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わゆわゆ

今回も小説で。

ちょっと会話も少ないし、文章が長いから読んでてだるい系かも。

シャオユウは、長年鍛えてきた自分の戦闘に対する感覚、それを最大限まで引き出していた。

もちろん、時にそれで補いきれないこともある。
それは相手が格下ではなく、自分と同じかそれ以上の者と対峙した場合である。

そういった輩と出会った時、熟練者はどういった感覚に頼るのか?



シャオユウは間違いなくこう答えるだろう。


"経験と、勘だ"


もちろんこれが全てにおいて正しい答えと言うわけではない。
だが、それ以外の大部分で間違っているとも言えないのは既知の事実である。




シャオユウは現在、地に伏していた。

もはや動ける状態ではない。

同様に、横にはタルタルが、体をピクリとも動かさずに倒れている。


両の眼だけを開き、シャオユウは己の目の前に立っている"男"の姿を見つめていた。


否、見ずにはいられなかった。



それが、自分の感覚を遥かに超越した存在であることが、本能的に理解できたからである。


人間はそういった状況に陥った時、どういう行動に移るのか。

これは明確である。
"逃げる"という行為が、どれほどそれに適しているかを、人だけでなく、生物全ては備え持っている。



"こいつは、ヤバイ"
















「そろそろ第三層になるな……」


タイタンは目の前を歩くゼリー状の物体を追いながら、それを見失わないように走っている。


「奥に行くほど、気温が下がってる気がする」


ダズは全身で温度を感じ取っていた。
トール火山に侵入した際に肌を襲ったとてつもない熱気が、今はそれほどまで強く感じない。

それをどう捉えるかは人次第であるが、不穏な空気を作り出す感覚は否めない。


「マツリのことも探さなきゃならんが、その後トール火山の主が簡単に俺らに会ってくれるかどうか……」


タイタンはそれが心配だった。

もちろんマツリの救出が優先だが、氷の洞窟の主との契約を怠るわけにはいかない。


「とりあえず、マツリを見つけてからじゃないと話は進まないね。ゼラスがきっとわかって……危ないっ!!」


ダズは叫ぶと同時に、前にいたゼラスを抱えて横に跳んだ。



ズガァンッ!!


ゼラスが先程までいた地面に、一本の巨大な矢が突き刺さった。


前方を見ると、弓の守護者ボウガーディアンが、既に次の矢を射り始めていた。


「タイタン下がって!」

「うわっ!とと!」


タイタンは次々に飛び交う矢を回避しながら、ダズの後方へと飛び込んだ。


ダズは左腕と胸の間にゼラスを抱えた状態で、右手で腰の鞘から剣を引き抜いた。


(ここでゼラスを離せば、この子が狙われる……)


そう、今マツリの行方を追えるのはゼラスだけである。
これを失えば、マツリの命の危険にも繋がる可能性があった。


(この子を抱えた状態で戦わないと…!)


「ダズ!危ない!」


タイタンの声が後ろから聞こえ、ダズは寸前のところで矢を弾く。

ガーディアンが攻撃の手を緩める様子はない。


(どうすれば……っ!)


その時、一つの言葉がダズの脳裏を過ぎった。




『大きく真っ直ぐな力は、ほんの少し"違う方向"に力を加えるだけで、大きく軌道がズレてしまうんだよ』




タルタルの言葉だった。

この間、わずか2秒もかかっていたかどうかは定かではない。


「次の矢が来るぞ!」


再びタイタンが叫んだ。
ガーディアンはもはや無限とも呼べる勢いで矢を放ち続ける。


(今の私にできるのは…これしかない!)


自分を信じ、感情に流されずに行動できてこそ真のナイトだ。
今までやってきたことは無駄ではない。これこそ、与えられた試練。


ダズは決意し、剣を前に構えた状態で精神を集中した。

矢が迫るが、ダズはそれを避けようとしない。


タイタンが慌てて弓を組み立て、それを迎撃しようとするが、到底間に合うような時間ではない。



しかし、



スゥッ



なんと矢はダズの横を抜けていった。


「…な、にっ…?」


タイタンは驚愕した。

ダズを狙い、射られた矢は全て、彼女の直前でその軌道を変えている。


もちろん、ダズと直線に並ぶように後方にいたタイタンにも、決して攻撃は届かない。


「………よし…」


ダズは一言だけ口を開くと、ゼラスを腕に抱えたまま、ゆっくりと前進していった。


守護者はそれに動じない。
剣の守護者と同じように、彼らは目の前の敵を攻撃し、殲滅することしか考えない。

当然ながら、"当たらないのなら当たるまで攻撃し続ける"だけだ。

トール火山に侵入した者を始末する、所謂殺人マシンだった。



何回目か分からないほどに、射られた矢。

その一本がダズの頬をかすめる。
少量の血が流れ、顔をつたって落ちていく。

だが、彼女はこれに全く動じず、むしろ気付いていないようにも感じられた。



(なんだろう……この感覚……)


己の剣に、相手の矢に意識を集中しながらも、頭の中は奇妙なほどに余裕があった。


(これが、境地…なのかな……)


ガーディアンの目の前まで迫ると、ゼラスを抱えた左の手に剣を持ち替えた。


(きっと、不安だったんだろうな……)


右手は、背に担いだクレセントサイダーに触れた。
そして、ゆっくりとそれを引き抜く。


(私の中に、護りたい人を護れない不安……恐れがあるのなら)


ガーディアンはこの間も、休みなくダズに向けて矢を放ち続けている。


ダズの腕から、ゼラスが自ら滑り落ちた。
彼もこれから何が起こるのか、容易に想像できた上での行動だろう。
邪魔をしないために、そのままダズの真後ろに移動する。



クレセントサイダーは完全に背から引き抜かれた。

本来両手で持つはずのこの武器を、現在ダズは右手で、片手だけで持っている。


そして、ゆっくりと両手の剣と鎌、それらを"交差"させる。



(恐れを……断ち切る!!)



スパァンッ!!



空を斬るような、耳を撃つ音と共に、×字にクロスされた剣と鎌が振り下ろされた。


ガーディアンはそれさえ構わず、次の矢を放とうとする。

しかし、数秒後に気付くことになる。


既に自分の体は切断されているのだということに。



まず、その腕が動かなくなった。
更に、胴体からズルリと滑るように腕は地に落ちる。

次に、足の感覚がなくなった。
腰から下が、まるで別の生き物のように動かない。

最後に、視界が徐々に地面に近付き、自分の足と胴が分離したことを知覚させられる。




大きな落下音を上げ、守護者はその場に崩れ落ちた。


「ダズッ!」


後ろで一部始終を見守っていたタイタンが駆け寄ってくる。


「……ごめん」


ダズは振り向き、先に謝った。
その反応が意外だったのか、タイタンは数秒言葉を詰まらせたが、


「……バカヤロウ、やるならやるって言いやがれ。心配させんな」


笑みと共に口を開いた。


「うん……ごめんね」


再び、彼女は謝った。

ゼラスが、そんな二人の周囲をぐるぐると回り、再びダズの体によじ登ってくる。

そんなホムンクルスを、最初に感じていた嫌悪感を親しみに変え、ダズは両腕で抱きしめた。










『ファイアーボール』




まるで、頭の中に直接響くような声だった。


一体どこから、誰がこの声をあげたのか。
いや、そんなことはどうでもいいだろう。

振り向いた時、既に巨大な火球が目の前に迫っていたのだから。



人は自分の命の危険を感じた時、とても短い時間を数秒にも捉えてしまうことがあるという。


今、ダズは火球に魅入られていた。

もちろん、回避行動を取ることもできたはず。
しかし、取らなかった。

それほどまでの球の熱、大きさ。
どれを取っても、自分に対して「死んだな」と思わせるには十分な威力であったと言えよう。






タイタンは、違った。


瞬時に、ダズを突き飛ばした。

先程のガーディアンとの戦いで攻撃に参加しておらず、咄嗟に判断をできるほど余裕があったからか。
それとも、自分の命を投げ捨ててでもダズを助けるつもりだったからか。




グォンッ!!



真意は定かではない。
確かめられるなら確かめたい。



「タイ…タ……」


だが、不可能なものをどう可能にすることが出来ようか。
ダズは必死に考えた。

誰かが教えてくれようものなら、どんなに頭を下げてでも教えてもらいたいという衝動。

まだ、重傷を負った体や、最低でも"死体"として形が残ったのなら、こんなことは考えなかっただろう。



「…ン……」


目の前で、"跡形も無く"消し飛んだのだから。


ダズはその場へたりこむように膝を着いた。

放心、という状態がこの場合相応しい表現になるだろう。


火球が通った後は生々しく、地面をえぐるように、遥か後方から発射されたようだった。




ザンッ!



追い撃ちをかけるように、ダズの目の前の地面に一本の矢が刺さった。



その時、彼女は自分が何の目的があってここまで来ていたのかを思い出した。

いや、思い出さずにはいられなかった。



目の前に刺さったのは、綺麗に手入れがされた"見覚えのある鋼鉄の矢"だったからだ。




バッ!


すぐにその場から立ち上がり、矢が飛んできたであろう軌道を目で追う。


その矢を放った相手を、見間違えるはずはなかった。

どれだけの時間を共に過ごしただろう。

泣き、笑い、互いの感情を共有し合い、時に強さを増すために鍛え合った関係を忘れるはずがない。




「……マツリ…」




妹のように接し、育て、時に助けられて来た存在が、今こちらに攻撃を仕掛けてきている。



「…おねえ……ちゃ……」


ダズのことを呼ぶような言葉を発しながらも、その手は再び矢を持ち、射ろうとしている。


わからない。


タイタンの死を目の当たりにした直後の、"家族"とも呼べる存在からの攻撃に、ダズの頭は混乱していた。
コメント

Σ?!

マスターしんじゃった?!!

残念ながら…

これは即死だよね。

No title

あと107人の俺がいる

No title

煩悩の数だけ…
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