だと……」
「え?」
タイタンは言いにくそうだ。
女性はその意味がわからなかったのだろう。
(娼婦と間違われても、おかしくないんだよなぁ…)
決して口にはしないが、タイタンは心の中で呟いた。
そしてもう一度、董吏の体を見た。
ダンサーは素肌を隠すものが殆どない。
それは踊り子としての美の追求と文化がそこにあるのであって、タイタンもそれに何も反論するつもりはない。
男性だけではなく、女性、果てはモンスターまでも魅了するであろうその力は、他職には決して得ることのできない魅力であり、強さであることは否定できない。
(しかし、この体は…)
タイタンは視線を董吏の足元から徐々に上にあげていった。
「あ、あの……」
そして、その視線が胸元あたりまで上にいったところで、董吏の声が耳に入り我に返る。
「スマン、気にしないでくれ。ところで…」
思わず、平手で自分の両目の視界を塞ぐ。
そして新たな要望を、
「その踊りと歌、俺にひとつ見せちゃくれないか?」
伝える。
董吏はパッと笑顔になり、すぐに頷いた。
「はい!是非見てください」
董吏はタイタンから少し離れ、正面に立ち軽くお辞儀をした。
背後の月と星達が彼女をライトアップし、広場はステージと化していた。
タイタンが小さく「ほう」と感嘆な呟きを漏らし、次に董吏の口が静かに開かれる。
「舞い手は董吏。曲は"神々の詩"……」
その夜、ラヘルの広場には美しい歌声が響き渡った。
それを"妖精"などと例え、街で広く、長く語り継いでいったというのは、もう少し後のお話。
「ギルドを作りたいって?」
男は疑問の声をあげた。
見ればナイトとわかる容姿、その風格。
ここが酒場であることを忘れさせるような、そんなオーラを纏うナイトは、更に言葉を発する。
「それは構わないが……大変だと思うぞ?」
「あぁ、わかってる。ダズの力も借りようと思ってるしな」
その言葉に答えテーブルの向かいに座る男は、正反対に酒場の雰囲気と一致、同化していた。
それも彼がシーフ系列であるからこそだろう。
「だから、鷹。今日は分隊を作る許可を貰いにきた」
鷹、と呼ばれた男。
そう、彼こそがギルド"Heavenly Knight's"のマスター、ダークホーク"闇鷹"だった。
鷹は数秒の間考えこみ、チェイサーの男"タイタン"に言葉を返した。
「わかった、ギルド作成の許可を与える」
「おう、サンキュー」
ギルド作成の許可を得、タイタンは笑顔でそれを返す。
「しかし、何故ギルドを作ろうと考えたんだ?」
鷹は興味本意からタイタンに質問を投げる。
タイタンは目の前に置かれた酒を、グイッと音が聞こえてくるような豪快さで飲み始めた。
喉を大きく鳴らしながら半分ほど飲み終えると、酒をテーブルに置き口を開いた。
「プハーッ!あぁ、理由?それはな……」
ラヘルへの道のりは、飛行線により殆ど短縮された。
近代の技術の発達は目まぐるしいもので、船やワープポータルという移動手段以外にも新たに空路が設けられたことで、人々の生活は今まさに"進化"をしようとしている。
ミッドガルドからシュバルツガルドへ移住する者、冒険に出る者。
それには飛行線が既に必須な存在となっていたのだ。
「早いもんだな、もう着いちまった」
その文明の力を目の当たりにし、タイタンは感嘆としたセリフを口にする。
「まずは、宿の確保だよね?」
マツリは一歩前に出てから振り返って答えた。
これから始まる冒険へ、不安よりも先に期待が顔に表れている。
「マツリ、任務は遊びじゃないんだよ?気を引き締めなさい」
ダズの一言でマツリは顔から笑顔を消し、しゅんとしてしまう。
「わかってるよー……お姉ちゃんは真面目過ぎるんだから…」
「……まあ、ダズの言う通りだ。家族の旅行じゃないんだぞ。あと…一つ忠告がある」
「「?」」
タイタンは急に真剣な表情を顕にし、ダズとマツリは改めて向き直る。
「ここで、絶対に宗教や神の話をするんじゃないぞ」
シュバルツガルドでは、ミッドガルドとは違う神が信仰されている。
その神の名は"フレイヤ"。
「ここの街は"何かがおかしい"。俺はラヘルの教皇様の依頼で以前調査をしたんだが、どうも裏でヤバイことが起こってる節がある」
「…信仰は、時に人を狂わせる、か……」
ダズの言葉に、タイタンは無言で頷いた。
「こ、怖いこと言わないでよ、お姉ちゃん…」
いやがおうでも、3人は緊張に包まれ、マツリの顔から完全に笑顔が消えた。
その日の夜、タイタンは一人街をふらついていた。
宿を取ったはいいものの、部屋が一つしか空いていなかったのだ。
男性のタイタンとしては、女性二人と同じ部屋で寝るというのは、例え仲の良い家族のような存在と言えども憚られるものらしい。
「まっ、こういうのも悪くないわな」
と自分に言い聞かせるように歩を進める。
空にはそれは素晴らしい星達が、我こそはと競い合い、輝きを広げていた。
その時、
「…あん?」
タイタンは広場から少し離れた、人目につかない路地から声が聞こえるのが耳に入った。
しかも、普通の声ではない。
「や、やめてください!」
一人の女性の叫ぶような声。
そして、その周りを囲むように3人の男が立っていた。
いかにもガラの悪いシーフ系の男達である
男の一人が一歩前に出、いやらしく顔を歪ませ、女性の体をなめ回すように見る。
「おいおい、姉ちゃんのほうから誘ってきたんだろ?俺らも退屈させねえからよ…」
「私そんなつもりじゃ…!」
タイタンはその光景を見、建前のようにやれやれと首を振ったが、その表情は好奇心と期待で溢れているのがよく見てとれた。
タイタンはおもむろに男達に近付くと、わざと地面を擦るように足から音を鳴らした。
男達はそれに気付き、同時に3人はタイタンのほうへ振り返った。
「お?なんだテメェ」
「あ……」
男は、西洋映画ならそれを言った次の瞬間にやられる役のような、間抜けな声でタイタンを威嚇する。
女性のほうは、人を巻き込んでしまった、というような不安な顔を顕にした。
だが、そんな男達の威嚇にタイタンは顔に笑みを浮かべ、
「わりぃな、そいつは俺の女だ。さっさと消えとけ」
と涼しい声でしゃべり始めた。
「!?!?」
女性は目を真ん丸にして声にならない驚きをあげた。
男達は見た目にわかるほど怒りを表し、そのうちの一人がナイフを取り出した。
「このやろう、死にてえの…」
シュパッ!
相手がセリフを言い終わる前に、動きがあった。
タイタンはコートのポケットに両手を入れたままだったが、空を切るような音と共に何かが目の前を通った。
「…か……」
男がセリフを言い終えた頃には、なんと"ナイフの刃がなくなって"いた。
まるで強力な力で切られたように、刃は地面に落ち金属音をあげる。
タイタンはニヤッと不吉な笑みを浮かべ、再度口を開く。
「死にたいのは…お前達のほうじゃないのか?」
と言う頃には、男達の顔は青ざめ威勢を無くしていた。
「ひ、ひぇ!」
情けない声を上げ、目の前の強大な敵から一目散に逃げ出す男達。
タイタンはやっとポケットから手を出し、男達に別れを告げるように手を振った。
「あ、ありがとうございます。助かりました」
女性はタイタンにお辞儀をした。
タイタンは次に正面に向き直り、女性に声をかけたが、
「"やるじゃん"、姉ちゃん」
「………」
そのセリフを聞いた途端、女性は無言になり、先程とは打って変わって険しい表情をした。
そう、男のナイフに手を下したのはタイタンではない。
目の前の女性であった。
女性は、見た目こそ騎士団にいたミカンとそっくりだったが、ジプシーではなく、その下位職であるダンサーだった。
女性は警戒しながらも口を開く。
「今のが見えていたんですか……あなた、ただ者ではないですね」
「お、そう見えるかい?」
タイタンは余裕の表情でそれに答える。
だが、すぐに両手を上に上げ、
「あぁ、別になんかしようってわけじゃない。よかったら散歩にでも付き合ってくれないか?」
「……??」
女性は首を傾げる。
タイタンは相変わらずニヤニヤしていた。
「そうですか…家族で任務に」
「家族っていうか、まあ似たようなもんだが…」
タイタンは頭をかきながら、満更でもない表情を浮かべる。
女性の名前は"董吏"といい、歌と踊りを披露しながら世界中を旅しているのだという。
「私の踊りを見てくれませんか、って話し掛けたら、いきなり路地裏に連れ込まれて……」
董吏は事の経緯をタイタンに話す。
タイタンはその話を聞いて目を細める。
「…話しかける相手を間違えたな。それに、その言い方だと……」
「え?」
タイタンは言いにくそうだ。
女性はその意味がわからなかったのだろう。
(娼婦と間違われても、おかしくないんだよなぁ…)
決して口にはしないが、タイタンは心の中で呟いた。
そしてもう一度、董吏の体を見た。
ダンサーは素肌を隠すものが殆どない。
それは踊り子としての美の追求と文化がそこにあるのであって、タイタンもそれに何も反論するつもりはない。
男性だけではなく、女性、果てはモンスターまでも魅了するであろうその力は、他職には決して得ることのできない魅力であり、強さであることは否定できない。
(しかし、この体は…)
タイタンは視線を董吏の足元から徐々に上にあげていった。
「あ、あの……」
そして、その視線が胸元あたりまで上にいったところで、董吏の声が耳に入り我に返る。
「スマン、気にしないでくれ。ところで…」
思わず、平手で自分の両目の視界を塞ぐ。
そして新たな要望を、
「その踊りと歌、俺にひとつ見せちゃくれないか?」
伝える。
董吏はパッと笑顔になり、すぐに頷いた。
「はい!是非見てください」
董吏はタイタンから少し離れ、正面に立ち軽くお辞儀をした。
背後の月と星達が彼女をライトアップし、広場はステージと化していた。
タイタンが小さく「ほう」と感嘆な呟きを漏らし、次に董吏の口が静かに開かれる。
「舞い手は董吏。曲は"神々の詩"……」
その夜、ラヘルの広場には美しい歌声が響き渡った。
それを"妖精"などと例え、街で広く、長く語り継いでいったというのは、もう少し後のお話。
コメント
コメントの投稿