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番外編2

さて、今日はどれぐらい書くかな。
あんまり決めてない。
「董吏さんも人が悪い……私だって……」


ブツブツと呟きながら、ダズは帰路についていた。

男女関係など今までほとんど考えたことがなかった。
もちろん意識していなかったわけではないが、騎士として必要なものを考えれば、必然的に除外される行為であることに他ならない。


いつもの十字路を曲がり壁沿いに歩いていたが、そこでダズはいつもと違う光景を目にする。


「……?」


壁沿いに歩かなければ気がつかなかったかもしれない。


"人がうずくまっている"

背には赤く、長いマントを装着しており、その人物がロードナイトであることに気付くまでに数秒時間がかかってしまった。

同じ騎士として興味をそそられたダズは、ゆっくりとその人物に近づいていった。


接近することで分かったこと。
どうやらその人物は男性らしい。


(……って、このスカートじゃしゃがめない、か)


自分の姿を見直し、考えを改める。
ロードナイトの女性は男性と違いスカートタイプになっており、その長さは意外にも短い。

騎士団曰く、身軽に動くためというが……真意は定かではない。
(上層部の趣味ではないか、という噂もある)



うずくまる男性の影に、何か動くものが見えた。


それとほぼ同時に、男性が喋る声も聞こえてくる。



「よーしよし、たくさん食べるんだぞー」



(………ペット?)


男性はどうやら、影で動く何かに餌を与えているようだ。
それから察するに、最近はめっきり見なくなってしまったモンスターのキューペットではないかと予想ができた。


男性とほぼ数メートルの距離まで近づき、後ろからそっと覗いてみる。


(あ……)


そこには嬉しそうに尻尾を振りながらペットフードにかぶりつくモンスターの姿があった。

ペットとして、ポリンと同じく一番様になっているであろう。
砂漠の狼、デザートウルフの子供である"仔デザートウルフ"だった。


「クン、クゥン」

「どうだ雄山、今日の味は?」


(ゆ、ゆうざん……?)


ダズはその名前に首を傾げた。

何やら料理の目利きと芸術に長けた同名の人物がいた気がしたが、思い出せない。



更に驚くことに、先ほどまでムシャムシャと食べていたはずのペットフードを前足でつき返していた。

それを見た男性は「あちゃー」と、ばつが悪そうに頭をポリポリとかいた。


「今日の餌もダメか?」

「ウー、ワンッ!」


まるでデザートウルフが「このペットフードを作ったのは誰だ!」と怒っているかのように見えてしまう光景である。



その男性が、ふと後ろを振り返った。

どうやらデザートウルフに見とれて近づき過ぎてしまったらしい。
さすがに気配を感じたのだろう。


「あ……すいません、デザートウルフが珍しかったものでつい……」


目が合ったダズは慌てて頭を下げる。

対する男性はキョトンとしている。
すぐにその口が開かれた。


「いやいや、気にしないで。珍しいかい?こいつ」


そう言いながらデザートウルフの頭をグシャグシャを撫で始めた。
あまり喜んでいるようには見えない。


「名前は、海原雄山っていうんだ。カッコイイ名前だろ?」

「は、はぁ……」


カッコイイ、という表現に疑問を感じたが、珍しい名前のほうに頭がいってしまう。

すると、デザートウルフは首をブルブルとふり、男性の手を払いのけた。

そして、


「ん?」


不思議がる男性の下から離れ、ダズのほうへとトコトコ歩いてきた。

そして、目の前に礼儀正しく座ると、尻尾を振りながら見上げるように顔を覗き込んできた。

ダズはその行動に戸惑ったが、これはもしや?と思い、デザートウルフと自分の持ち物を交互に見た。


「お姉さん、もしかして……何か食べ物を持ってるかい?」

「え?はい、カボチャパイを少し……」

「ワンッ!」


男性の言葉の通り、ダズはカボチャパイを持っていた。

タイタンの大好物で、いつも狩りに常用している姿を見る。
本人曰く「至高の一品」らしい。

デザートウルフはどうやらこの匂いにつられたようだ。


「あの、あげてもいいですか…?」

「あぁ、構わないよ」


ダズは先ほど露店で買ったカボチャパイの一切れを、デザートウルフの前にそっと置いた。


ガツガツ


尻尾を更に素早く振り、夢中でカボチャパイにかぶりついている。
すぐに顔を上げないところを見ると、どうやら気に入ったらしい。


「……可愛いですね」

「え?カッコイイんじゃなくて?」


男性とは観点がズレているのかもしれない。

カボチャパイを食べる姿を可愛いではなく、どうすればカッコイイと取れるだろうか。
先ほどからそればかり考えてしまう。


(あ、マツリに話があったんだ……)


ダズはふと思い出し、男性に別れを告げる。


「では、私はこれで」


軽く会釈をし、その場を立ち去ろうとする。

それを男性は呼び止めた。


「あ、お姉さん!」

「はい?」


何か忘れただろうか、振り返って再び男性の顔を見る。


「カボチャパイ、ありがとう。おかげで雄山の気に入るものがまた一つわかったよ」


男性は嬉しそうに笑顔を向けてくれた。

ダズもそれだけで貴重な体験ができたと感じてしまう。
再び会釈をし、その場を立ち去った。



帰ったらマツリやタイタンにも話してあげよう。
そう思える、プロンテラの昼下がりの出来事。





















(どうしてこうなった?)



少女はベッドの上で一人、身悶えていた。

叔父の言うこともとてもよくわかる。
これだけ長い間お世話になってきた。親とも呼べるような身近な存在。


だからこそ理解して、許してほしかった。


その期待を"裏切られた"と受け取ってしまった自分は愚かだろうか。

そんなことはないはずだ。



「一緒に戦いたい」


この言葉を告げたときも、叔父は今と同じような反応をしていたことを思い出す。

その時の最初の理由は「危険な目に合わせるわけにはいかない」であった。
だが、自分がそれでも一緒に頑張りたいと強く言ってからの反応は、とても放任的なものになる。
「どうせ強くなれはしない」と言うようになり、相手をしてくれることもなくなってしまう。



「でも、強くなった」


もはや家族のような存在となったダズや紅を始め、ギルドの皆が自分に高い評価をつけてくれる。

何も出来なかった"あの時"とは違う。
ある時は姉のような存在のダズに稽古をつけてもらい、またある時は狩りに連れて行ってもらったりもした。

ギルドの一員となり、冒険者として一人前のスナイパーにまでなることもできた。


そして叔父のタイタンは、そのうち何も言わなくなった。
初めて一緒に冒険に連れて行ってくれたときは、嬉しさで涙さえ流してしまった。

もちろん、バレないように。





だが、あの人は違った。




「何を持って強さとするんだ?」



その一言が、自分の心に強く染み渡っていくのが理解できた。

皆の助けになりたい、皆を守りたい。
それができるだけの力を手に入れることが自分の目標であり、終着点であった。


それは偶然の出会い。
そう、全て偶然の出来事だった。


だが、今ではそれも運命だと感じられるようになっている。




(……でも、あの時絶対手加減してなかった……)


思い出すだけでも背筋が凍る。

その人物が放った攻撃が、見事に頭部に命中。
半日気絶するほどの威力であった。



懐かしさに浸っていたいのも山々だが、そんなことを続けているわけにもいかない。


ぐしゃぐしゃと頭を掻き毟る。

綺麗に整っていた金髪、今朝ダズに梳いてもらったものが、早くも乱れ始めている。

叔父の癖であり、いつもそれを見てきた自分が知らぬうちに真似をするようになっていたもの。



(……おじさんのバカ!分からず屋の石頭!)


考えてはいけないとわかっていても、頭から離れない。

心配なのはわかる。
だが、もう自分の力で歩むべき道を決めてもいいのではないか。
認めてもらえない悔しさ、虚しさだけが心に残る。




「むきいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


奇声をあげ、ベッドの上をゴロゴロと左右に転がりだす。

叫ぶことで、声を出すことで少しでも気が紛れればと思っていた。



だが、




「マツリ、どうかしたの?」


(うぐ……)


内心は、「しまった」という声で埋め尽くされた。

どうやらダズが買い物から戻ってきたらしい。

扉の下の隙間から、その影が少なからず見えている。
木の扉一枚ごしに、心配をしている姉の様子が目に浮かぶ。


(……余計な心配かけちゃった、かなぁ……)


ここは何でもないことをアピールするしかない。
姉に迷惑はかけたくない、そう考えるのが当然の心理であった。


「な、なんでもないよ。変な声出してごめんね、お姉ちゃん」


極力平静を装い、深く考えないようにしてもらおう。
マツリはそう思っていた。


だが、ダズは違った。予想外の反応が返ってくる。


「……マツリ、話があるんだけど入ってもいいかな?」


(ぎゃ、逆効果!?)


どうやらこちらの考えなど全て読まれているようだった。

覚悟を決め、言葉を返す。


「うん、開いてるから、入っていいよ」


ガチャ


ノブを回し、ゆっくりと扉が開かれる。
ちょうど人の体一人分ほどのスペースが開いたところで扉は止まり、そこからひょこっと顔を突き出すダズ。


「お願いしたいことがあるんだけど……」

「え?」


どうやら予想、自分の中で繰り広げられていた仮想世界とは違う展開が繰り広げられそうだ。
意外な顔をするマツリの余所に、ダズは言葉を続けた。




「マツリのその……恋人さんに、会わせてくれないかな?」




ストーリーは急展開を見せる。

マツリの頭の中では、そんなナレーションが流れていたかもしれない。
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